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経験至上主義者じゃない

TVドラマを見ていたら
ヒロインがいきなりえらい病気になっちまった。

ヒロインは凄腕の外科医って設定。

で、ヒロインに
「医者は、一度患者になっておくべき」ってセリフがあってさ
観ていたわたくし、
思わず、「だよね」って声が出てしまった。

人間の経験なんて
たかがしれている部分はあるし

自分の経験が全てだって勘違いする危険性だってある。

だから「経験至上主義」って訳じゃない。

それでも
自分が入院したり
父を看る介護生活の中で

「医者っていうのは、技術力もだけれど、
哲学を持っていない人だと、看られるこっち側としては、つらいな。」
と実感したことがある。

よくTVでスーパードクターって紹介されるけれどさ
もちろん
誰だって
良くなりたい
治りたいんだから
その技術力は魅力的だけれど

でも・・と思うわたくしがいる。

大きな総合病院の有名なドクター

父の最後の時
かかりつけのドクターに言われて
紹介状というか、質問書を持って
投与する薬の確認という名目で会いに行った。

かかりつけのドクターは父に張り付いていてくれたから
わたくしが動いたのだった。

思えば、かかりつけのドクターは、一生懸命やってくださったけれど
自宅介護で看取りという、経験が少なかったのだろうと思う。

大きな総合病院。
受付に「電話が入っているはずですが」と質問書を握りしめて。
長い待ち時間の後、診察室に通されて状況を説明している間中、
そのドクターは、わたくしの顔を一度も見なかった。

PCの画面を見ながら
「ふん、ふん」と相槌を打って、質問書を読むと

「うちは、そういう状況の人、診ていないから。」

それで
話を打ち切りたそうだった。

こうしている間にも
父は、苦しがっている。

なんとかしてあげるために
わたくしは、ここに来た。

何とか適切な薬の指導を受けたくて
わたくしは、食い下がろうとしたけれど

ドクターは、顔をあげなかった。

胸がいっぱいになった。
カー—ッと、喉の奥が熱くなった。

苦しい。

次の瞬間
診察室の中
わたくしは、叫んでいた。

「じゃあ、黙って、黙ってみていろって言うんですか!!
苦しがっていても、そのまま、見ていろって・・・」

後は言葉にならなかった。
涙がボロボロ出た。

その時、初めて
ドクターはわたくしの顔を見た。

そして

「・・・じゃあ、これを試してみろって
かかりつけのお医者さんに・・・

でも、・・・」

そう言って
薬の名前を書いてくれた。

その薬で、父が楽になったかどうかは
判らない。

あの時、わたくしが感じた気持ち。

もし、あのドクター自身が
或いはその家族が
闘病した経験があったら・・・?

知っている。
何度でも言うさ。

人間の経験なんて
たかがしれている部分はあるし
自分の経験が全てだって勘違いする危険性だってある。

だから「経験至上主義」って訳じゃない。

それでも。

人は経験から学ぶ。

そのことを、時々、思う。


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