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渚にて

ここはどこだろう
手足が重く 空気が薄い


私にはもう会えない友人がいた
彼らは励ましの言葉と安いアメをくれた

私にはもう会えない恋人がいた
彼女は安いアメをくれた

私にはもう会えない家族がいた
彼らは「そう いってらっしゃい」と言った


ここはどこだろう
冷たい夜空と湿った土ばかり

出会う人がみな私を避けていく
この姿がそんなに醜いか

私だけが立ち入れない道
私だけが読めない本

許しを求めて失敗した
愛を求めて誰もが去っていった

アメを取り出し
目を閉じ
祈った
故郷が見つかるように

アメをくれた人々を思い出す

雪の中
カミソリのロープの上を歩く

それでも故郷はきっとあるはず
私を愛してくれる人がいるはず

傷がふさがって
また開く

地獄というなら
ここがそうなのだろう

アメを取り出し
目を閉じ
祈った
私を虐げるものがなくなるように

アメをくれた人々を思い出す

目をあけると
何もかもが盗まれていた

何を持つことも許されないのか

光を失い空を仰いでいると
少年が近づき 語りかけてきた

「故郷などない」
「お前は罪人である」

「取引をしろ」

これ以上何を差し出せと言うのか
動悸に合わせ黒い熱が視界を狭めていった

涙がにじんでくる

もう栄養も空気も必要ない
力まかせに消化器と肺を取り出し
少年の足元に放り投げた

「まだ足りない」

差し出せるものなど残っていない
私はすべてが混濁するなか
少年に歩み寄り



ビンタした

力の限り
ひっぱたいた

おしりを重点的に
ひっぱたいた

「おかぁさぁ~ん!」
って言ってるけど

ひっぱたいた

おしおきが終わると少年は
「ありがとう 目が覚めました」
と言って去っていった

なんか体が良くなってた
肩こりとかなくなってた

あと1億円もらった