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屋久島前哨戦!北アルプスの女王に挑んだ夏
山に登れない子は屋久島に連れてかないよ
暴君夫さんの発言から四ヶ月。地元の低山で練習を重ねてきたモモムギ一家が初めて挑んだ北アルプス。
みんながどれだけ登れるか確かめるという夫氏のもと、我々の挑戦が始まった。
このお話の登場人物
夫さん
海外勤務を夢見る山男。英語は若いころからコツコツ勉強中。座右の銘は継続は力なり
モモムギ
子宮筋腫と変形生膝関節症に翻弄されながら、毎日を低空飛行で生き抜くヘタレ主婦。座右の銘は急がば回れ
長男くん
心優しい11歳。ちょっぴり怖がり。修行系よりドキドキワクワクが好きなα世代。
次男くん
我が道を行く末っ子8歳。いつも長男と張り合う負けず嫌い。丸いメガネがチャームポイント。
マキちゃん
夫さんの妹。山登りの上級者。健康オタクかつおしゃれなファッションリーダー。好きな言葉は情報は取りに行くもの。
今回挑んだ山
燕岳(つばくろだけ)標高2763メートル。白い花こう岩が連なる美しい姿から北アルプスの女王と称される。本格的な登山を目指す初心者がまず憧れる山のひとつ。
その日夫さんは落胆していた。子どもたちが山登りはもういい、帰りたいと言い出したからである。
お盆に夫さんの実家(長野)に帰省していた子どもたちはキャンプに川遊びとイベントを満喫し、少々ダレ気味だったのだろう。かくいうワタシもキャンプの後は体中が痛かった。一週間前に手術してプレートを取った膝も少々痛む。
じゃあ帰ろうか・・・・と力なく言う夫さんには気の毒だったけれど、子どもたちが乗り気でないのなら仕方ない。その日は朝から雨模様だった。次の日には帰るかとそういう話になっていた。
ところがである。なにを思ったのかギリギリになって長男くんが
明日はやっぱり山に登る!と言い出したのである。
長男くんが行くなら次男くんが行かないはずはなく、行くなら一緒に登りたいと言っていた夫氏の妹マキちゃんも晴れなら行くという返事。
奇しくも明日のお天気は晴れ予報!あれよあれよという間に出発が決まり、夫氏は感無量だ。
嬉々として準備を始めた彼に
明日はどんな山に行くの?と聞いたら
近所の山だよ。ほらあれ
指差した山は思いのほか平らに見えた。そしてそれが間違いであることを後日思い知ることになる。
早朝五時。もぞもぞと起き出す。
夫さんはすでに準備していて、それぞれが背負うリュックの準備をしてくれていた。
ワタシは眠い頭でパンを切り、たっぷりママレードをはさんでいく。
今回の山の食料は
焼おにぎり(お義母さん特製の味噌付き)
焼きとうもろこし
ナッツ詰め合わせ袋8個
ママレードサンドイッチ
クルミパン
食料品は全部夫氏が持ってくれたので、彼のリュックは相当重かったと思われる。子どものリュックには各自が飲むお茶とカッパ、そしてナッツの詰め合わせ袋。
そしてワタシのはというとお茶も免除され、入っているのはカッパとナッツの袋のみというなんとも甘やかされたもの。そんなにしなくてもいいのになあと内心思っていたのだけど、夫の判断が正しかったことが後に判明する。
朝七時。
マキちゃんが合流し出発。登山口まではお義父さんが車で送ってくれた。燕岳は人気があり、登山口ふきんの駐車場はいつも満車で停められないらしい。定期的にバスが出ているという。
道すがらサルの親子が現れ、沸き立つ車内。
赤ちゃんザルがおんぶされていている姿がかわいすぎて、大騒ぎする我々を冷静に見つめ返す彼らは、そういう反応に慣れているのだろう。
登山口到着。
さすが北アルプスの女王。名山百選にも選ばれているだけある。トイレがあり、食堂があり、風呂の設備まで整っている。
私たちが練習で登っていた山は駐車場を探すのさえ苦労したというのに。
そして清涼感が違う!なんともさわやかな空気。さすが女王!(?)
