「気流の鳴る音」オンライン読書会 2020年6月13日/ホリム・ベイ
毎週土曜日の20-22時。気流舎の名前の元になった真木悠介「気流の鳴る音」のオンライン読書会を行なっています。
各自が本の好きな場所を1時間黙読する読書会です。
なので、どの会からでも参加可能です。他の本でもオーケー。
静かに雑音を共有しつつ少しくらいなら喋ってもいい図書館みたいなイメージ。
後半の1時間は、その日、どんな箇所に惹かれたかを共有する時間にしています。
毎回グルーブがあるので、その記録。企画はホリム・ベイ。
*参加者A 真木悠介『気流の鳴る音』
<根をもつことと翼をもつこと>をひとつのものとする道はある。それは全世界をふるさととすることだ。
われわれにとって真にゆるぎない根の根とはなにか。家族、郷村、民族、人類、これらのものにわれわれは「根」をもとめている。しかしこれらのはかない存在の支えあってつくる「世界」のゆるぎない「大地」であるのは、われわれの日常意識の「明晰さ」にとってだけだ。ボーヴァワールの円天井*は、ヘレニズムからデカルトを経てサルトルに至る人間主義の全哲学の虚無を誠実に総括している。
*「わたくしの自由性は、円天井の、といっても、どんな柱にも支えられていることのない円天井の石みたいに、たがいに支え合っているのです。人類は一つの空虚の中に丸ごと吊りさがっています。」(青柳瑞穂訳「ピリュウスとシネアス」ボーヴァワール著作集2『人生について』人文書院、一九六八年、九二ページ)
人間主義的な合理主義の精神が明晰であればあるほど、それみずからの影として分泌してしまうこのむなしさの感覚は、いわば天井にその支えを求めることでひとつの「解決」をみることもできる。永遠なる実在としての<神>とはまさしく、合理主義的な「純粋理性」がみずからの外に射影する「実践理性」の要請である。円天井は吊天井となる。けれどもこの吊天井を支えているのは、またしても信仰の共同性という、もうひとつの円天井なのだ。キリスト教的な一神教の教徒がとりわけ異端や背教者をにくむのは、この円天井の一枚の石がはずれることが自己の存在をおびやかすからだ。この支えあう実践的な価値の循環論法は、無神論者ボーヴァワールの虚無の構造とおなじだ。実存主義者の円天井は、ユダヤ・キリスト教的世界の即自的な円天井を明晰に対自化してみせただけなのだから。
そしてこのような円天井に、即自的にか対自的にか、みずからの生を根づかせようとするかぎり、<根をもつことと翼をもつこと>は二律背反する。なぜならばその人生の「根」とはまさしく、この支え合う円天井への忠誠を担保として保証されているものだから。*
*「つまり、もしわたくしが他の人たちを超越すれば、その人たちはわたくしのために何ひとつなし得ないのです。彼らによって認められるためには、まず、わたくしが彼らを認めなければなりません。」(ボーヴァワール、前掲訳書、九一−九二ページ)まことに「実存主義は人間主義である」。もうひとつの弁神論でないかぎりは。
われわれの根を存在の部分的なもの、局限的なものの中におろそうとするかぎり、根をもつことと翼をもつことは必ずどこかで矛盾する。その局限されたもの—共同体や市民社会や人類—を超えて魂が飛翔することは、「根こぎ」の孤独と不安とにわれわれをさらすだろうから。「おまえを支えてくれている存在へのゆるぎない愛がないとき、ひとりでいることは孤独なのだ。」
しかしもしこの存在それ自体という、最もたしかな実在の大地にわれわれが根をおろすならば、根をもつことと翼をもつことは矛盾しない。翼をもってゆくいたるところにまだ見ぬふるさとはあるのだから。円天井は天上からでなく、大地によって支えられなければならない。
アメリカ原住民たちは白人が彼らを奪い、彼らを捕え、彼らを虐殺したことよりも以上に、白人による自然の破壊にたいして許すことのないいきどおりを抱いたという。それはキリスト教文明の人びとにとっての「神」よりもいっそう深い意味で、彼らの生と死とを支える大地だったのだ。その解体は彼らの生を奪うだけでなく、その死をも奪ってしまった。
(「気流の鳴る音 交響するコミューン」文庫p170 結 根をもつことと翼をもつこと)
*参加者B カスタネダ「呪術師と私 ドン・ファンの教え」真崎義博 訳(二見書房)
「どうやって?苦しみを避ける特別な方法でもあるのかい」
「うん、ある」
「きまったやり方?手順?それとも何?」
「物にしがみつく方法だ。たとえば、わしがデビルス・ウィードを学んでいる頃、わしはひどく熱心だった。ちょうどこどもがアメ玉にしがみつくように、わしは物にしがみついていたのさ。デビルズ・ウィードは百万もの道のひとつにすぎんのだ。何だって百万のうちのひとつさ(un camino entre cantidades de caminos)だからお前も、いつでも、道は道にすぎんということを心に刻んでおかにゃいかん。お前がその道を行くべきでないと感じたら、どんな時でもそこに留まってはいかん。そういう明晰さをもつには、訓練された生活を送らねばいかん。その時はじめて道は道にすぎんことがわかるだろう。もしお前の心がそれを捨てよと命じたにしても、自分や他人に対しては何の侮辱にもなりはせん。だが、その道を進むか離れるかの決心は、恐れや野心とは無関係でなければいかん。忠告しておくが、どの道もじっくりと慎重に見るんだぞ。これで十分と思うまで何度もそうするんだ。そうしたら自分に、自分だけにひとつ問いを発するんだ。これは年寄りだけがする問いなんだ。わしの若い頃恩師も一度このことを話してくれたんだが、その頃のわしは血気さかんでそれを理解することはできなかったんだ。今はもうちゃんとわかるがな。それがどういうことか言ってやろう。つまり、この道には心があるかということだ。どの道も同じだが、それはどこへも導いてはくれん。それは藪を通ったり、藪へ入っていく道なんだ。わし自身の生活を言えば、長い長い道を旅してきたが、わしはどこにもいないんだ。恩師の問いが今やっとはっきりした。この道には心があるか?もしあればその道は良いものだし、なければ何にもならん。その道は両方ともどこへも導いてはくれんが、一方には心があり、もう一方にはない。それに従い、それとひとつになれば楽しい旅ができるんだ。もうひとつの道は、自分の生活を呪うようにしちまうだろう。一方は強くし、もう一方は弱めるんだ」
