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私が1年間嘘をつき続けた結果(発達障害を隠して一般企業で働いたこと)

発達障害と診断を受けても、一般企業で社員として働くのをあきらめる必要はありません。

よく、診断を受けたことで「役立たず」と烙印を押された、と勘違いしている人がいます。発達障害者=役立たずとは限りません。

その証拠に、診断を受けた後も、一般企業で働いている人はごまんといます。

私にも、その経験があります。診断を受けた2か月後、心療内科への通院とストラテラ40mgの服用を続けながら、某金融機関の子会社で1年間働いていました。

自分の障害と折り合いがついておらず、正直働ける状態ではありませんでした。しかし、通院とヨーロッパひとり旅を続けるには致し方ありませんでした。

通院や薬餌療法、実家と距離を置くことを両親は認めていませんでしたが、両親が信頼を寄せる団体への就職をすることで文句を言わせませんでした。私の地元には、大人の発達障害者の居場所がありません。

診断を受けても、一般企業で働くためには

診断を受けた後、一般企業で働くためには、ひとつの覚悟をしなければなりません。


それは、発達障害を隠して働くことです。

今の日本では、発達障害をカミングアウトしたうえで就職するのは困難です。

ほとんどの業界・企業で、障害の有無を問わず働きやすい環境づくりができていません。

仮にできているつもりでも、それは身体障害者・知的障害者が働くことを想定したもの。

「手すりやエレベーターなど、設備が整えば健常者と同程度のパフォーマンスができる」とみなされることが多い身体障害者と違い、お金をかけて設備を整えるだけでは適応できません。

そのことを分かっている会社は、発達障害者を雇うことをデメリットだと考えています。

障害者・一般雇用どちらでも、発達障害だとわかった瞬間、即座に採用を見送る企業もめずらしくありません。

世の中の障害者雇用求人の大半が、身体障害者を雇うことを想定しています。


さらに、障害者雇用の求人に応募できるのは、障害者手帳を持つ人だけ診断を受けた、だけでは応募できないのが基本です。

発達障害者の場合、適応障害やうつ病などの2次障害がない場合は精神障害者手帳3級で認定されることがほとんど。

住んでいる自治体にもよりますが、3級だとメリットが少ない。申請のわずらわしさもあってか、ハナから障害者手帳を申請しない人もいます。

発達障害ゆえのこだわりが強い性格からか「障害者手帳を持ったら負け」と考えている人もめずらしくないようです。

そうなると、一般企業で働くためには発達障害を隠すことが前提となります。隠さなければ、就職できる確率が一気に下がるからです。

嘘をつくことが平気な人ならなんてことないかもしれませんが、当事者には情に厚くて世話焼きの人が多いのではないでしょうか。そんな人が、嘘をつきながら働くことに耐えられるとは到底思えません。

発達障害を隠して働くことができる人は、役立たずじゃない。

その時点で、むしろ健常者よりも優秀なのではないかと。にもかかわらず「発達障害者は役立たず」と考えている人はあまりにも多い。

とても悲しい。


発達障害を隠して働くのがつらかった理由

私にとって、隠すことは嘘をつくことと同義です。

私は、毎日嘘をつきながら働いていたのです。会社にいるすべての人に対して。

ADをクビになり、診断を受けた後に訪れた職場は、みんな私に優しかった。

まだ20代前半なのに、地元に戻らず、単純作業を繰り返すだけの仕事をしている理由を、誰も聞かなかった。みんな、私がワケありなのは察していたらしい。

だからか、ミスをしてもクズ扱いされることはなかったけれど、代わりに「困ったことがあったら何でも言ってね」と。

にもかかわらず私は、嘘をつきながら働くことを余儀なくされました。本当のことを言えば、障害以外の理由をつけてすぐにクビを言い渡される。

ADをクビになった時に体験しているので、「発達障害=役立たず」とみなされることを恐れていたのです。


団結力が求められることはないけれど、全員が規律通り、マニュアル通りに規則正しく仕事をこなすことを求められる仕事でした。

残業・休日出勤なしで忙しさはなく、有休もすべて消化できるので、健常者にとってはとても働きやすい職場だと思います。

しかし、「みんな一緒」が求められるため、とてもつらかったです。私はマイノリティで、みんなと一緒ではないから苦しんでいるのに。

場にそぐわない発言、気の利かないことに加え、防ぐことができない注意欠陥。ともに働く人々が感じている「アレ、この子おかしいな」の理由を正直に伝えられない現実。

嘘をつくことの罪悪感と、申し訳なさで自分自身を徹底的に責めました仕事自体はキツくないはずなのに、ぜんぜん、働きやすくなかった。


1年間、発達障害を隠して働き続けたら…

20代前半、発達障害と診断を受けたばかりの私が、障害を隠して1年間働いた結果…


10キロ痩せました。

ダイエットはしていません。健康や運動を意識したこともありません。にもかかわらず、10キロも痩せてしまいました。

激太りした経験もないけれど、ここまで激ヤセしたのも生まれて初めてです。少しやせ型だった身体が、ガリガリになりました。

あまりにも痩せすぎて、辞職理由は「できちゃった結婚」だと勘違いされていたほどです。

ズボンやスカートのウエストが一気に合わなくなり、まるでダイエット食品のビフォー・アフター画像のようだと自らを嘲笑いました。


原因は、嘘をつくことへの罪悪感と薬の副作用以外考えられません。

ミスを繰り返しても、気の利いた行動ができなくても、本当のことが言えない。

地元を離れ独り暮らしをしている話題になったら適当にはぐらかすしかない。

正義感・こだわりが強く真面目な性格の私には「発達障害を隠すのは致し方ないこと」と割り切ることができませんでした。


薬の副作用と戦いながら働くのは、本当につらかった。

始業後1~2時間の気持ち悪さは、リンゴジュースやコーラをこまめにのんでごまかした。

お昼ごはんを挟めば胃痛は治るけど、午後の眠気には何回も負けてしまった。

薬の存在を知られないように気を張っていた。平穏な職場でひとり戦うのは、拷問でしかなかった。


副作用もつらかったけれど、嘘をつき続けることのつらさが余裕で上回る。

体重が増減しにくい体質の私が1年で10キロ痩せたことからも、1年間、嘘を突き通すことのストレスをお分かりいただけるかと思います。

嘘をつくのをやめた今、もとには戻らないものの、体重の減少は止まりました。

発達障害を隠すことをやめた今だから言えるのは、
嘘をつきながら働くくらいなら、もうニートでも居候でもいいや。

収入がゼロにならない方法はわかっているので、できる範囲で生きていけばいい。それさえも許されないのなら、私は死を選ぶかもしれない。


いじめられていた学生時代、障害者差別を受けたAD時代と並んで、障害を隠しながら働いた時期は拷問でした。あんな拷問に耐える日々を送るくらいなら、いっそのこと死にたい。

でも、死んだらヨーロッパひとり旅ができなくなるので、障害を隠さなくてもいい生き方を模索している最中です。

もし、発達障害を隠しながら働くのがツラいなら、いっそのことやめるのも選択肢のひとつじゃないかと。


1年で10キロ痩せるよりも、身体を壊すよりも、マシだよ。嘘をつき続けなきゃいけない状況なんて、普通じゃない。

嘘をつくことを強いられた経験があるのなら、他人を傷つけることにも繊細なはず。限界まで嘘をつき続ければ必ずばらばらになってしまう。その前に、嘘をつかないと働くことができないという現状について、一度考えてみることをおすすめしたいです。


良くない状況が当たり前のようにまかり通っていることが、発達障害者にとっての「生きづらさ」の原因のひとつなのだから。

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