朝起きて、となりにはクマ。♯5
運動とクマと車
クマさんと私が出会う前、彼はやせっぽちの眼鏡をかけたのび太くんだった。
のび太クマは、ひょろひょろの大食いだったらしい。夜中にパスタを茹でたり、炊き込みご飯を三合炊いて一晩で食べたりといろいろ武勇伝を聞いた。テニス部に所属していたり、スキーをしたり、バンド活動など活発にしていたけれども、大食いだったせいで、クマが大学生になった時にはその付けがまわり、ふっくらお腹のまん丸クマさんになったというわけだ。
クマさんは汗かき、筋肉が、体力がない。
そんな足は筋肉痛になりやすいらしく、運動というか歩くことが嫌いだ。なるべく楽がしたいらしく、私と付き合った間もない頃から、頻繁にタクシーを乗り回していた。ご飯を食べた後お腹がいっぱいだから歩いて帰ろうと思っても、クマさんの「タクシー乗ろうよ」のコールがすぐに始まるのだ。家まで2、3駅の距離でもタクシー使う。電車で最寄りまで行ってからタクシーに乗るという考えが浮かぶ前に、疲れるということが先に浮かぶからかタクシーに乗ろうというのだ。あの生活を今も続けていたらどうなっていたか想像すると恐ろしい。
歩いて10分ちょっとの距離にある駅に行くのも億劫、歩くと足が痛い、汗がいっぱい出るなどのいろいろな不都合さを建前に、結局は、私たちの生活に、車という便利な乗り物の習慣をもたらした。
クマは、私の中にあった、車は遠出の時などに使うものという、今までの古くさい考えをあっという間に吹き飛ばした。というのも、賢いクマさんは、カーシェアという、すぐに手頃な値段で車に乗れるというシステムを理解し、使いこなし始めたのだ。そのおかげで、行動範囲が広がり、ますます私たちの生活が豊かになった。
そのこともあり、クマに今年やっとジムの会員に登録させた。忙しくもあり、怠惰なクマと私は、他の人たちと比べると少ない運動量かもしれない。でも私たちにとっては貴重な運動の時間をできる限りジムで作ろうとしている。プールでのクマさんはずっと平泳ぎをしている。クロールは鼻に水が入るから嫌らしい。クマさんが大きな体をゆさゆささせながら大きなプールで泳いでいるのを見るのはとても微笑ましい。
クマは、タクシーに乗ることを今もずっと続けている。
頻度は前ほど多くはないし、たまに3キロか4キロほどの距離を歩いて帰ったりするようになった。今彼が思うことは、
‘時は金なり’
疲れたとかいう理由よりも、ぎりぎりまで仕事をしていたい、もしくは、ぎりぎりまで家にいてゆっくりしていたいという理由からだそうだ。あの頃よりも、かっこいい理由になっているし、大きく成長しているから良としよう。東京は、せかせかとせわしなく生きることを求められる街であること間違いないので、仕方が無い。
いつかまた、ほっそりしたのび太クマに出会えることを夢見て。