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ホームホスピスまでにわたしが今できること

とってもよく怒るお婆さん

嫌いなのは寒さと痛み

ちょっとでも寒い冷たい痛いと感じたとたん

「やめてちょうだい もう帰って 帰ってください」と毅然とした態度

細心の注意をはらい冷たさを感じさせない工夫

すべてのものを事前に温めておく

手袋とおしり拭きと尿とりパット

座布団やコップも

それからわたしの手

そして直に肌に触れないこと

細心の注意をはらってしてきても

ちょっとの油断でお腹にあたった手にご立腹

そしたら最後いつもの決め台詞

怒ってからのやりとりも続く

わたしがしばらく黙っていると「かあらあす〜」と歌い出す

一人一日ベットで過ごす盲目の彼女の刺激と楽しみになることはないかしら?と先日からはじめた二人だけのレク

怒ってしまったわたしを気づかうみたいに

明るく歌いご飯を召し上がる

帰るまで怒ってらした帰り際

「今日は歌がまだでした」とひとり歌うわたし

少し間を開けてみるが歌い出さない

「かわいい七つのこがあるからよ」

もうやめた方がいいかな?と心の中で葛藤しつつ

続けてみる

「かわいかわいと」

歌い出した

さいごまで

そして

「こんなの歌うといい気持ちになるわね あっさりして」

「お世辞じゃないのよ 本当に」

嬉しかった心から

いい感情で終えれてよかった

帰りに一曲歌ってよかった

しつこく歌い続けてよかった

彼女は一人一日ご自宅で

妄想の散歩をいつもしている

会うと同じ質問を繰り返し

それでも感じる気持ちは正確で

起こった感情は事実だし

それを引きづることもある

だから最後に楽しい思い出

今日も笑って別れれてよかった

細心の注意をはらうこと

彼女が怒るから注意するんじゃなくって

何も訴えないあのお婆さんだって

冷えた尿とりパットあてられたらイヤだったはず

文句いわれなくても誰にでも

細心の注意をはらったケアを

それをお婆さんはわたしに教えてくれる

お婆さんと過ごす45分

最大限精一杯頑張って

それがわたしに今できること



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