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なぜ障害者の犯罪は減らないのか? 『刑務所しか居場所がない人たち』を読みました



概要

刑務所と社会、障害者に優しいのはどっち?

刑務所は、世間から排除され続けた障害者が最後に行きつく「福祉施設」だった!?

自身の服役経験から現実を知り、触法障害者や出所者の支援に奔走する著者が、

福祉と司法のすきまに落ちる人々の実態を鋭く、優しく説き起こす。

https://www.amazon.co.jp/dp/4272330934/ref=cm_sw_r_as_gl_apa_gl_i_TVQW87KTSTACJ3H59YYG?linkCode=ml2&tag=sok4869-22

読書感想文

 想像してみてほしい。どんな受刑者でも、生まれたときはかわいい赤ちゃんで、一生けんめいに成長してきた。それが、大人になってだれも支えてくれない日々をすごし、さらに年をとって生活に困る。やむをえず、万引きや無銭飲食に手を出して刑務所に入れられ、そこで死んでしまう。
 だれだって、こういう死にかたを望んだわけじゃない。家族や仲間に囲まれて、惜しまれながら息を引き取りたいと願っていたに違いない。だけど、それを許してくれないのがいまの社会なんだ。

『刑務所しか居場所がない人たち』 P38

 内容自体は、『累犯障害者』を噛み砕いた表現で書き記しているものだった。副題が「学校では教えてくれない」なので、恐らく学生向けに書き直したんだろう。

 『累犯障害者』を読んでいる私にとってはもう知ってる内容だった。
 それよりも考えさせられるのが、この本のレビューである。

刑事事件を起こす人起こさない人に関係なく、ルールを守れない人や道徳心が希薄な人は一定数います(障害なのか、本人の自覚の問題かを見極めることも難しいです)。そのような人に対して、どこまでも愛を持って接することは、障害を理解しようという気持ちや、あらゆる制度を使っても限界があります。留置場から逃走している人がいますが、もし彼になんらかの障害があったとしたらどう考えたら良いでしょう(精神医療では診断名がつく可能性は少なからずあると思います)。排除のない社会実現というなら、彼にも手が差しのべられる社会でなければなりません。皆様はそれができるでしょうか? それを望むでしょうか? 刑務所に服役している人は著者が紹介するような愛すべき弱い人たちばかりではありません(著者は初入所で軽犯罪の人を対象としたA級刑務所に服役しているので、凶悪事件を起こした服役者のことは知らないはずです)。

Amazonレビュー、2018年7月25日

 軽微な罪で捕まる障害者を、福祉など社会全体で救済すべきなのは、この本や『累犯障害者』を読めば分かる。
 触法障害者は、家族や保護者から見捨てられ、身元引受人もいないし、出所後の仕事も見つからない。あまつさえ、福祉施設に行こうにも「前科のある人はちょっと…」となりやすい。
 触法障害者を更生させる社会じゃないんだ、日本って。だから福祉のあり方を見直すべきだって言うのが、この本なんだね。
 「シャバに出るのが怖い。刑務所に戻る」と発言する受刑者がいるのは、出所したところでホームレスになるしかないからだ。彼らには頼る人がいない。否、「刑務所しか頼れない」と表現した方が正しいか。
 あなたは彼らに同情するだろうか?
 ここで紹介するのが、『ソーシャル・インクルージョン』だ。

拡大する不平等感を抑制し、より安上がりな福祉国家を再構築するため、周縁化した人々を社会に再び参加させる、社会的包摂というアプローチが政策目標として創出された。具体的には、ワークフェアやアクティベーションと呼ばれる職業訓練政策が包摂の名のもとに実施された。また、就労と切り離された包摂政策としてベーシック・インカムが議論されている。

社会的包摂

 さて、もっと深く、考えてみよう。
 凶悪犯が障害者だったとして、それでも救うべきか?
 これは哲学や倫理の問題である。正解は無い。だが、議論を止めてはならない。

#勉強記録

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