週刊「我がヂレンマ」<12月30日号>
この季節、帰宅すると暫くは体が温かいので、暖房をつけないが、やはり、寒い。結局は使用する。この無駄な抵抗は何処からくるのか。少しでも使用を遅らせることで、電気代の節約をしようとの、気の小ささからくると思われる。帰宅してすぐにつければいいのだが、どうしても躊躇する。こういった事が積み重なることで、人生を停滞させている可能性がある。
だからこそ、明後日から2025年。
心機一転「一年の計は元旦にあり」でいこう。
伊達巻を恵方巻が如く勢いでかぶりつき、洗髪したのち、文学を貪る。そしてショートショートを書く。そしてまた文学といった具合で、新年をスタートしよう。
さて、今年最後の、今週のコンテンツ(いつも一緒)。
<メモについての解説と考察>
<購入した書籍の紹介>
<月曜、ひとり歌会>
前置きはいらないです。
書くことなんてないんです。
<メモについての解説と考察>
「一顆(いっか)の果物」
丸く小さなもの一つ。一粒。
・さうした幾日かの後、それら一顆の物は二つとも箪笥の上にあった。
小穴隆一『一顆の栗一顆の小なし』
・そんな話を聞きながら、私はしばらく手の上にある一顆の露の玉に見入った。
谷崎潤一郎『吉野葛』
・玉はたぶん後宮の女官の装身具かなにかの、ちきれた一顆だったにちがいない。
澁澤龍彦『高丘親王航海記』
常用外の単語と思われる。古典、戦前の作品多く使われる、古い言葉。
どこか上品な印象があり、意味もなんとなく伝わるので、使用に問題はだいだろう。
「バニシングツイン」
双胎一児死亡のこと。妊娠した双子の赤ちゃんのうち1人がお腹の中から消えてしまう現象。
多くのケースで妊娠初期に発生する。一般的に妊娠したときの胎児が1人の場合は、初期に流産すると自然に排出される。
自然排出ができない場合、子宮内容除去術を行うケースもあります。双子を妊娠すると、片方の胎児が亡くなっても自然排出されず母親の子宮内に残り、そのまま吸収されるのです。
医学的には双胎一児死亡と呼ばれています。
言葉の響きがカッコイイのでメモ。ただそれだけ。
「フィロソマ(PHILOSOMA)」
ソニー・コンピュータエンタテイメントが1995年7月28日に発売したPlay Station向けの強制スクロールシューティングゲームである。演出担当は福永莞爾、音楽担当は大谷幸。
エンディングのムービーは、難易度の高いモードになるにつれてストーリーの核心に迫る内容となっている。
横スクロール(サイドビュー、サイドクォータービュー)、縦スクロール(トップビュー)、3D奥(または手前)スクロールなど、各ステージには様々な視点でスクロールする場面が混在する、3D部は、ステージ自体はポリゴン、敵キャラクターやプレイヤーキャラクター、弾丸等はビルボード(二次元画像)である。
シールド制と機数制で、2重に張られているシールドが無くなり、実機のみになってダメージを受けると自機が爆発して一機失い、その場で復活する。残機がゼロになると、ゲームオーバーとなり、ステージの最初からやり直しとなる。
本作品において、「フィロソマ」は、生体システム又はメカニズムの総称を指す。大きく分けて、「媒体」にガメトサイト遺伝子を移植するゾエア期、サナギ状態のファージ期、ファージ期を終えたフィロソマが脱皮して進化するプラヌラ期(プラヌラ成体)の3つに分かれる。
「オウンドメディア(Owned Media)」
自社発行の広報誌やパンフレット、カタログ、インターネットの自社ウェブサイト・ブログなど、企業や組織自らが所有し、消費者に向けて発信する媒体を指す。
「ペイドメディア(Paid Media)」や「アーンドメディア」(Earned Media)と合わせ、企業マーケティングの核となる3つのメディアとして認識される媒体といえる。
「ピカンテオイル(Piccante oil)」
イタリア語で「辛い」ことを"ピカンテ(Piccante)"といいます。ピカンテオイルとはその名の通り辛いオイルで、主に唐辛子を原料につくられます。ナポリではそこにニンニクとトマトペーストを加えることでよりコクのある「赤いオイル」に仕上げるのが特徴。
簡単に作れるナポリのピカンテオイルを紹介。
【材料】
・オリーブオイル 200g
・サラダ油 200g
・トマトペースト 80g
・唐辛子(乾燥) 20~40g
