読書記録9「殺人者」
感想
本屋の店員さんの「イチ押し」コーナーに「蟻の棲み家」と共に並べられていた本です。
店員さんの推薦文もさることながら、初めの数ページをめくると、ページごとに印象に残る言葉がたくさんちりばめられていたのも購入するきっかけになりました。
例えば、本文には次のような言葉がありました。
小説家は「人間の本質を描く」仕事をしていると、聞いたことがあります。ミステリー作品として、犯人あて、事件解決(動機やトリックの解明)という形にはなっていますが、普段、あまり深く考えなかったような人間の内面を「えぐり」、たしかに・・・と読んでいる自分が納得してしまう「答え」が提示されている哲学書と言うか、現代社会の分析書という感じもしました。
「殺人者」と、ストレートなタイトル。
読みながら怖さを感じましたが、それは、猟奇とか狂気と言うイメージの「怪物」ではなく、冷徹と言う言葉からイメージできる冷ややかさや哀しさ、そしてどことなく凛とした感じを受けたからです。
刑事ではない主人公が、事件の真相にたどりつきます。
真犯人がつかまって解決するという話ではありません。いや~な終わり方と言えなくもないですが、ぬめっとした重たさではなく、すっきりしているというか、モヤモヤはしませんが、物語の中で語られる人間の本質にかかわる言葉の数々に圧倒されるという感じでした。
主人公に犯人(殺人者)が語った言葉
「人の心の中なんて、理解する必要があるんでしょうか。」
いろんな意味で、考えさせられる一言でした。
密度の濃い、重厚な作品ばかりです。
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです