日本人に多い!?猫背の人の特徴
日本人は猫背の世界人口のうちの半分以上を占めていると言われています(割合としては約60%)。
最近ではデスクワークなどが増えてきたことで、より猫背などの姿勢の変化を感じる人が増えてきているように感じます。
今回は、良くある姿勢解説ということで「猫背」について運動学的に解説していきたいと思います。
今回の内容はまとめるとこんな感じです。
①猫背の人の姿勢の特徴を、主に骨盤と脊柱の動きを中心に解説
②猫背姿勢になってしまう要因を運動学やその他の条件から考察
③猫背の人が良い姿勢になるためのポイントを紹介
私は、理学療法士という医療系国家資格を有し、さらにキネスティックセラピーという、脊柱・骨盤に対するアプローチを中心とした、姿勢改善のアプローチの資格を有しています。
姿勢を語る上で、これ以上の適任はいないのではないかと自負しています。
というわけで早速ですが本題いってみましょう!
猫背の特徴とは?
猫背の特徴的な部分は「胸椎」の後弯の増強です。
胸椎は正常な状態ですでに、後弯していますが、猫背の人はその後弯がさらに強くなっています。
胸椎の後弯が過剰になることで、左右の肩甲骨は引っ張られ、外側に移動します。そうなることで、背中の筋肉が過剰に伸ばされる状態になり、肩・背中周辺の負担につながります。
さらに胸椎の後弯が過剰になると、目線が下を向きやすくなります。下がった目線を修正するために、首や目の動きを中心にカバーしている人の場合は、首の後ろが疲れやすい傾向にあります。
また、胸椎が後弯過剰になることで、脊柱は全体的に丸くなります。
脊柱が丸くなることで、骨盤の動きが偏りやすくなり、主に骨盤が後ろに倒れやすい状態になります。骨盤の動きが制限されると、脚全体の動きに影響し、主に脚全体は曲がりやすくなり、伸ばしにくくなります。
要するに猫背になると、身体は全体的に曲がりやすくなります。
道ばたで歩いているご高齢の方を見ると、猫背になっている人も多いですが、そういう方たちも背中だけ丸くなっているというよりは、背中を含めた身体全体が曲がっていることが多いように思います。
もちろん、猫背の人全てに今のことが当てはまっているわけではありません。
ですが全体的な傾向としては、猫背になることで、身体全体は曲がる方向に動きやすくなる傾向になり、視線は下を向きやすくなることが予想されます。
猫背になってしまう人はどのような特徴があるのか?
では猫背になってしまうと人にはどのような身体の特徴があるでしょうか?
まとめるとざっとこんな感じです。(私見含む)
・胸の筋肉が硬い
・腹筋が硬い
・お尻の筋肉が硬い
・背中の筋肉のこわ張り
・痛みや不快感がある
・気持ちが沈みがち
・身体的なコンプレックスがある(身長、胸、お腹など)
上の3つに関しては、身体的な特徴。下の4つに関しては、身体的な特徴だけではなく、心理的な影響も加わっているものです。
順番に説明していきます。
身体的な特徴としては、身体の前についている筋肉が硬くなることで、猫背になりやすくなります。胸の筋肉では「大胸筋」や「小胸筋」と呼ばれる筋肉が代表されます。
胸の筋肉が固まることで、肩が内側に入ることで、肩甲骨が外側に引っ張られます。
肩甲骨が外側に引っ張られることで、胸椎が後弯しやすい状態になるので、猫背になりやすくなってしまいます。
お腹の筋肉では「腹直筋」と呼ばれる筋肉が固まることで、脊柱が全体的に曲がる方向に動いきます。腰椎は通常「前弯」と言って、反りかえるような形をしています。
脊柱全体が曲がることで、腰椎の前弯は減少し、胸椎の後弯は増強した姿勢になります。
猫背は脊柱の周りの筋肉が硬くなること以外でも起こります。
特に骨盤の動きは脊柱に対して、大きく影響を与えるため骨盤の傾きは猫背の原因になり得ます。
猫背になりやすい骨盤の傾きは、「後傾」という後ろに傾く動きになります。
骨盤の後傾は、お尻の筋肉である「大殿筋」が硬くなることで起こりやすくなります。
以上が身体的な影響による、「猫背」の要因です。
ここからは身体的な影響だけではなく、心理的な影響を加味した要因を紹介します。
私見も含みますので、参考程度に思ってください。
まずは背中の筋肉のこわ張りです。
背中の筋肉が固まっていると、その部位に不快な感覚が生じます。
筋肉がこわ張ってしまうと、伸ばそうとすることで解消しようとする反応が起こります。
背中を伸ばそうとする姿勢は、背中を丸くした姿勢になるため、持続することで猫背の要因となります。
背中に直接関係ない痛みによっても、姿勢は変化します。痛みに対して、私たちは「防御性収縮」というものが起こります。
これは、痛みや不快な感覚に対して、主に身体を曲げる方向に力を入れることで我慢したりする反応のことで、意識的も起こりますが、無意識的にも起こります。
身体の曲がる方向の動きになるので、当然、脊柱も曲がるように動きます。
例えばですが、あなたは右の人差し指を突き指しているとしましょう。その時の姿勢はどうなっていますか?