そんなことに感心しつつ、モモムギ一家+マキちゃん5名からなる勇者ご一行は山頂目指して出発した。
子どもふたりが戦士で
夫氏は僧侶
ワタシは魔法使い(ただひとり杖をついていた)
マキちゃんが勇者だ。
子どもふたりが最初からどんどん飛ばしていくのを、夫氏とワタシそしてマキちゃんが続く。
道はきちんと整備されており、自然の岩や木の根が天然の階段のようになっているところに人工の板が添えられていてとても趣があるのだけど、その斜面がかなり急。
もうびっくりするくらいの急斜面!だってこれよじ登る感じですよね?
あまりのことに
なんじゃこりゃあ!!と叫ぶワタシにマキちゃんが大ウケ。
その横で夫氏が
さすが日本三大急斜面と呼ばれるだけのことあるね
と爆弾発言をしてくれて
聞いてないよ!と思う。またしてもか夫よ!
たまらず休憩を要請した。
夫氏のリュックから水筒を出す。子どもたちも各自リュックから取り出す。
マキちゃんだけリュックの先から延びているチューブからチューっと水分が撮れる便利なアイテムで水分補給。初めて見た時は酸素ボンベのチューブなのかと思いましたよワタクシ。
一同うらやましがる。見れば手袋もかっこいい山仕様。さすがはフアッションリーダーだ。
思うにゴルフであれボルダリングであれスポーツというものはそれなりのフアッションというものが必要なのだ。他に登っている人たちを観察してみても、みんなバッチリ山フアッションで決めている。
決して起きがけに登ってみるかと思い立ってやってきたようなジャージにタオルの人はいないのだった。
登る途中で拾ってきた竹を杖にしている人(ワタシ)なんてのは皆無なのである。
そんなことを思いながら登ること30分、最初の休憩所である第一ベンチに到着する。
燕岳の素晴らしいのは休憩所が広く、長い木のベンチが両側に設置してあるところだ。頭上には木漏れ日。最高。
そこで早速ママレードサンドを食べようとしたワタシに皆が
ママレードは頂上で食べようよ、と言う。
なぜだ。みんなそんなに余力があるのだろうか。
仕方なくナッツを食べようとしたら次男くんが
ナッツの袋が頂上が近づくにつれてパンパンになるからそれを実験したいと言い出す。
ユーチューブの知識なのだろうか。いやしかしここで食べなくては絶対体力が持たないと思ったので、自分だけナッツをむさぼる。
10分後出発。ここにきてワタシのくるぶしに異変が。一週間前に手術した膝は大丈夫なのけど、そのあざがだんだん下りてきてですね、ちょうどくるぶしのあたりにあるのが触るとヒリヒリしていたんですよね。
そこが登山靴と擦れてだんだん痛くなってきた。お義母さんに借りたくつしたを二重にしていたのにも関わらず。
みるみる遅れだすワタシ。
ちょっと待って、ちょっと休憩しようが増えるにつれ、どんどん進みたい子どもたちはそわそわ。
ついに長男が歩かないと寒いと言い出した。そこでマキちゃんが
よし私と先に行こう、と子どもたちを先導してくれた。ありがとう勇者よ。
残された僧侶と魔法使い(夫とワタシ)はそろそろと進み、ようやく次の休憩所、第二ベンチに到達した。
待っていてくれたマキちゃんたちと合流しお昼タイム。
焼おにぎり焼きとうもろこしを一同食べまくる。山登りとは実にお腹がすくものなのだ。
ナッツの袋を見るとパンパンに膨らんでおり、次男はご満悦。
ここで20分ほど休憩し出発。最初は良かったもののだんだんとワタシの呼吸が荒くなる。空気が薄いのだろうか?夫氏によるとここから後の休憩所は
第三ベンチ
富士見ベンチ
合戦小屋と続くらしい。
今回は日帰りということもあり、頂上はあきらめて合戦小屋まで登ろうという算段だったのだけど、ここにきて一抹の不安が。
登り出す前の登山口で小学生たちを引率するツアー団体のみなさんと一緒になった。そこでガイドであろうお姉さんがよく通る声で
ここから合戦小屋までトイレはありません!出発前に必ずトイレに行っておいてくださーい!
