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Aooo「サラダボウル」を聴いて感じたこと(マクロとミクロ、人間という顕現装置)

先日某古本屋に立ち寄った際に流れた曲↑

冒頭のベース音のひずみ具合を聴いた瞬間に(あ、これ多分好みだ)、と感じたのですが、リードギターも自分的に「ちょうどいい」。
(すごく説明しずらい個人的な感覚なんです)
そして、ボーカルの声質を聴いてすぐ思ったこと。
これも説明しずらいのですが、私には感じられるもので「元型や欲動と距離が近い声質」。
もう好みすぎて歌詞をその場で検索。

Aooo(あうー)というバンドとのこと。( ..)φメモメモ

(「赤い公園」だったんだー!めっちゃ懐かしいー!)
(ベース、やまもとひかるなんだー∑(゚Д゚))

作詞はギターのすりぃ、という方とのこと。φ(..)メモメモ

この曲に関して、なんといっても歌詞がいいなって思います。

↓こっから考察

まず「サラダボウル」という曲名。
野菜を混ぜる。混ぜるという行為は渦を作り、渦の中で要素がぶつかり合い、絡まり合って一つの事象を作り上げる。

インド神話における乳海攪拌(にゅうかいかくはん)、日本神話における国生みの物語(こおろこおろ)、ギリシャ神話におけるケイオスなどと表現されるもので、その中で「認識」が生じて次第に「意識」となる。

日々の中で「社会(サピエンス全史における共同主観的社会、プラトンの言う「洞窟」、ニーチェの「神は死んだ」の神が死ぬ前の世界)」、即ち「表」を構築するために渦の生成を抑制されたA→B→C→D的な思考回路を、冒頭で「壊せる壊せる」と歌い、「決まりのないおもちゃ箱のような自由な衝動」に至る。

これはまさに前回の記事でお伝えした内容になります。

A→B→C→Dは崩壊して、おもちゃ箱はサラダボウルで、ごちゃごちゃに混ざり合う。AやBやCやDはレタスになるし、キャベツになるし、トマトになるし、くるみになるし、スニーカーになるし、スピーカーになるし、なんにでもなる。

そのようなサラダボウルをマクロの範囲で混ぜているのは自分だが、ミクロの範囲をみれば自分がその中にいる。

ミクロの自分はサラダボウルというカオスの中の樹海や、オレンジの海、虚空やオリーブの空を泳ぎ回る。

これは「偉大なる牧神パン」的な歌詞だと感じます。
ある神話ではパンは半身が魚、もう半分がヤギという姿であり、またある場合では半分がヤギ、半分が人の身体であったり、「最初の両性具有」、つまり、男でも女でもあります。
これらのことにより、海の底から天界、「広く・高く・深い」世界のどこにでもいける存在であり、まさにこの曲と重なり合っていると私は感じているのです。

人間という「顕現装置」によって樹海やオレンジの海、虚空やオリーブの空はサラダとして表現されて顕現するのです。

ところで、「オレンジの海」というのが興味深いです。

ユングの自伝の中に、彼が第一次世界大戦前に見た強烈な幻覚が記録されています。

つまり、私は恐るべき洪水が北海とアルプスの間の北の低地地方をすべておおってしまうのを見た。その洪水がスイスの方に進んでくると、われわれの国を守るために山がだんだんと高くなっていった。私は恐ろしい破局が進行しつつあることをさとった。私は巨大な黄色い波や、文明の残骸が浮いているのや、無数の溺死体を視た。すると海全体が血に変わった。この幻覚は約一時間続いた。私は困惑し吐き気をもよおした、私は自分の弱さを恥ずかしく思った。

ユング自伝Ⅰ  ヤッフェ編 (河合隼雄・藤繩昭・出井淑子 訳)

これはエヴァンゲリオンでも表現されている、「魂が還る海」のことであると思われますが、曲中の「オレンジの海」もそのことなのかもしれません。
もちろん、夕暮れや朝焼けの海のことかもしれませんし、すべて含んでいるのかもしれません。


何にしても、こういった「マクロとミクロを行き来する」ような、「あらゆるものが私という装置を通して顕現、変換される」ような、そういったものは本来日本人のもっていた感性に非常に近いと思います。

「言葉にならない」から生じる「欲動」が人間という渦の中で新しい表現を得て表出される。

ただ、それでも「言葉に表しきれない欲動」が生じたとき、ある者は次のような発想が生じるのではないでしょうか。

言葉はもっと完全だったはずだ)、と。

その発想をたよりに「消されてしまった音」を見つけられたなら、もしかしたら本来の完全な日本語も復活できるかもしれません。

私は日本語を高く買っています。つまり、そこには、その話(デイスクール)において非常に洗練された社会的きずなを支える完璧さがそなわっているのが認められるからです。
(中略)
誤解を恐れないで言えば、日本語を話す人にとっては、嘘を媒介として、ということは、噓つきであるということなしに、真実を語るということは日常茶飯事の行いなのです。

エクリ(ジャック・ラカン 弘文堂 宮本忠雄・竹内迪也・高橋徹・佐々木孝次 共訳)


いつものごとく色々と脱線してしまいましたが、言いたいこととしてはAoooオススメだよー、ということなんですー(*´▽`*)

他の曲も聴いてみよー!

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・タイトル写真
野菜たっぷりのサーモンシーフードサラダボウル - No: 22453705|写真素材なら「写真AC」無料(フリー)ダウンロードOK
・使用画像
sunset - No: 31331508|写真素材なら「写真AC」無料(フリー)ダウンロードOK





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