小説 『恋しくばたずね来てみよ』 弐
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〈新連載〉『恋しくばたずね来てみよ』 壱|木ノ下朝陽(kinosita_asahi)
今回は、上のリンクの回の内容の続きです。 》
それでも、
どうしても彼女と付き合いたいと望むならば、
「だったら、もう一度友達から始めよう…!」
と、
彼女の手を取った、…のかも知れないけれども、
…少なくともこっちは、今まで「良い雰囲気」だと思ってたのに、
その結果がこのザマ…という状態で
彼女とこの先、
言ってみれば、彼女からの「返事待ち」の状態を保ったまま、
彼女と付き合っていくということは
向こうに生殺与奪権を握られたまま、
しかも、表向きには「単なるサークルの友達」という仮面を装着し続けながら、当の彼女と顔を付き合わせる…という毎日を、
最短でも当面、彼女の気持ちがこっちに向くまでの間は過ごさなければならない。
しかも、
いったい何時、彼女の気持ちがこっちを向くやら判らない。
いや、…そもそも、彼女が確実にこっちに気持ちを向ける保証なんか、何処にもない。
そんな、彼女が振り向く可能性があるのかすら判らない、この状況下では、
下手をすれば、それが一生涯単位で続くことにもなりかねない。
今の自分にそこまでの状況に耐え続けることに対して、
「絶対に負けない、見事に遣り遂げてみせる!」
…と、きっぱり言い切るだけの自信も気概も
その時の僕には、とてもじゃないけれど、仔兎の毛の先で突いた跡程も持ちようがなかった。
………結局、
「ああ、…これが、世に云う『タイミングが合わなかった』ってヤツか…」と、
我と我が身に言い聞かせつつ、
精一杯に平静を装いながら、カップに残ったコーヒーを飲み干し、
(せっかくの「名店」のコーヒーが、全く味が判らなかったのを憶えている)
取り敢えず、
眼の前で優雅にケーキセットを味わう彼女よりも、とにかく一分一秒でも早く店を出たい、
…という心持ちで、
(当然、彼女の分も支払いを済ませた上て)店を出ると、
その翌週末から始まる連休の間の、
サークル内の旅行の参加予定をキャンセルすべく、
僕は、各方面に全力で頭を下げまくったのだった。
《 ここまでご覧くださいまして、誠に有難う存じます。
m(_ _)m
物語は、第三話
https://note.com/kinosita_asahi/n/n5a07fc5496ce
に続きます。
よろしければ、引き続きご高覧を賜りたく存じます。 》
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