雨と雪
悲しみを現すには泣くという方法がある。
昔は泣き虫だった。
今も中身は変わらない。
でも泣くことは今は滅多にない。
泣きなくなることがない訳ではない。
むしろ昔より増えた。
ただ泣けなくなった。
泣かない理由…まさか責任感なんて高尚な理由ではない。
端的に言うと、泣くことで前に向けることはないと思うから。
泣くだけ泣いて前を向ける人もいるというが、少なくとも自身はそうではない。
泣いて心が整うほど、大人ではない。
泣いても駄々をこねるだけのことで。
だから泣けないし、泣かない。
それでも泣きたくなることが募ると心が凍って雨が雪になって積もってくる。
でも雪ならいい。
静かに積もる雪なら、心を凍らせて忍んでいられる。
そして、忘れた頃に雪は溶けている。
だから泣いてなんかいられないんだ。