土の箱
崖に露出して風化した
粘土を許可なく採取し
桶の中で水にとかし
奇麗な黄土色の泥水になったものを
攪拌し水篩にとおし
沈殿するまで持ち続け
水と分離した液状の粘土を
素焼きの器に注ぎ
日に晒して
指に反発する固さになるまで待つ
それから袋につめて
作業したことも袋の場所も忘れるまで寝かせる
そしておもいだしたある日
眠っていたはずの土をとりだし
めまいをさせるほど捻りまわし
気絶した土を一定の重さに切断し
角形になるように叩き続け
放置したままにし
胎液が蒸発し固くなり身動きができなくなれば
上下まっ二つに切り分け
中をくり抜き
しかし互いがいつでも逢えるように
符牒を与え
ミイラになるまで乾燥させる
そして火焙りにして
オレンジ色の熱い燠のなかに埋めてしまうのだ
灰のなかから再生したものに
だれか問う
これは何を入れればいいのでしょうかと
だから答える
けっして何も入れない箱だと