6/11(土)『〈主婦〉の学校』上映ワークショップ@日本生活学会
このnote、ずっと下書きに置きっぱなしだったのを発見!こちらももうすぐ1年になるというタイミングだけれど(苦笑)、とりあえずアップーー!
今回は、日本生活学会第49回大会(2022年6月11日)の公開公演「生活とアート」の企画にお招きいただいたが、実は学会員でもある。これまでリアルで1回、オンラインで1回、研究発表大会で発表した。生活にまつわること全てを受けとめてくれる懐の深い学会なのだ。
田中優子先生の興味深い江戸の生活道具に関する基調講演の後、3つの会場に分かれた。本格的な演者がいらっしゃる他の2つの会場に比べるとショボくて参加してくれる人はいるのかしら、と心配していたが、20代の学生さんから60代の家政学のベテランの先生までいらっしゃって、男女比は1:2。学会関係者じゃない方も含め、幅広い参加者となった。映画の上映前に少しWSの説明する。今回は「家事を自分ごとにするための工夫、アイディア」を上映後の対話テーマとすると鑑賞前告知。前回のWSを踏襲して「好きな家事」を答えていただく自己紹介も。意外な答えにツッコミたい気持ちを抑えて上映を開始した。
上映後は3人ずつに分かれて、映画の感想とお題にした対話テーマについて話して貰う。その間、学校やアイスランドについての質問にも答える。
その後、グループでどんな話をされたか、共有タイムへ。
家事を楽しくするには
「家事は家族のためにやらなきゃいけないと思ったときは苦行だったが、自分のためにやるようになったら楽しくなった」
「仕組みや理由がわかると、家事もやりたくなる。納得すると楽しくなる」
「この学校は生活をアートにする学校(消費者から生活者になれる学校)なんだなと思った」
アイスランドと日本、時間の使い方・文化の違い
「(映画の中の学生たちと同じくらいの年代だが)こういう学校に行きたいかと言われると勇気がいる選択だなと思った。彼女たちのように立ち止まる時間があるという感覚が自分とは違ったのが面白かった」
「日本だったらこういう学校は経営的にやっていけるのか、考えてしまった。若い人たちよりもむしろ心に余裕が出てきた40-50代の人たちを対象に『自分の家事を振り返ってみませんか?』とする方が人を集めやすそう」
「日本とアイスランドの文化の違いを感じました。たとえば、食べ物が余ったら施設に持って行きましょうというサイクルは日本にはないですよね。自分たちで持って帰るでしょうね」
「時間の使い方が違うのかもしれませんね。日本では若い人は先へ先へと急がされていると思いますが、アイスランドではギャップイヤーを使ってこういう学校に行って立ち止まれるのがいいですよね。日本は急いで段々と空虚になっていくのに比べて、まわり道のようで後々充実していく知恵ですね」
家事=家族のため、個事=自分のため
「家事を自分ごとにするというのは、自分で自分の暮らしを楽しめるようになることかと。自分のためだけだと手間をかけなくなってしまっている。一人暮らしを豊かにすることをやらなきゃいけないのかなと思った」(これに対して、自分のためにやるようになったら家事が楽しくなったという方に意見を聞いてみると)「映画には機織りなんかも出てきて、家事って幅広いと思いました。家事の中に趣味的な要素を見つけると楽しくなるのかもしれません」
「家政学では家事(家族・家庭のため)と個事(自分のため)を分けるという考え方があるが、なかなか浸透しない。家事は捉えどころがなく、家の形に規定されるもの。料理でも手芸でも、本来ものを作る楽しみがあるはずだが、しなければならないと時間に追われてゆっくり作れないので、しんどいだけになってしまう。生活を楽しくする術をもっているのは幸せなこと。そういう面白さを知る場がもっとあればいい(家庭科の授業では時間が足りない)」
「タイトルの主婦という言葉に『犠牲になる』というイメージを自分が持っていることを感じた。生活に手をかける楽しみ方を教えてくれる場所がある社会って豊かだなぁと思った」