程度に差はあるかも知れませんが、突き指をする前より全体的に身体は曲がっていると思います。
怪我のような一時的なものの場合、姿勢が変化するのも一時的のため、大きな問題とはなりませんが、痛みが慢性化している場合や、肩こりのような、不快な感覚が長期間続いている場合は、姿勢の変化も長期的になることがあるため、「猫背」の姿勢を作りやすくなってしまうことが考えられます。
気持ちの変化に関しても姿勢に影響を与えると言われています。
姿勢には、意識的に調整できる側面と無意識的に調整している側面があります。これを身体心理学では「レスペラント反応」と呼びます。
例えば気分が落ち込んでいるときや、悩んでいるとき、私たちは無意識に身体をかがめて丸くなるようなっています。そして、丸くなった姿勢を意識的に修正することもできます。
このように姿勢を意識的・無意識的に調整しているのですが、負の感情が多いときは、身体は自分を守ろうと、全体的に丸くなるようにする反応が起こります。
そのため、気分の落ち込む期間が長期的に続くことで、姿勢は猫背になりやすくなってしまいます。
同じような理由ですが、身体的なコンプレックスを持っている人も猫背になりやすいです。これには先程の負の感情が関与していることもありますが、身体的なコンプレックスはより具体的なものが多いです。
例えば、女性で身長が高いことを気にしている人は、自分を低く見せようと無意識に上半身をかがめてしまい、猫背になってしまっていたり、思春期でバストが大きいことに悩んでいる人は胸を隠すために背中を丸めて、胸を隠すような姿勢をとりやすくなります。
以上のように、身体的な特徴や心理的な特徴など猫背の原因になるものは数多く存在していると思います。
猫背の人が良い姿勢になるためには?
先程で、猫背の原因について解説していきました。心理的な話までしてしまうと、この記事の趣旨と外れてしまいますので、今回は身体へのアプローチから良い姿勢になるための方法を解説していきたいと思います。
猫背のパターンには大きく3つのパターンに分かれます。
①骨盤の傾きは正常で、胸椎のみ後弯過剰なパターン
②胸椎の後弯と骨盤の後傾が同時に起こっているパターン
③②に加えてさらに、骨盤が前方に移動しているパターン
①に関しては、原因として考えられるものは、上半身の影響です。
つまり、「大胸筋」や「小胸筋」などの胸の筋肉や、「腹直筋」などのお腹の筋肉のこわ張り、柔軟性の低下が要因であることが多いです。
加えて、肩甲骨が外側に引っ張られているため、身体の中心にある筋肉以外にも、肩甲骨周辺の筋肉が固まっている可能性があります。
肩甲骨周辺の筋肉は、縮んでいるよりも、常に伸ばされて固まっている場合が多いので、ストレッチだけでは改善しにくい可能性があります。
縮んで固まる場合を「短縮固定」、伸ばされて固まる場合を「伸張固定」と呼びます。
そのため、肩周囲をしっかり動かすことで血流を改善させることも重要です。
②は脊柱と骨盤の動きが同時に起こっているパターンで、初期は骨盤か胸椎のどちらかが先に始まっていると考えられます。姿勢の変化が長期的になることで、片方のみの変化だったものが、もう片方にも影響を与えてしまっています。
この場合は、どちらか片方のケアだけでは、不十分で両方のケアを行なっていくことが必要です。
つまり先ほど①でお伝えした場所に加え、骨盤の後傾を起こしやすい「大殿筋」や「ハムストリングス」という太ももの裏の筋肉に対してもケアを行なっていく必要があります。
③は骨盤の変化が後傾だけではなく、さらに前方へ移動しているパターンです。
いわゆるスウェーバックと呼ばれる姿勢になります。
①、②はある一つの場所の変化の話だったのですが、③に関してはそこに姿勢のバランスを保つ反応も加わってきています。
そのため、単純に筋肉が柔らかくなったり、関節の動きが良くなれば良い姿勢になるかというと実は違っていて、その人の体重の掛け方やバランスの取り方に対してもアプローチをしていく必要があります。
ここまでくると、生活習慣やどのような仕事をしているのかなど、よりその人のことを知らないとアプローチしていくことが難しくなってきますので、その人の生活に合わせたトレーニングやケア方法の提案が必要になってきます。
②と③に関しては、別の記事でケア方法や、詳細を紹介しています。
よろしければ参考にしてください。
(スウェーバック記事りんく)
最後に
今回は「猫背」の姿勢について、その特徴と原因を解説しました。
今回で、猫背と言ってもその原因や特徴は様々あることがご理解いただけたと思います。
姿勢へのアプローチはいろいろな方法や考え方があるので、その中の1つのヒントになればと思います。