・にんにく 4かけ
・塩 適量
①唐辛子はフードプロセッサーなどにかけて細かくしておきます。あまり辛くしたくないときは半分に折る程度でもOK。
②小鍋にオリーブオイル、サラダ油、半分にカットしたニンニクを入れて火にかけます。ニンニクは潰すと焦げやすくなるので、半分にカットするか丸ごとつかいましょう。
③ニンニクから小さな泡がでてきたら弱火にして、唐辛子にを加えてゆっくりと火にかけていきます。
④ニンニクが薄っすら色づいてきたらトマトペースト、塩をひとつまみ加えてさらに数分火にかけていきます。混ぜながら底にあたらないように、ニンニクが焦げすぎないように気をつけます。
⑤火から外して常温になるまでそのまま冷やします。冷めたら小ザルでオイルを濾せば完成。
「船場言葉」
江戸時代に船場の町人たちが使っていた言葉を元にしています。
船場は、大阪市中央区にある地名です。大阪城の西側に位置し、大阪の町人文化の中心地として知られています。
船場には老舗の商家が多く、公家や武家などを相手に商売をしていたものも多くいました。
そうしたこともあって、丁寧な言葉遣いが求められました。
また、京都の伏見商人や滋賀の近江商人らの船場への流入もあって、京都弁や滋賀弁の影響も受けて、独特の方言が形成されました。
船場言葉は、商人特有の表現もあって、厳密には東京の山の手言葉に対応するものとは言い切れない部分もあります。
しかし、関西弁のなかで、もっとも上品かつ流麗な方言として知られる。
「大佛次郎(1897年10月9日‐1973年4月30日)」
日本の小説家・作家。大仏次郎(新字体)とも書く。
神奈川県出身。本名:野尻清彦。『鞍馬天狗』シリーズなど大衆文学の作者として有名なほか、歴史小説、現代小説、ノンフィクション、新作歌舞伎や童話など幅広く手がけた。日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章受章者。作家の野尻抱影(正英)は兄。
主な作品に、
『鞍馬天狗』『赤穂浪士』『ドレフュス事件』『帰郷』『宗方姉妹』
『パリ燃ゆ』『天皇の世紀』など。
<購入した書籍の紹介>
『JR FAMILY OF COMPANIES』
ウィリアム・ギャディス
木原善彦=訳
世界文学史上の超弩級最高傑作
✖
爆笑必至の金融ブラックコメディ!!!
殊能将之・熱讃の書、奇蹟的邦訳!!
「全米図書賞受賞作」
11歳の少年JRが巨大コングロマリットを立ち上げて株式市場に参入、
世界経済に大波乱を巻き起こす――⁉
――Money? 一言で始まる本書のテーマはずばり「金」。JRという高度資本社会のハックルベリー・フィンを主人公にした金融ブラックコメディであり、ものすごくおもしろい。(中略)こんな複雑で長い物語なのに、本書には章立てがいっさいない。それどころか、行開けすらない。始まったら最後、区切りなしにずーっとつづくわけ。
「普通に書いてもめちゃめちゃおもしろくなるはずなのに、なぜこんな書き方をするのか?」
と、三流娯楽作家であるわたしは首をひねり、実にもったいないと思ったけれど、まあ、しかたないか、アメリカン・ポストモダン・フィクションだもんな。
‥‥‥というのは半分冗談で、このスタイルはテーマに即したものだから、いいじゃないかと思う。また、こういう書き方だからこそ内容が圧縮され、この程度の分量ですんでいるのであって、普通に書いたら5000枚くらい必要だろう。あと、いまのままでも充分におもしろいし(おもしろくなかったら読みませんよ)。
とにかく、「11歳の悪ガキがビッグビジネスを牛耳る」というある意味荒唐無稽な話をここまで徹底的かつ詳細に描ききった力業に脱帽。
処女作が全然売れず評判にもならなかったにもかかわらず、その後20年(しかも33歳から53歳までの20年間だよ)を経て、こんな小説を書くという強靭な精神にも心底敬服。
本物の小説家ってのは、すごいもんです。
(『殊能将之 読書日記』より)殊能将之
前々から欲しかったが、そこそこ高額(税込み8,800円)のため、購入が伸び伸びになっていたやつ。黒地に金文字の表紙が渋く、迫力がある。
940ページの鈍器本であり、みんな大好き国書刊行会です。最高。
『人工島戦記 あるいは、ふしぎとぼくらは
なにをしたらよいかのこども百科』
橋本治
構想30年! 橋本治が挑んだ前代未聞の全体小説!
