よなよな流れ猫
流暢な日本語を操る中華料理屋の台湾人。
彼は、四川料理が得意だとオーストラリア訛りで話していた。
その中華料理屋からの
帰り道道に影三つ。影とは、いつのまに増殖するものなんだ。夜空には長いながいホウキ星が地球の裏側までも流れていった。
三つ目の影は云う。
最近、ジョアンナさんを見かけませんが元気にいるでしょうか。
ジョアンナは黒いからね、よなよなの君には見えにくいのかもしれないよ。彼は明け方が仕事場だからさ。わたしがそう話すと三つ目は、
これから集会があるからと影を連れて去っていった。
月の落とす残された影ふたつ、距離の離れることも近づくこともなく。頭上からは幽かな溜息が放たれた。
嗚呼、僕は彼が苦手だよ。
溜息の消えるまえにジョアンナが鳴いた。
君は先々週のゴミの日に、彼の縄張りを荒らしていたからね。大方に、それがきまりの悪い理由だろう。
わたしの言葉にジョアンナの影が揺れている。
そのとき、わたしたちの影と影のあいだを光るものが流れた。
流れ星だ。
ジョアンナは好都合とばかりに鳴く。
どこからか、よなよな流れ星の声がした。
明日はゴミの日だよ。
ジョアンナには聞こえていなかったのか、聞こえないふりをしたのかは明日になればわかるだろう。