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伝説のレアチーズケーキ

「しろたえ」をご存知だろうか?
食べログ百名店に選ばれた赤坂の有名洋菓子店である。

東京に住んでいない私がその店の名前をどうして知っているのか。
それは、半世紀ほど前まで青森市に本店があったから。平成生まれの私は行ったこともなければ食べたことすらない。店の存在は母から聞いていたのだ。

母もまた青春時代を青森で過ごしていて、学生時代はしろたえに通っていたという。
中心商店街から善知鳥うとう神社方面へ曲がってすぐの場所。そこは今、別の洋菓子店が営業を続けている。

母によると「しろたえのチーズケーキが人生で一番美味しいチーズケーキ」なのだとか。
それもそのはず。その味は芸能人を虜にするほどよくできた逸品で、これを食べたら最後、別のチーズケーキを食べたら物足りなさを感じてしまうほどらしい。私は食べたことがないけれど、そう感じるのも変に納得がいった。

どれだけネットで検索しても解決できない疑問がある。
何故、しろたえは東京に移ってしまったのだろうか?

「しろたえが突然消えた」

赤坂しろたえがオープンしたのは1978年。単純に逆算すると、青森しろたえは1977年以前まで営業していたことになる。
これもまた母の証言なのだが、ある日友人から「しろたえが閉店した」との電話があったという。数日後、事実かどうか確かめるために店に行ってみると―本当に閉店していたらしい。
にしてもあれだけ通っていたのなら「閉店のお知らせ」の貼り紙くらい目にしていてもおかしくないはずである。そのあたりに関しては、曲がりなりにも私の母なので見落としている可能性も否定できなくはない。

店主は都内やフランスで修行を重ねた後、和菓子屋を営んでいる父親の元で働き、独立した。その名前もまた「しろたえ」という。創業が1975年とあったので、東京に移転するまでの3年弱は青森で営業していたのだろう。
こんなに短い期間で青森市民の心に刻んだのだから、当時の人気はさぞ鰻登りだったに違いない。それを知る人々も今後少なくなってくるだろうし、50代以下の世代は「しろたえ」の名前すら知らない人が多いのではないだろうか?

前述の通り、しろたえがあった場所は「赤い林檎」という洋菓子店が営業している。
なんとびっくりしたことに、しろたえのレシピを再現したチーズケーキがメニューにある。形と味はそっくりそのまま、店の雰囲気もしっかり受け継いでいるらしい。

赤い林檎といえば、私が推している「アスパムのアップルパイ」を製造販売しているところだ。ここもまた、青森市の老舗洋菓子店の一つに数えられる。
伝説となったレアチーズケーキは今、同じ場所に店を構えた同業がしっかりと味を守り続けている。赤坂の味を青森でも楽しめる―しかしそれは、青森にあった証を掲示し続けねばならない矜持もあるだろう。

母に教えたところ「行ってみたい」と返事があった。
今月はシルバニア展があるし、会場もほど近いので久々に親子水入らずの時間を伝説の場所で過ごしたいと思う。

「ガトーしろたえ」―父から貰った、青森時代の店の名前。
青森で知る人ぞ知る「伝説のレアチーズケーキ」は今、赤坂の老舗銘店として君臨している。

青森しろたえのマッチラベル
(画像:青森太郎Twitterより)

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