【読書記録】まだ人を殺していません

<あらすじ> と <私の感想> を書いています。 基本的にネタバレは書いていませんが、作中に出てくる登場人物のセリフを引用することがありますので、そういったものも不快に感じられる方は閲覧注意してください。

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タイトル:まだ人を殺していません
作者:小林 由香
出版社:幻冬者文庫
読了日:2024/02/20

<あらすじ>
父親が猟奇殺人を犯し「悪魔の子」と噂される少年、良世。
事故で娘を亡った過去を持つ翔子は、亡くなった姉の忘れ形見である良世を育てることになるが、口を閉ざし、何を考えているかもわからない。
なんとか彼を知ろうと寄り添うも、ある日机で蟻の「作業」をしている姿を目撃し一一一。
人を信じ育てることの難しさと尊さを描く、感涙のミステリ。


<私の感想>
あらすじに騙された。
もちろん良い意味で。
大人になると、どうしても子ども達は純粋で単純な人間関係の中で生きていると思ってしまう。
少なくとも私は、学生時代どう考えても純粋で簡単な人間関係の中では生きてこれなかった。
それは周囲の人間や環境もあったけれど、自分自身を守るために他人との距離の取り方を間違えていたからでもある。
こうやって時間をかけて思い出してみなければ、あれだけ悩み、苦しんだ日々も美化されてしまっている。
人はどの時代を生きても、その時々で生きるために行動している。
世間のルールに反していても、無意識に恐れる死を避けるために、生き抜くために行動する。
翔子の内面を通して見たこの物語前半の良世は、とても不気味だった。
しかし後半に明かされる真実の数々と、読者に想像させることをせずに、きちんとこの物語の結末を見事に描き切っているので、本を捲る手を止めることができなかった。
未熟な部分を隠さずに他人と接することで、本当の絆が生まれることを教えてくれた。
それは大人も子どもも関係ない。
一人の人間として向き合うことが、どんな心のケアよりも大切な事だと気づかせてくれた作品でした。


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