【詩】シナモンロール
制服の端のシワを直して
私は立ち上がる
音楽室のピアノが
ノクターンに変わるころ
重ねるように
チャイムが鳴る
それが終わりなんか
はじまりなんか
よう分からん
分かってたら
雨も降るタイミング
間違えんかったやろう
先生はいつも
間違え探しのように
誰がこのクラスで
ハミダシテいるか
瞳孔を見開いて
真顔を装っている
誰がハミダシテいるかって
そんなのは私は全部
タイミングやんと思ってるけど
雨が先生の涙みたいやったから
その考えを
地面になすりつけた
私はこの世界は
シナモンロールやと
思ってる
学校帰りはいつも
パン屋に寄るのが
私の好きな私の宿題なんやけど
誰も付き合ってくれへん
誰もな
私はシナモンロールになりたい
そしたら洋子も咲も和美も
こっち向いてくれるかわからん
私はあのロールの真ん中や
いつも一緒におれるで
ハミダシテるとこは
本当は甘くてカリカリしてて
おいしいけど
あえて真ん中や
真ん中になりたいんや
先生は学校は社会勉強やって言う
シナモンロールは
好きと嫌いが
はっきり分かれるから
きっと先生は
シナモンロール嫌いやろな
私が真ん中になっても
気づかんやろな
それでいい
それでいい
私も私の制服のシワ、
気づかんとき
あるもんな