一番良かった旅先は?の答えとは
いくつかの旅を重ねていると、よく聞かれる質問。
「一番良かった旅先は?」
これは正直難しいと感じる旅人は多いだろう。
「良かった旅」というのは人によって定義が違う。
景色が良かったのか、人が優しかったのか、グルメが良かったのか、素晴らしい芸術作品があったのか。
私はまだ”旅”の旅の途中だが、ひとつの答えに近いものを見つけた旅があった。
人によって様々であって然るべきだが、私は旅していて本当に良かったと思える瞬間は、美しいものが心に触れてきたときだと気付かされた。
ではどういうものが美しいのか。
それは、自然と、人が人を想う心だ。
ひとつに絞りなさいよという話だが、浮気には当たらないと思うので許して欲しい。
いくつか人が作り出した芸術や遺跡等の造形物も見てきたが
私がまだ未熟なのか、先の二つのように全身が内側から震えるような感動とはまた違うように思う。
それに気付いた旅について、古い記憶を掘り起こして話すこととし
「一番良かった」は結局絞れないのだが、
人が人を想う心という「良かった旅」の私なりの定義を与えてくれたを旅先を、代理回答としたい。
当時、私は任務に追われるかのようにヨーロッパの主要都市を駆け足で回っていた。
限られた期間の中で、無理してでもできるだけ多くを見たいと
若さを武器に、訪れるというより駆け抜けているに近い旅をしていた。
ベルリン、パリ、ウィーン、ロンドン、バルセロナ、ヴェネツィア、、、
誰もが知る世界的な都市の中で、少し知名度が劣るのに訪れた理由ははっきりと覚えていない。
ザルツブルグ
案外知られてないのだが、旧市街がユネスコ文化遺産に登録されているし
何よりモーツアルト生誕の地、サウンドオブミュージックの舞台というと
日本人も一気に距離が縮まるのではないだろうか。
世界最古の現存レストランなんかもあったりする。
大聖堂も豪華であり、これだけでも立派な観光地になりうる。
ただ、先ほど並べたような大都市とは違い、田舎とまでは言わないがかなり落ち着いた街並みなのである。
そこまで見て回る観光名所も多くなく、今まで駆け抜けて来た私には
少しほっと一息つくには最適な街だったのかもしれない。
電車でこの街についたのは日没前。
短期滞在の為、宿を見つけて荷物を置くなり、早速歩いてみた。
ヨーロッパの夏は日没が遅く、午後9時でもまだ明るいのだ。
人と触れ合う機会もないくらい駆けていた私がそんなとき、冒頭述べた「良かった旅」の意味に気付く経験をした。
当時の私がこう書き記している。
"The old woman was slowly going up the steep stair to the church on the top of the hill. It must be tough for her as she sweated a lot on her forehead.
In spite of that, she gave me a nice smile when we passed each other.
I took out my camera from the pocket right after that because her smile was really nice.
After taking this photo, she looked back to me and gave a nice smile again. We did not have a conversation, since we knew our languages were different, but it was a beautiful moment.
(丘の上の教会までの急な階段をゆっくりと上る老婦。額いっぱいに汗をかき、とても辛そうやった。
それでも擦れ違うとき、僕に素敵な笑顔を見せてくれた。
あまりにも素敵な笑顔やったから、思わずカメラを取り出した。この写真を一枚撮ったら、振り返ってくれて、また素敵な笑顔を見せてくれた。
一切会話はしていない、お互い言葉が違うことがわかっていたから。
でもホンマに美しい瞬間やった。)"
ただ、すれ違った際に会釈しただけ。
でも、こんなに心が震える瞬間があるのかと思った。
見ず知らずの旅人の私に、息が切れているにも関わらず素敵な笑顔をくれた。
それまで騙されたり、アジア人差別のようなものを受けたりしたこともあったが
無償の愛という言葉について考えさせられた。
こんな風に、知らない人や言葉が通じない人とでも、一瞬一瞬心を通わせられるような生き方をしたいと強く思った。
夜が明け、次の日も街を観光したが
観光地を駆け巡る旅を忘れ、小高いお城の上から街並みや景色をずっと眺めていた。
誰よりものんびりしていたら、ドイツ人夫婦に話しかけてもらい、会話も弾み、ライン川近辺生産のワインを頂いた。
ドイツでワインのイメージはなかったが、意外と有名でまた飲みたいと思うほどおいしかった。
こんな風にゆっくり人との会話を楽しめたのも、あの老婆の笑顔のお陰だと思う。
あまりものきれいな景色に動けずにいると、いつの間にか日没だった。
もったいぶりながら城を降り、ザルツブルグの最後の夜を過ごした。
あれからかなりの月日が流れたが、あの旅で出会った人たちは今も笑顔だろうか。
コロナ禍を乗り越え、自分自身にも家族が出来、生活が変わったが
自然と、人が人を想う心という美しいものに出会える旅に、家族で出たいと思った。
終わりに、、ザルツブルグの最後の夜、お城を降りて宿に帰ると
食堂前におじさんコックの置物があった。
ヨーロッパっぽいなで終わるかもしれないが
滋賀県に南蛮茶という珈琲館がある。
数店舗あるのだが、どこの入口にザルツブルグのおじさんとそっくりのおじさんがいるのだ。
因果関係はいまだに不明だが、最後にザルツブルグでの意外な再会にとても驚いた。
(昭和の喫茶店はこのようなスタイルが南蛮茶に限らず多かったのだろうか。何かご存知の方がおられたら是非ご教授頂きたい。
南蛮茶はコーヒーもご飯もおいしいので、是非)
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