【内部通報制度】範囲外共有・探索を防止する方法
従業員(退職者を含む)や役員が通報対象事実を知ったとしても、自らが内部通報したことが必要最小限の範囲を超えて他者と共有されてしまう懸念や内部通報者が誰であるか探索される懸念があれば、内部通報を行うことを躊躇(ちゅうちょ)してしまうことが想定されます。
これでは、法令違反等の問題を早期に把握することが困難になってしまいます。
このような事態を防ぐためには、次の2つの行為を防止するための措置をあらかじめ講じることが必要です。
1.範囲外共有する行為
2.内部通報者や調査協力者を探索する行為
また、実際に範囲外共有や探索する行為が行われた場合には、実効的な救済・回復の措置を講ずることが困難な場合も想定されることから、範囲外共有や探索する行為を行ってはならない旨を従業員(退職者を含む)や役員に周知・徹底することも必要です。
そこで、今回は、
●範囲外共有・探索を防止する方法
について、解説しますので、ぜひ最後まで、ご覧ください。
■「指針」からの要請
「指針※」においては、次の考えが示されています。
事業者の労働者及び役員等が範囲外共有を行うことを防ぐための措置をとり、範囲外共有が行われた場合には、適切な救済・回復の措置をとる。
事業者の労働者及び役員等が、公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどのやむを得ない場合を除いて、通報者の探索を行うことを防ぐための措置をとる。
範囲外共有や通報者の探索が行われた場合に、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置をとる。
(※)指針
公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年内閣府告示第118号)
■範囲外共有・探索を防止する方法(体制整備の観点)
範囲外共有と探索を防止するため、次の体制整備を検討しましょう。
1.内部通報受付窓口を経由した内部通報の受付方法としては、電話、FAX、電子メール、ウェブサイト等、様々な手段が考えられるが、内部通報を受け付ける際には、専用の電話番号や専用メールアドレスを設ける。
また、面談により受け付ける場合には、勤務時間外に個室や事業所外で面談する。
2.通報事案に係る記録・資料を閲覧・共有することが可能な者を必要最小限に限定し、その範囲を明確にする。
3.通報事案に係る記録・資料に記載されている関係者(内部通報者を含む。)の固有名詞を仮称表記にすることを検討する。
4.通報事案に係る記録・資料は施錠管理する。通報事案に係る記録・資料を電磁的に管理する場合には、当該情報を閲覧することが可能な者を必要最小限に限定するとともに、操作・閲覧履歴を記録する。
5.前記4.の記録の保管方法やアクセス権限等について、「内部通報制度規程」に規定する。
6.内部通報者や調査協力者を探索する行為が行われた場合には、当該行為を行った役職員には、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、適切な処分等を科す旨を「内部通報制度規程」に規定する。
■範囲外共有・探索を防止する方法(業務運用の観点)
1.「調査業務従事者」「是正措置業務従事者」の指定をしなくても内部通報者を特定させる事項を知られてしまう場合を除いて、指定を行うこと自体の是非について慎重に検討する。
2.「調査業務従事者」「是正措置業務従事者」を指定する場合には、指定された業務従事者から、「守秘義務を負うこと、守秘義務に違反しないこと」を約束する「誓約書」の提出を受ける。
3.内部通報者を特定させる事項の秘匿性に留意するとともに、範囲外共有する行為、内部通報者や調査協力者を探索する行為は行ってはならない旨を、研修会等の機会を活用して役職員に教育・周知する。
4.内部通報者本人からの情報流出によって内部通報者が特定されることを防止するため、自身が内部通報者であること等に係る情報管理の重要性を、内部通報者本人に十分に理解させる。
以上を考慮したうえ、範囲外共有する行為、内部通報者や調査協力者を探索する行為を防止するための措置を講じていきましょう。
福田秀喜(行政書士福田法務事務所)
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