と言っていたのを聞いていたワタシ。
小屋にはトイレがあるのか安心と思っていたのだけど、そして出発前にもちゃんとおトイレを済ませたのだけど・・・・
はたして合戦小屋まで持つかどうか心もとなくなってきたぞ。いつも思うのだけど女性のみなさんはいったいどうしておられるのだろう?
途中で尿意など感じない人ばかりなのか?
息が苦しい。くるぶしが痛い。トイレに行きたいのトリプルパンチをくらいながら、息も絶え絶えたどり着いた第三ベンチ。
ママレードサンドを堪能した後、ワタシは苦渋の決断をした。
ママはここでギブ。ギブです!下山します!
みんなは最後まで登ってください!
この後の屋久島を考えると無理はできない。
本当はみんなと一緒に合戦小屋まで行きたかった。
名物であるスイカも食べたかった。
がしかし、ここで体を壊しては元も子もないのだ。
幸いにも道はわかりやすく、他に登山する人がたくさんいたから迷うこともない。
ただ心配なのは次男くんの目が若干うつろだったことだ。彼も酸素が薄いせいで辛かったのだろう。
ママと一緒に下山する?
と聞いてみたのだけど、迷った末
長男と一緒に登る、と決めた負けず嫌いの次男。
以外にもまだまだ余裕そうな長男。
いつのまにこんなにたくましくなったのだろう?
ふたりの戦士を大人に託し下山を始める。
さあここからが個人戦だと言い聞かせながら。
登る時も大変だと思った急斜面だが、下るのはその2倍難しかった。膝に衝撃を与えないようにそろそろと下りているワタシを、いったい何人の人が追い抜いていっただろう。
見ていると本当にひょいひょいと駆けるように下りていく。いったい何が違うのだろうリーチの差か?(ブツブツ)
途中でくだんのツアーガイドさんの一行に出会う。
お姉さんが今回もよく通る声で
第三ベンチから富士見ベンチまでが一番斜面が急です!
がんばりましょう!!!!
とのこと(行かなくてよかった)
男の子がひとりトイレに行きたいと申し出、引率の人につれられてどこかへ消えていった。
いいなあ、男の子は。というかみんなどうしているのかしら?(ブツブツ)
第二ベンチまで下ったところで携帯にLINE。
みんな無事合戦小屋までたどり着いたらしく、大きなスイカ(600円)にかぶりついている写真が送られてくる。
く、うらやましい。
こちらもナッツをほおばり進み出す。
帰るまでが遠足だからね!
ひとりで下るワタシにいろいろな人が声をかけてくださった。
帽子がおそろいだと言ってくれたマダム。
木は滑りやすいから気をつけるようにと言ってくれた学生さん。
ありがとうありがとう。
登山口にもどってきた。無事にもどってきた。
動く元気もなくしばらくベンチに座り込む。
動けない、もう一ミリだって動けない(でもトイレに行かなくちゃ)
入り口のそばにはソフトクリームの看板がある。親子連れが買い、うばいあって食べている。かなりの高さがあるそれは何巻きくらいあるんだろうと、ぼんやり考えている間にも色々な人が下りてくる。
中国の人、カップル、学生さん・・・
そして40分後驚くべきスピードで夫氏とマキちゃん、子どもたちが下りてきた。
ママー!!という声が嬉しかった。
合戦小屋まで行ったよー!!!
つかれたああああ
ソフトクリーム食べる!!!!
予想以上にがんばった子どもたちに夫氏の財布のヒモもゆるく、ちゃんと買ってもらったそれを一口もらったのが美味しかったこと!
今まで食べたソフトクリーム(500円)のなかで一番おいしかったかも(笑)
それにしても、ワタシも一緒に合戦小屋まで行きたかったなあ。
モモちゃんが一番がんばったと夫さんもマキちゃんも言ってくれたけれども、ワタシとしては悔いが残る前哨戦となってしまった。
くるぶしのアザが大分消えた今、次回こそは絶対一緒に頂上を目指そうと、毎朝ラジオ体操にいそしんでいる。
みなさまも夏の思い出にぜひ、燕岳に登ってみてはいかかでしょう。
登山装備をお忘れなく。