(p126 第1部 教え 4 トカゲの呪術)
*参加者 C ヘンリー・D. ソロー『ウォールデン 森の生活』 訳 今泉吉晴(小学館)
*以下、雑談
*
華岡青洲の麻酔|和歌山県立医科大学附属病院紀北分院
https://www.wakayama-med.ac.jp/med/bun-in/seishu/anesthesia.html
記録に残ろう世界最古の全身麻酔を行なったのは華岡青洲と言われていて、その時つかったのがチョウセンアサガオ=ダツラ。「術師と私 ドン・ファンの教え」で話されるデビルズ・ウィードはチョウセンアサガオっぽい。
*
minilogueのMarcus Henrikssonが2020年3月に投稿していた「Stay home」の画像が「根をもつことと翼をもつこと」につながると思った。
*
Marcus Henriksson
Home transmissions #1 https://youtu.be/mEOlX30x0fA
*
Minilogue: Studio Jam Session https://youtu.be/qgiL7lsIATA
*
Koji Nakamura ナカコー @iLLTTER
The Flaming Lipsのライブ。凄い映像だし、凄いパフォーマンスだと思う。思いつくけど、実際にやるのは勇気が必要でとても難しい。でもThe Flaming Lipsっていつもそういう存在だったと思う
https://twitter.com/iLLTTER/status/1270999202944790528?s=20
*
オランダで行われた着席式ソーシャルディスタンス・テクノ・パーティ | Mixmag Japan
https://www.mixmag.jp/news/2006-holland.html?fbclid=IwAR0k-xV6hFXj1y2_k5Moj_FXcx3XGNBkbZ3LuVEN7q60FSHLaVeIk4RKWWk
*
iFLYER: ダライ・ラマ14世、まもなくリリースするデビューアルバムよりファーストシングル「Compassion」をリリース
https://iflyer.tv/article/2020/06/11/dalailama14th-1stalbum/
*
めっちゃ良かったダライ・ラマ
Dalai Lama - Inner World: Compassion
https://youtu.be/84Fe-2ezVsc
*
くらしの中の信仰(オム・マニ・ペメ・フム) | ダライ・ラマ法王日本代表部事務所
http://www.tibethouse.jp/about/culture/ommanipadmehum/
*
中沢新一『三万年の死の教え チベット『死者の書』の世界』【KADOKAWA公式ショップ】
https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g199999198101/
*
おおえまさのり『改訂版 チベットの死者の書』|講談社BOOK倶楽部
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000181960
*
「チベットの死者の書-サイケデリック・バージョン」
ティモシー リアリー / リチャード アルパート / ラルフ メツナー(著)、 菅 靖彦 (翻訳) 1994/04 八幡書店 原著 「The Psychedelic Experience: A Manual Based on the Tibetan Book of the Dead 」1964
増補 チベット密教 <5> | 地球人スピリット・ジャーナル1.0 - 楽天ブログ
https://plaza.rakuten.co.jp/bhavesh/diary/200810210000/
*
【特集】2020年6月21日 部分日食・金環日食 - アストロアーツ
https://www.astroarts.co.jp/special/20200621solar_eclipse/index-j.shtml
来週の21日(日)夏至に金環日食がある
(文責 ホリム・ベイ)
*
バーチャル気流舎が楽しくできるのも、下北沢にお店があってこそ。
楽しかったら、お店を維持するためにチャイやビール飲んだつもりの気分でドネーションお願い。このnoteのサポート機能などもあります。もろもろタイミングでお願いします!
‟zoom気流舎”券 | kiryuusha
https://kiryuusha.shopselect.net/items/29005572
paypalもあります。
気流舎 協同有限責任事業組合 paypal
https://www.paypal.me/kiryuusha
*
気流舎オンラインショップも始めました。選書はおもにハーポ部長。
「気流の鳴る音」は気流舎BASEではステッカーとセットで販売中です。
https://kiryuusha.shopselect.net
*
ホリム・ベイtwitter https://twitter.com/HorimBey
ホリム・ベイnote https://note.com/horimbey
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?