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経営者、失格。

答えを求め、思考を突きつめても答えはない。それが私の答え。

私は若い頃、ずいぶんニーチェの影響を受け、かつ惑わされた。
ニーチェの著書「悲劇の誕生」と「ツァラトゥストラはかく語りき」は私の思考の中に15年以上も棲み続け、私の思考そのものだった時期もある。
ニーチェゆかりの地、イタリアのラパッロという港町を訪ねたり、トリノにあるニーチェハウスにも行ったりもした。今でもギリシア悲劇やギリシア彫刻に惹かれるのは、そのせいだろう。

ニーチェは40代後半で精神を病み執筆活動を終えた。
思考の果てに真理があると信じ、思考の極限まで究めた結果であろう。

私は10数年前のある日突然、ニーチェから離れた。
ニーチェの思想にも、哲学にも、私が追い求めていた答えはないと感じたからだ。思考を突きつめても答えはない。それが私の答えだった。

ニーチェから派生したショーペンハウアー、ワーグナー、フロイト、ユングらも、私にとっては遠い過去のものだ。
ニーチェや哲学から離れたが、私の心の中には古代ギリシアへの憧憬が残った。

私のビジネスでは、ただただ美しいものだけを扱いたい。

私は、2,600年くらい前のギリシア悲劇やギリシア彫刻に今も魅了されている。単純に美しいものに憧れた芸術で、打算がなくただただ美しいからだ。
思考が入る余地がない美しさがあると思う。

私のビジネスでは、ただただ美しいもののみを扱いたいと願っている。

それゆえ、私は世間一般で言うところの「経営者失格」なのだそうだ。


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※この記事は、2020年6月に「kingpin研究所公式Facebook」に掲載されたものを加筆・修正したものです。

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