【映画批評】#53「嗤う蟲」 意外性とギャグのない薄味TRICK
田舎でのスローライフを夢見て、都会から村へと移住してきた夫婦が、その村に存在するある「掟」に追い詰められていく姿を描いたスリラー「嗤う蟲」を徹底批評!
みんな大好き映画うま男こと、城定秀夫最新作!多作も多作の監督も、これだけ撮ってりゃイマイチもある!つまらなくはないけど、もっと面白くはできただろ感は拭いきれない。
鑑賞メモ
タイトル
嗤う蟲(99分)
鑑賞日
1月25日(土)13:40
映画館
なんばパークスシネマ(なんば)
鑑賞料金
1,400円(購入特典クーポン)
事前準備
予告視聴
体調
すこぶる良し
点数(100点満点)& X短評
40点
※映画ポスター画像を貼り忘れるぐらい、テンションが低い…
あらすじ
ネタバレあり感想&考察
映画うま男でおなじみ城定秀夫
今回は正直不発でした
いやぁ、ちょっとこれは盛り上がらなかった。
面白くなりそうな要素はかなり散りばめられていただけに何とも…。異常な村の住人たちとそのイヤ~な言動のチョイスは面白く、それ自体はかなり楽しめたし、ここらへんの演出と脚本はしっかりしている。
そこはさすが、城定秀夫といったところだった。ピンク映画出身で100本以上の作品の監督をしてきた城定監督であるが、実はそんなにいっぱい観ているわけではない。
ただ、近年では「アルプススタンドのはしの方」と「セフレの品格」前後編のデキが出色で、一気に動向を気にするようになった。
「アルプススタンドのはしの方」は夏の甲子園のアルプススタンドで応援させられる高校生を中心としたワンシチュエーションの会話劇なのだが、これが素晴らしい青春映画で是非観ていただきたい。さすがに甲子園球場は使えないので、どこかの地方球場を甲子園と見立てて撮影されているが、こんなに良い映画だったなら、甲子園で撮らせてあげたかったなぁと強く思う。
もう一つの「セフレの品格」は唸った。とてつもないパワーを持った恋愛映画の真骨頂だと思う。前後編の2部作なのだが、特に後編の「決意」は本当に感動してなかなか席を立てなかったのをよく覚えている。濡れ場多数の大人の映画だが、それ以外の要素も複雑に絡んできて予想外の展開とまっすぐな感動を誘った大傑作だと思った。この時に城定秀夫は絶対追う!となったぐらい、この作品はスゴイ。ボクシング映画としてもハイレベル、次の朝ドラ主演が決まっている髙石あかりのベストアクトもこの作品だと思っている。こちらも観れる環境あれば、ぜひ観てください。
そして今回の「嗤う蟲」。
期待値はすごく高かった。なんばパークスシネマに観に行く度に予告がパワープレイされていたから、映画館もかなり力が入っているのだろうと思っていた。予告の時点で田口トモロヲの怪演が眩い光を放っていたし、主役側に大好きな若葉竜也がいるのだから、期待値を上げに上げて行ったのがちょっとまずかったか。
序盤から田舎へ移住してきた若夫婦が移住先のしきたりや、その異常性にモヤモヤしながら過ごしていくと知らず知らずのうちにとんでもない事態に巻き込まれる、といった想像どおりの展開ではあった。その中でも田口トモロヲをはじめとした村人たちの田舎あるある的な演出の畳みかけで主人公たちに観客が共感しやすいように作られており、そこは十分に楽しめる。
こういうお話で真っ先に思いつくのはやはりTRICKである。TRICKと本作の違いは、異常なしきたりや怪現象が起こる田舎を舞台にその現象や霊能力者のインチキを暴く、それに加えて仲間由紀恵と阿部寛を中心としたギャグの応酬といったギミックで視聴者の興味を惹きつける要素がTRICKにはあるということである。
本作は異常な村社会の描写としてはリアルで、身近に感じやすい恐怖を表現するという意味ではTRICKに勝っているものの、やはりそれだけで行くには大きな事件やわかりやすい転換点が少ない。いわゆる"土産が少ない"といった感想になる。村の秘密そのものがややショボく感じる(それこそTRICKでありそう)し、ラスト悪の根源である田口トモロヲを倒すこと自体の痛快さはあるものの、その手前の演出がド派手だったことでこちらも相対的にショボく映って、なんだかなぁといった感じで終わってしまった。嫌がらせも割と普通だし。
なんか求めるサービス精神の方向性が違った気がする。
もっと村全体の悪事であったり、アクの強い村人を田口トモロヲ以外にももっと用意して、ガンガンイヤな描写をぶち込んでほしかった。「ありがっさま~」や「ウチらをイジメんでおくれ~」といったパンチラインは記憶に残ったが、ヴィレッジ狂宴スリラーと謳った割には終始落ち着き払っていた。序盤から中速で入り、そのまま終わりまで走り切ってしまった。徐々に盛り上げて、最高潮に持っていかなかったのはなぜだろうか。ちょっとそこは理解に苦しむ。
役者陣の演技に光るものはある
特に中山功太は活躍の幅が拡がりそう
本作は役者陣の演技はかなり良く、そこは存分に楽しめる。
MVPは田口トモロヲで間違いないだろう。
村の有力者ながら小物も小物。しかし、気に入らなければ容赦なく村人全員を巻き込んでその人を追い詰めていく。彼が中心として推し進める村の事業がちょっとありきたりに映ったのがもったいないし、最後のやられ方も地味で別の意味で可哀想に思えた。
そしてその妻を演じた杉田かおるの演技も実在感MAXで最高だった。ここのところ映画ドラマでの演技をみていなかったので、うれしくなった。「あれ食べりん、これ食べりん」のあのシーンは義実家帰省苦手界隈代表の筆者にとってはトラウマシーンになりそうな勢いだ。
夫婦の隣人の夫役、ここのところあらゆる邦画で大活躍中の松浦祐也さんも若夫婦の末路を示唆したような存在。妻役の片岡礼子さんと並んで序盤の不穏な雰囲気を醸し出した。
そして一番意外だったのは中山功太の大活躍だ。
村の駐在さん役なのだが、結構重要な役回りでの起用にまず驚き。
しかも、演技も達者も達者で今後は演技の方でも活躍を期待したくなる。本作を観て良かったと思うのは中山功太であるといっても過言ではない。
R-1優勝者というお笑いの実力者でありながら、長期間くすぶっていたのが歯がゆかったが、芸能人としての巻き返しの兆候が見えた気がした。
移住してきた若夫婦役の深川麻衣と若葉竜也は、イメージそのままそつなくこなしている印象でしっかり要望に応えていた。面白いポイントはこの夫婦ではなく、やはり村の住人たちなので抑えた感じに映った。
出演者の演技は十分楽しめるが、話はハッキリ弱かった。サブタイトルのとおり、薄味TRICKと呼ぶのが正解かなと思います。
まとめ
期待値高くしすぎました。。。
ただ出演者の顔ぶれを観ても、城定監督としては予算も大きめだと思うので、ここは思い切ってほしかった気持ちが強い。マジメに丁寧に作られているので、そういう意味でガッカリ感は全くないですが、気にせずにサービス精神全開でやっていいと思いますけどね。城定監督は信頼しているので、次作以降も調整するつもりはありません。
「悪い夏」楽しみに待ってます。
北村匠海のこの顔一発で引き込まれました!!!
最後に
近々NURO光にするんですが、大丈夫ですよね???