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アイドルの狂気に脳を灼かれた貴方へ。(映画トラペジウム感想)
トラペジウム、見てまいりました。
ネタバレを含むかもしれませんのでご注意を。
最初に簡潔に言わせて頂くなら、どれだけアイドルの狂気に灼かれたかで評価が変わる映画だと思いました。
遠くからなんとなくアイドルって素敵って思っている人や、アイドルという沼の浅瀬でチャパチャパしてる人にはただのサイコパス主人公のご都合主義物語にしか映らないかもしれません。実際、手放しに褒められる主人公でもないですし。
けど、恐ろしいことに現実に東ゆうがいて、もしその当たりの強さが露見していなければ、彼女はドルオタからはそれなりに評価される存在だろうことは想像にかたくないんですよ。
アイドルにかける情熱、過去すら未来のアイドルとしての踏み台でしかないストイックさ、他者を巻き込む懐柔性、セルフプロデュース力、事務所の社長から1人、今後の展望や自身のみ生歌を任される信頼。枚挙にいとまがない。
アイドルサイボーグ。
そんな褒め言葉が存在する世界ですから、アイドル業界。滅私奉公、ならぬ、滅私奉アイドル。自身の青春も色恋もかなぐり捨てる姿勢に人は灼かれたりするんですよ。満ち足りた人を応援できるほど、多くの人間は満ち足りていませんからね。
けれど、作中の彼女の評価は芳しくありません。東西南北というグループで一番不人気と言ってもいい。それは持って生まれた天性のビジュアルや雰囲気に、努力や試行錯誤が敵わないという暗示なのかもしれません。
アイドル戦国時代を、ビジュアルというシンプルで強靭な力を武器の一つとして勝ち上がっていった乃木坂というグループ。
そこで戦った、高山一実という人がそれを書いたということにどれだけの意味を見いだすのか。そういった所もこの作品の評価ポイントだと思いますね。
貴方はアイドルのなにに惹かれましたか?
ビジュアルですか?
ダンスですか?
歌唱力ですか?
性格ですか?
それとも葛藤する姿ですか?
もし前者なら貴方にとってこの作品は見るに値しないかもしれません。
しかし後者であるなら、葛藤や苦悩に苛まれるアイドルに何かを見出した方なら、この作品は貴方の琴線に触れる物であることは間違いないでしょう。良くも悪くも。
自分自身を限界まで削っても、そこに至れないのならば、周りも削っていくしかない。
そういう覚悟に至るだけの狂気と熱量が主人公にはあったけれど、彼女以外誰もそれに乗れるだけの熱は持ってなかった。
その熱に浮かされて走り出すことも、有耶無耶なままでもいざ光を、喝采を浴びれば他の瑣末事が吹き飛ぶほどの没頭も出来ず、彼女だけが浮いていく。
筆者である高山一実ご自身も、アイドルに灼かれて、アイドルを目指した人で。だからこそ、そうでない人達との溝を書くことにしたのかな。そう思うと、ただのサイコパスと言う一言では片付けられるものではないかなと。
アイドルと言う夢の舞台に、
立ってさえしまえばなんとかなる。
報われる。
救われる。
そういうわけではないんだよと。
そこからも、葛藤は有って、
苦悩があって、迷いがあって、
挫けて、折れて、去ってく人が居て、
それでも諦められない一握りが、
いつか報われるために戦い続ける。
けど、報われることが全てでもなくて、
その最中に得られるモノも確かにあるよ。
そう言われてるような気がしますね。
今、アイドルに灼かれてる人。
それ故にアイドルを追いかける人、
それ故にアイドルを目指す人、
そんな人達にはオススメ。
そういう思い入れのない人には正直微妙かも。
原作がどれくらい端折られてるのかが気になるので、そっちもいずれ読んでみたいですね。