3000枚超の遺稿と共に遂に刊行!
「人名地名その他ウソ八百辞典」、別冊「人工島戦記地図」付。
発行=ホーム社 発売=集英社
橋本治は、「死んでも平気」だった。
まねしたくはないけど、
ちょっとあこがれる。
――糸井重里
橋本治さんの書くものの
多くは『説明』です。
それも『自分に対する説明』。
だから、絶対に手を抜かない。
(自分を説得するときに手を抜く人はいません)。
『人工島戦記』がこれだけ
長くなってしまったのは、
すべての細部について
自分でも得心がゆくまで
徹底的に説明しようと
したからだと思います。
――内田樹
初めて橋本さんと会ったのは、
もはや半世紀近く前。
部屋いっぱいに広がった
ジグソーパズルを制作中だった。
なんて面倒くさい趣味の持ち主
なのだろう!と呆れるやら笑うやら。
『人工島戦記』は、そんな橋本さん
ならではの、緻密にして壮大、
青春ロマンにして現代日本史。
まさに渾身の遺作!
――中野翠
気をつけてください。
読み始めるとやめられません。
私は深く考えずこの本を
読み始めてしまったため、
多くの約束を反故にして
社会的生命を失いました。
人生が終わりました。
――町田康
【本文より】
平成四年の一九九二年の五月のある日、キイチの部屋でゴロゴロしながらテレビを見ていたテツオは、「こんなのいらねーよなー」と言った。
テレビは夕方のニュースで、「志附子湾人工島計画に反対する市民の動き」というのをやっていた。
比良野市長の辰巻竜一郎は、「比良野市の発展と志附子湾再開発のため」に志附子湾の四分の一を埋め立ててしまうような「人工島計画」を発表し、それに対して「環境派の市民団体」が反対を表明しているというのだった。
千州最大の都会である比良野市では、志附子湾を埋め立てて「人工島」を作る計画が着々と進んでいた。それを知った国立千州大学の二年生のテツオとキイチは、すでにある市民運動に共感することが出来なかったので、新しい反対運動を立ち上げる。彼らにとって唯一ピンと来るのは、「人工島?そんなのいらないじゃん」という、そのことだけだったのだ。
大学ではテツオとキイチを中心に同好会が組織され、人工島建設への反対運動が動き始めるが、話はやがて彼らの父母、祖父母、兄弟、近所の人々の人生にまで脱線し、街全体の歴史とそこで生きる人々の姿が浮かび上がっていく。
架空の地方都市を舞台に、この国の姿を描いた未完の大長編‼
まさかの鈍器本2冊同時購入。1404ページ、税込み10,780円という圧倒的スケールで、最早、その姿、辞書そのものである。何と云うか、作者の執念が具現化したようで、言いようのない迫力を帯びている。楽しみ。
『斎藤家の核弾頭(朝日文庫)』
篠田節子
「国家主義カースト制」「国家効率主義」で
統制された2075年の近未来日本‥‥‥
笑って泣ける
予言的ディストピア
小説の傑作!!
「斎藤家の家長・総一郎は、核弾頭を手に日本政府に宣戦布告した!」
ブレイディみかこ氏、推薦。
もはや能力別市民クラスも、出自も、家柄も、資産の有無も、
個人的評価の上ではなんの影響も与えない。
この国では、役に立つか、立たないかという
二つのカテゴリーでのみ、人間は分類される。
いや、役立たずも最終的に役に立つ。
国民の一人も見捨てず、「役立たず」を、被験者すなわち
実験動物として積極的に活用し「役に立たせる」システムを
作ったという点では、この国の機構は評価していい。
(本文より)
「国家主義カースト制」よって超管理社会となった2075年の日本。政府から立ち退きを強制された超エリート「特A級市民」斎藤総一郎の一家は、理不尽な命令に抵抗し日本国政府に宣戦布告する!
