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【なぜ学習の遅れが起こるのか】子どもにとっての小1・小3・小5の壁とは

「小1の壁」といった言葉がありますが、それは保護者側の状況を表現した言葉です。

が、実は子どもたちにとっての壁も存在しています。しかも、その壁は小1だけではありません

不思議なことに、学習支援をしていると同じ時期でつまづいている子どもたちをたくさん見かけます。

学習支援者たちの間では「小1」「小3」「小5」【学習の壁】が認識されており、その壁をどうやって打破するかに日々苦慮しています。

そこで、今回はその壁とは何なのか、そもそもなぜ壁が存在しているのか、その理由を経験談を踏まえてお伝えします。

【学習の遅れの原因その①:授業時数の増加】

1998年の指導要領では、小学生の授業時間数は5367時間でした。
それが、2017年には6785時間、今年2020年には6925時間になり、1998年と比較して約3割増となっています。

また、英語が教科となり、小3から外国語活動、小5から外国語として授業が行われるようになりました。

なので、ひと昔前だったら大丈夫だったレベルの子どもでも、今の学習量ではついていけず遅れてしまうという現象が起こっています。

【学習の遅れの原因その②:学力のドーナツ化現象】

幼児教育や早期教育、自宅学習が充実することにより、小学校入学時にはすでにひらがなやカタカナ、一部の漢字の読み書きができたり、足し算ができるような学力の高い子どもが一定数存在するようになりました。

が、逆にそういった教育を受けていない子どもたちは、全く勉強をしないまま小学校に入学します。

すると、当然ですが大きな学力差が生じたまま小学校の学習がスタートします。

充実した学習環境にある子どもは、入学後も学校外での学習を進めます。
そういった環境にない子どもは、学校でのみ学習します。
すると、その差はドンドン開いていってしまいます。

学校の授業は原則、真ん中のレベルに合わせて進行するため、下位の子どもたちはほったらかし状態になり、ますます学習についていけなくなります。

これが学力のドーナツ化現象といわれるもので、年々その差が広がっています。
真ん中レベルの子どもが少なくなり、上下の差が激しくなっていることが学習が遅れてしまう要因の一つになっています。

【学習の遅れの原因その③:そもそも学習進度は一定ではない!】

これは、小学校でどのくらいの進度で学習が進むのかを示したグラフです。

小

私のつたないエクセル技術で作成したので、お見苦しくて申し訳ないです。

教科書会社や地域によって若干違いは見られるものの、だいたい上のグラフのように小学校の学習は進んでいきます。

ご覧いただけるとわかるのですが、実は小学校の学習進度はまっすぐ一定ではなく、早く進む時期とゆっくり進む時期があるんです。

この早く進む時期についていけなくなる子どもたちが増えるのですが、それがいわゆる「小1の壁」「小3の壁」「小5の壁」です。

◆「小1の壁」はなぜ起こる?

小学校入学時は学校生活や集団生活に慣れる指導が優先されるため、ゆっくり学習は進みます。地域によっては5月あたりに運動会があり、そうなるとますます学習はゆっくりになります。
なので、4月から7月夏休み前まではあまり学習は進みません。

夏休み明け、本格的な学習がスタートし、カタカナや足し算引き算の勉強が始まります。ここも、ある程度取りこぼさないようゆっくりと進むのですが、ひらがなが書けないまま入学した子どもにとっては必死です。

そして冬休み前辺りから漢字80字、繰り上がりのある足し算、繰り下がりのある引き算と、これらが一気にやってきます。

ここです!「小1の壁」。
学習しないまま小学生になった子どもたちは、入学後ひらがな学習に時間が取られてしまい、算数やその他の学習に手が回らなくなるんです。

ここでつまづいた際に、軽度知的障害LD(学習障害:限局性学習症)が発覚する子どももいます。

今までみてきた子どもで多かったのは、国語ではひらがなは書けるけれどカタカナや漢字が書けない、チョコレートを「チョコーレト」のように書くパターンや、算数では数詞の理解が進んでいない、パッとみて3と8のどちらの数字が大きいかの判断が出来ない、などがよくあります。


◆「小3の壁」の原因は?

グラフの線を見ていただきたいのですが、小2の後半、一時停滞しているところがあるかと思います。

この時期、実はあまり学習内容は進みません。理由は「九九」が入ってくるため、それを覚えることが優先され、その他の学習がゆっくりになるんです。
漢字数も160字と小1の倍ではありますが、「母」などの家族関係や「池」など身近なもの、見たことがあるものの漢字なのでそこまで難しくはありません。

で、このゆっくりしたペースに慣れてしまったころに小3になるわけです。

小3になると、それまで「生活」だったものが「理科」と「社会」になり、学習量が増えます。算数も割り算が出てきます。漢字も200字、画数も多くなります。さらに今年からはここに英語が入ってきます。

小3の壁」はここです。
一気に学習量が増え、内容も複雑になってくるんです。その直前のゆっくりした時期までに学習に追いつけてなかったり、ゆっくり期間に勉強が出来ていると勘違いしてしまっていた場合、ここでつまづきます。

実際にみてきた子どもだと、九九が出来ない・もしくは完璧ではない、時計が読めない、割り算が苦手・出来ない、国語だと音読が出来ない、作文が書けないパターンが多かったです。


◆「小5の壁」高すぎ問題

グラフを見ていただくと、小5になったとたんググッと学習量が上がり、またその期間が長いことに気づきます。

漢字も「比例」「弁解」など、概念的な言葉や漢語の単語になってくるため、言葉の意味が理解できていないと漢字だけを字面で覚えるといったことが難しくなってきます。

国語の文章も、物語文だけではなく、説明文が入ってきます。また、どのような発表をしたら人に伝わるかといった、ディベート的な「話す」「聞く」という学習も始まります。

算数でいうと、割合や複雑な立体図形が入ってくるのもこの時期です。

つまり、小5になるとそれまでと違って、概念的なものや論理的なものが入ってくるため、理解できない子どもは全く意味がわからなくなってしまうのです。

そのため、この小5で一気に学習が遅れる子どもがたくさん出てきます。これが「小5の壁」です。

実際にみてきた子どもでは、大きい数(10億~1兆)の桁がわからない、算数全般が小3途中で止まっている、漢字は小4まで、ローマ字が書けない、国語と算数の習熟度の差が大きい、といったパターンが多かったです。

【まとめ】

今回は「小1の壁」「小3の壁」「小5の壁」がなぜできるのか、その理由についてお話しました。

それぞれのタイミングでググッと学習が一気に進んでしまい、ついていけなくなるパターンがほとんどですが、このタイミングで発達障害などの特性が見つかることも多いです。

では、どうしたらその壁を打破できるのか?どのような対応策を行えばいいのか?といった疑問が出てきますよね。

それについては次回以降記事にしたいと思っていますので、もしよろしければまたお立ち寄りいただけたらと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました😊

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kirarin【発達/学習指導専門員】
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