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基岡夕理(きおかゆうり)
2022年9月22日 20:11
まだ生きてるかもしれない。警戒してしばらく浮いていたけど、泡の一つも立たず、どうやら無事に倒せたようだった。これで安心できるだろう。ちょうど抱き留める力が緩んでいたから、私は彼女の片手を握ってから脱出した。彼女が驚いた顔をしていたからもう一方の手も握る。「一人で飛んでみなよ」私は言った。ビビリといじっていたときは随分と快活だった彼女も、いざ一人で飛べと言われたら緊張するらしい。すっ
2022年9月21日 18:02
目の前に妖精がやって来た。てのひらサイズの人の形で、青を基調とした服を着て、シオカラトンボのような透明な羽を生やしている。女の子っぽい。彼女は背後に指を差す。湖の方だ。「『こっちに来い』って言ってるんじゃない?」吉岡さんが言った。立ち上がってお尻の砂を払うと、すぐに吉岡さんが後ろから抱き着いてきた。それだけなら分かるけど、ぐりぐりと私を押すのはどういうことだ。「移動に制限があるでしょ?
2022年9月19日 21:42
場当たり的にやるのもどうかと思い河西くんをヒントにアプローチは準備していた。まさか初っ端から応用を求められるとは思っていなかったけど。「元気にしてた?」初対面の体で進められる自信がないため、素直に『約二年振りの再会』の感じで挑んだのだけど、自分でも分かるぐらい声がぎこちない。顔もたぶん強張っている。「藤田さん。やっぱり藤田さんなんだ」確かめるように呟く吉岡さん。この状況を彼女は
2022年9月18日 19:07
ホワイトアウトした視界は数秒で色彩を取り戻した。眼前に広がるのは、新緑の生い茂る森。比較的背の高い広葉樹から木漏れ日が落ち、抜け感があって輝かしい雰囲気を持っている。よく晴れて少し高めの気温、風が吹けば涼しいぐらいで、五月って感じだった。正面には遊歩道らしき道が通っていた。乗用車一台が余裕を持って通れそうな幅で、ハイキングにちょうど良さそうな緩い傾斜。さて、人はどこだろう。ざっと見渡し