むなしさきざむ腕時計 002/映像脚本

○スポットライトが射し
   さくらが映し出されるーー腕時計、ネックレス、アンクレット、真紅のドレスを
   身につけている。
さくら「(独白)おたがいを思いやれない そんな頼りない時間
 の中で どちらからともなく言い出した そんなあやふやな別れの言葉 そう…きっ
 と… そのときを乗り越えられたら まだ…今も… あの愛の日々は続いてた そん
 な…そんな…気がする」
   と、チャイムの音。

○さくらの部屋・内
   さくら、玄関へ行き、ドアを開ける。
   将司が入って来て、さくらを抱き上げる。
さくら「もう、やめてよォ」
将司「お帰りのチューは?」
   二人、軽く唇を合わせる。
将司「ちょっと待ってて。(外へ出て行く)」
さくら「え、どこ行くの?」
   将司、大きな紙袋を持って入って来て、さくらに紙袋を渡す。
将司「欲しいって言ってただろ」
さくら「え、何? 今日こそ私のお誕生日? (紙袋を覗き)わぁ、ドレスだ! しか
 も真っ赤なドレス! 一度こういうのを着てみたかったの! (ドレスを広げ、身体
 の前で合わせ)どう?」
将司「俺の代わりに、さくらの身体を優しく包んでくれそうだね!」
さくら「ありがとう!」
将司「言葉はいらない。お礼のチューが欲しい」
   さくら、将司の頬にキスをする。
将司「(唇を指し)こ~こ」
さくら「え~!?」
   将司がさくらの唇にキスをし、そのまま床に押し倒す。
   ブラックアウト。

○スポットライトが射し
   さくらが映し出されるー腕時計、ネックレス、アンクレット、真紅のドレスを身
   につけているーー台詞とともに、つけていりものを一つ。
さくら「(独白)そう…きっと… 濃密なあの愛の日々を(ネックレスを外し、放り投
 げる) まだ…きっと… きざみ続けてくれたはずの あなたがくれた腕時計(アン
 クレットを引きちぎり、放り投げる) そう…きっと… 明日…明日こそ…捨て去る
 の(腕時計を外し、放り投げる) あなたがくれた腕時計 むなしさきざむ腕時計
 (ドレスの肩ヒモをずらす)」

○さくらの足元に
   ドレスが落ちる。
   と、チャイムの音。

○さくらの部屋・内
   部屋着のさくらが玄関へ行き、ドアを開ける。
   引越スタッフA(41)とB(29)が入って来る。
   音楽『むなしさきざむ腕時計』、イン。

○寝室・内
   さくら、ベッドにダイビングする。
   と、すぐに引越スタッフが入って来て、さくらを立たせ、寝室から追い出し、ベ
   ッドを解体し始める。

○リビング
   さくらがやって来て、ソファーに寝転ぶ。
   と、すぐに引越スタッフがやって来て、さくらを立たせ、ソファーを運び出す。

○ダイニングキッチン
   さくらがやって来て、テーブルに上がり、横になる。
   と、すぐに引越スタッフが戻って来て、さくらを持ち上げ、椅子に座らせ、その
   椅子ごと持ち上げる。

○部屋の隅
   さくらが椅子に座り、引越スタッフが荷物を運び出すのを眺めている。
   と、引越スタッフがやって来て、さくらを立たせ、椅子を運び出す。
   さくら、何も無くなった部屋を見渡す。
さくら「サヨナラ、将司。サヨナラ、このお部屋。ありがとう! (深々とお辞儀を
 し、玄関へ歩いて行く)」
   と、引越スタッフBが戻って来て、さくらをお姫様抱っこして部屋を出て行く。



                                    (終)

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