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シネマちっく天国

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南伊豆好きの中年ポップスおたくが垣間見た映画の隙間
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#ポランスキー

「予期せぬ訪問の決まり悪さ」を描いていたポランスキー監督の「水の中のナイフ」

 なるほど、「予期せぬ訪問の決まり悪さ」を描いていたのか――。 ロマン・ポランスキー監督の処女作「水の中のナイフ」(1962年公開)を見てそう思ったわけです。  ずっと「間借り人の居心地悪さ」を描くのがポランスキー監督の特徴だと思っていたわけです。  アカデミー監督賞など3部門を受賞した「戦場のピアニスト」もそう。オカルト映画に分類される「ローズマリーの赤ちゃん」も、カトリーヌ・ドヌーブ主演の「反撥」も、ポランスキー自身が主演した「テナント」もそう。「ここにいるべきでない人

ポランスキーが描く、間借人の居心地悪さ

 例えばこの映画に、ユダヤ人ピアニストとナチス将校の心の交流を期待していたら、がっかりすることは間違いない。  美談でも、感動的な物語でもない。涙を流す場面なんてほとんどない。  映画『戦場のピアニスト』は、徹底的に「居心地の悪さ」を描いた、ロマン・ポランスキー流サスペンス映画だと思う。  物語は、主人公であるピアニスト、W・シュピルマンが、ラジオ放送のためにピアノ演奏している場面から始まる。突然の爆撃。ふとした瞬間に落ちる爆弾の唐突さが滑稽ですらある場面だ。ポーランドへの