いま読みたい、予言的ディストピア小説の新装版。
《解説・ブレイディみかこ》
設定が面白く、つい手にとった一冊。「超管理社会で人々が縛られ、それから逃れようとする」という設定はよくあるが、ひとつの家族を主人公にしたあたりに惹かれたのだ。私にとって珍しい朝日文庫。
『トリフィド時代 食人植物の恐怖(創元SF文庫)』
ジョン・ウィンダム
中村融=訳
緑色の大流星群が夜空を覆い、文明は崩壊した。
歩く巨大植物が人を襲う。
破滅SFの金字塔、完全新訳。
その夜、地球が緑色の大流星群のなかを通過し、だれもが世紀の景観を見上げた。ところが翌朝、流星を見た者は全員が視力を失ってしまう。
世界を狂乱と混沌が襲い、いまや流星を見られなかったわずかな人々だけが文明の担い手だった。
だが折も折、植物油採取のために栽培されていたトリフィドという三本足の動く植物が野放しとなり、人間を襲いはじめた!
人生の生き延びる道は?
ジョン・ウィンダム
1903年、英国イングランドのウォーリックシャーに生まれる。様々な職を転々としながら短編小説の執筆を始め、31年、SF雑誌〈ワンダーストーリーズ〉よりデビュー。
51年に『トリフィド時代』を発表し、一躍読書界の注目を集めた。
侵略/人類破滅テーマを得意とし、ほかにも『さなぎ』『呪われた村』『海竜めざめる』などの名作を遺した。
69年歿。
『トリフィド時代』や『呪われた村』は映画化もされた。
スティーヴン・キングは著書『死の舞踏』中で、「英国が生んだ希代のSF作家」と賞賛する。
「とりあえずSF小説を買っておけ」キャンペーン中なので手にとった一冊。ジョン・ウィンダムが初見な、にわか者です。これも出会い。これはいいだろうと勘で買ってよかった。金字塔らしいし。
『命売ります(ちくま文庫)』
三島由紀夫
もっとはやく教えてほしかった‥‥‥
隠れた怪作小説発見!(想像よりも数十倍オモシロイ)
読んだ人のほとんどが「みごと!」と唸る三島由紀夫の極上エンタメ小説。
イメージを裏切る読みやすさで、
ラスト10頁の衝撃的どんでん返しで一気読み。
スリリング&ロマンティック!
これを読まずして三島を語るべからず!!
「こんな面白い作品、ほっといていい訳がない」
「仮面の告白」「潮騒」「金閣寺」といった代表作もすごいけど、
いまの気分はコレでしょ。
目覚めたのは病院だった、まだ生きていた。必要とも思えない命、これを売ろうと新聞広告に出したところ‥‥‥。
危険な目にあううちに、ふいに恐怖の念におそわれた。
死にたくない――。
三島の考える命とは?
解説・種村季弘
三島由紀夫って、こんな小説あったの? それもちくま文庫で? これは買うしかないと、気づけばカゴの中。豊穣の海・四部作を挫折中だったが、再開してもいいかもと思わせてくれた。
<月曜、ひとり歌会>
「五・七・五・七・七」「季語はいらない(使用可)」という最低限のルールを守り、言葉を研くために始めたこの企画。
2024年、最後の歌会です。いつもの通りノープランで、勘で、シックスセンスで詠いあげてやりますか。
前置きなんていらない。本編で勝負。
ということで、さっさと詠おう。
〇蛇イチゴ どこに生えてる忘れたな どうでもいいよ子供のころは
〇闇の奥神経尖りぼくを呼ぶ 聞こえないフリ バレてるみたい
〇大晦日 飯と酒とで埋め尽くす それでも晴れて暮れるんですが
〇震えてる 何はなくとも 震えてる 光が差して避ける苦しみ
〇佐藤です 突然夜道 宣言す 「うわあ」と逃げるソレ追う月夜
〇匙投げる その匙拾う また投げる いつしか匙が在庫過多です
〇ゴミ屋敷棲みつく人の夕焼けは屹度鮮烈闇は激烈
〇ひとつまみぼくのこころをひとつまみしたでころがししったかぶりか
〇光散るサラバ人類星が散る 孤独な闇に浸る安らぎ
〇「馬鹿野郎」「心配かけて」ゴメンてさ 沈黙ながれ 落ちた一涙
終わったのだ。
今年最後の、週刊「我がヂレンマ」が。
いつもより少しだけ長くなりました。
意外と十首詠うのは簡単です。しかし、集中力が切れだしたタイミングで始まり、時間がないので言葉を吟味する時間がない。いつものことだが、いくらか口惜しい。
だが終わる。
明日からは年を跨いで三日連続ショートショート。
ガンギマリで頑張ります。
そういうことです。