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【内部通報制度】利益相反を排除して中立・公正な体制を構築する方法

実効性の高い内部通報制度を構築し運用するためには、次の3つの業務を適切に行うことができる人材を配置する必要があります。
1.内部通報受付業務(内部通報を適切に受付する。)
  ⇒「内部通報受付業務従事者」を配置する。
2.調査業務(内部通報内容の調査を行う。)
  ⇒「調査業務従事者」を配置する。
3.是正措置業務(調査の結果、問題行為が明らかになった場合には、是正に必要な措置をとる。)
  ⇒「是正措置業務従事者」を配置する。

以上の業務従事者には、「公益通報者保護法」「指針」(※1)および「指針の解説」(※2)についての知識が求められるとともに、コミュニケーションスキル等が求められるなど、一定の能力・適性を有する者を配置することが重要になります。

(※1)指針
公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年内閣府告示第118号)

(※2)指針の解説
公益通報者保護法に基づく指針(令和3年8月20日内閣府告示第118号)の解説

ただし、業務従事者を配置する際に留意しなければならないことがあります。

それが、【利益相反】の問題です。

そこで、今回は、
●利益相反を排除して中立・公正な体制を構築する方法
について、解説しますので、ぜひ最後まで、ご覧ください。

■労働判例(横浜地方裁判所平成16年7月8日判決)

「セクハラの訴えがあったのに対して、加害者をかばう発言を繰り返して適切な措置をとらなかったとして、約88万円の損害賠償が命じられた事件」

X(被害者である通報者)は、相談窓口に上司(被通報者)の行為をセクハラとして申し出、改善を求めたが、相談窓口の担当課長は、Xに何の連絡もしないまま、被通報者から事情聴取をし、証拠(写真)の収集などをしなかった。
また、Xの求めで面談した際にも、異動を希望していると思い込み、翌年4月まで待つように述べただけであり、Xの職場への不適応もXの責任であるかのような発言をし、セクハラではあるが、付き合い方がわからなかったということではないかなど、全体的に被通報者をかばう発言を繰り返し、結局、何らの対応もしなかった。

もしかすれば、相談窓口の担当課長は、過去に被通報者と一緒に仕事をしたことがあり、「被通報者は、セクハラをする人ではない…」といった先入観があったのかもしれません…

■「指針」「指針の解説」からの要請

「指針」および「指針の解説」においては、次の考えが示されています。

内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関し行われる公益通報対応業務について、事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置をとる。
「関与させない措置」の方法として、例えば、「事案に関係する者」を調査や是正に必要な措置の担当から外すこと等が考えられる。
受付当初の時点では「事案に関係する者」であるかが判明しない場合には、「事案に関係する者」であることが判明した段階において、公益通報対応業務への関与から除外することが必要である。
想定すべき「事案に関係する者」の範囲については、内部規程において具体的に例示をしておくことが望ましい。

■利益相反を排除して中立・公正な体制を構築する方法

1.「事案に関係する者」を明確にする。

「事案に関係する者」として、次の者が考えられます。

・被通報者
・被害者
・事案について事情を知る者
・通報対象事実の対象部署に所属している者、対象部署に所属していたことがある者
・被通報者と上司・部下の関係にある者、被通報者と上司・部下の関係にあった者
・法令等違反行為の発覚や調査の結果により実質的に不利益を受ける者

これらの者を内部通報制度の業務従事者から除外することで、先の労働判例「加害者をかばう発言を繰り返して適切な措置をとらなかった」といった問題を排除します。

2.中立性・公正性の観点を考慮して業務従事者を配置する。

上記1.について、厳格に運用することで、組織の中に一定の能力・適性を有する業務従事者が見当たらないといったケースも出てくるかもしれません。

そこで、上記1.に該当する者であっても、中立性・公正性が確保できる場合には、業務従事者として配置することができる等の柔軟な運用を行うことも必要です。

以上を考慮したうえ、明確なルールをあらかじめ「内部通報制度規程」に盛り込んでおきましょう。

福田秀喜(行政書士福田法務事務所)

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