第一話 あわい小さな恋物語
「渡辺さん。これ書いてくれない?」
新しい学年になり、五年二組になった渡辺未海は教科書をランドセルから出しているところだった。
新学期の席順はまだ名前順なので、耳の席は廊下側の一番後ろ。
未海が顔を上げると、前の席の女の子がカラフルな色の一枚の紙を差し出していた。
その紙は最近流行っているプロフィール帳だ。
名前や血液型、好きな食べ物やハマっているものを渡して書いてもらうものだ。
友だちはもちろん、友だちになりたい人に渡して会話のきっかけにすることができるもので、未海も何度か