自分ごととは自分の暮らしを生きるスキル
「かつては家庭と技術が男女で分かれていましたが、これは本来生活をインプルーブするためのひとつづきのものですよね。自分ごととは、自分の暮らしを生きる、やりたいことを主体的に選択できることを支える、自分の生活をつくっていけるスキルのことなのでは」
「自分の人生を生きるにはどうするかを考えると、生活の基本を知っているということは直接的ではないかもしれないが、自分の人生を選べることにつながるのではないか」
・・・といった形で駆け足でグループで話したことを共有していただき、ワークショップは終了。奥深いテーマなだけに、もうちょっと対話する時間があればよかったが。最後にアンケートを書いてもらって、今日のワークショップの感想を伺った(以下、一部を抜粋)。
◎生活や暮らしについてあたり前のことをすることがなぜ大切なのかを考えるきっかけになりました。他の人がどういう視点で映画を見ていたのかをお聞きできて、いろんなモノの見方があることを知りました。主婦の学校、入ってみたいと思いました!(30代女性)
◎単に感想ではなく自分のことを少し掘り下げて話をすることができたのがよかったです(50代男性)
◎学校に通う学生たちが私自身と同じ年頃だったが、『自分のために』『自分の暮らしを豊かにするために』日々学び実践している彼女たちは私よりもずっと充実していて輝いているように見えた。同じような学校が日本にあったとしても、興味があっても飛び込む勇気はないなと感じ、立ちどまって、自分の人生を向き合える時間があるのが羨ましいと思った。鑑賞後に対話し、他の方々の感想を聞くとさまざまな視点から作品を観ていたり「主婦」「家事」「自分の人生を豊かにすること」について話をされていて、自分では気づかなかったじちなで新たに考えることができた(20代女性)
◎「同じ映画を観たあとで別の視点からの感想をきくことができるのはとても新鮮でした」(50代女性)
◎「みなさんと共有する時間で、色んな方のお話しを聞いて改めて「家事」「主婦」についてとらえ直すことができました」(40代女性)
◎「入学したい」(50代男性)
◎「とてもよい映画だったと思います。伝統を引き継いで、学び、つくり、一緒に食べる、編み物などくらしの基本があるのかなぁと思いました。人が人らしく生きていく姿をみせていただいたように思います」(60代以上女性)
◎「このようなメッセージのあるドキュメンタリーはそれぞれ注目したシーン・言葉・場面や感じたことも異なると思うので(実際に異なりましたので)楽しいですね!」(40代男性)
◎「家事については昔からいろいろ考えてきたことなので、今どんな風にとらえられているのかに関心がありました。改めて古くて新しい問題って思いました。若い人だけでなく、豊かに老いるためにも生活のための技術は必要だと思います」(60代以上女性)
◎「今回、年齢・立場が異なる方と“映画について”だけを話題に話ができたのが新鮮で、見えなかった視点や知識があって楽しかったです。〈主婦〉というワードに少し抵抗感がありましたが、参加できて良かったです」(20代女性)
◎「同じ映画をひとつの空間で観たあとに語り合うのは純粋に楽しいと感じました。特に今回は学会のイベントだったので、もともと関心が近い方も多く、かつ学際的な学会ですので重なりつつも違った角度の見方を知ることができて、映画を観るという体験に(予想以上の)厚みが生まれました」(40代男性)
◎「自分の関心ごとと他の方の関心ごとが同じだとすごく楽しい会話になりました。手仕事の楽しみを感じました」(60代以上女性)
「家事」について、こんなに初対面の人たちと話したことはなかったのではないだろうか。今回のワークショップ参加者でいなかった層は20-30代男性。もっとも「家事」を話題にしなさそうなこの層をターゲットにしたワークショップをいつかやってみたい。日常すぎて無意識な「家事」について自分の言葉で話してみる、は生きていく上で大きな一歩になるはずだから。