週刊「我がヂレンマ」<2月24日号>

 休日の月曜日。 
 ランチは日高屋の「野菜たっぷりタンメン・麺大盛」「三個餃子」で済まし、悪い病気で地元の本屋に赴き、結局買わず、行きつけのスーパーマーケットへいく。
 コスパ、衝動、豊潤なる惰性。
 エアーポケットのようで、呑気な晴天に暖められた布団の上にこの記事を書き始めている。昼過ぎから始めているので、「夜は短歌に集中しよう」という魂胆である。
 しかし、それが上手くいくだろうか。時間があるとのんびりしてしまう性分にあって、結局は中途半端に時間をかけてしまう可能性が高い。
 そこは休日マイペース・モード。 
 まぁいいじゃないか。
 今週のコンテンツ(毎週まったく同じ)。
<メモについての解説と考察>
<購入した書籍の紹介>
<月曜、ひとり歌会>
 前置きで何を書くべき悩むが、 
 前置きに意味などない。
 単なる文字数稼ぎなのだろうか。

<メモについての解説と考察>

「獰猛で檸檬」
 字が似ている。それだけのことだが、何か、純文学の、酸味の利いた香りが漂っている。狂暴だが、鶏の唐揚げにおける檸檬のような存在の男。昔懐かしいヤクザの鉄砲玉。主役にはなり切れず、レモンサワーにおいてはサワーあっての存在である。単体での価値を認められにくい、そんな虚しさ、焦燥が、獰猛で檸檬なのかもしれない。

「火垂るのハッカー」
 不謹慎。「うわあ、綺麗なハッカーや」壺か何かに、大量に捕らえられるハッカーたち。二人を照らすハッカーの淡い輝き。
 不謹慎。
「戦時中にインターネットなんて無いのだから、ハッカーも存在しえないんや、節子‥‥‥‥‥‥‥‥」
「ならなんで、こんなんメモしたん?」
「思い付きや節子。皆まで言わすなや」
「ドロップカーブ、投げましょうか?」
「そうそう、右バッターなら外角にボール気味でな」
 甘く入ったので、痛打を浴びる節子。
 二人の夏は終わった。

「安田善五郎(1886年6月26日‐1963年1月10日)」
 日本の実業家。安田銀行頭取、京浜電気鉄道社長、安田生命保険社長、大垣共立銀行頭取、四国銀行頭取、肥後銀行頭取等を歴任した。三女・智恵子の夫は根津嘉一郎(2代目)、四女・松江の夫は萩谷朴。
 安田善次郎の三男(善次郎49歳のときの子)。幼名は三郎彦。福島県立安積中学校(現・福島県立安積高等学校)17期出身。後年、安積中学校から東京に進学した学生のため、父・善次郎の言葉「積善の家に必ず余慶あり」からとった積善寮を牛込に開設し、学費の援助も行った。1919年安田銀行頭取に就任。
 どこで知って、
 なぜメモしたかは不明だが、立派な人物であることは確か(浅薄)。

「躯体上の翼(結城充考・著)」
・哀愁漂う逢瀬のプロセス
 SFのなかで描かれる文明終焉の風景は、虚無感と同時に、しばしば人を哲学的な思索への駆りたてる。その最も今日的姿が、本書の原風景だ。顧みられない放置された膨大なるデータ保存庫。話はそこから始まる。

主人公の少女・員(エン)には、パスワード解読のスキルがあり、そうしたひっそりとしたサーバをあちこちのぞき見るのが常であった。ある時、思いもかけず、自分と同じように、ネットに侵入する謎の存在に出会う。

員は興味を惹かれ、相手のデータから探り出し、もう一度接触しようと試みはじめる。相手は誰だったのか。どういう存在なのか。

なんだか無人地帯で発生する「初恋」のようなお話だが、実は員はヒトではない。生物兵器として開発された特殊な生命体なのだ。舞台も終末観漂う未来世界で、大きな〈共和国〉が緩やかな崩壊途上にあり、巨大船団が気の遠くなるほど長い時間をかけて異形のものたちと対戦している。

壮大な背景にあって、それはなんと小さな目覚めなのだろう。だが哀愁漂う逢瀬へのプロセスは忘れ難く、これは個人と他者とを結ぶ根本原理に関わる物語なのだと確信させる。
                  (ファンタジー評論家 小谷真理)
            [日本経済新聞夕刊2014年1月8日付]より引用。

「ペーソス」
 悲哀や苦悩など物悲しい感情。
①情念。悲哀。哀感。
②強い感情の動きで、情熱や熱情、激情など。
③身に迫る悲しい感覚や、しんみりとした哀しさ。
④物悲しい情緒や苦悩。
 ペーソスは元々はギリシア語の「pathos」(パトス)で、それを英語読みにして「ペーソス」となる。
 強い感情としながらも、どこか物悲しい情緒であったり、哀愁といった人間の弱さや切なさ、或いは、共感を呼ぶ侘しさを表す言葉。

「罰がなければ、逃げる楽しみもない」
 これは安倍公房の小説「砂の女」の一節。
 逃げることに楽しみが必要なのか。犯罪を犯しても逮捕されないのなら、逃げる必要はない。
 もしくは、サディスティックな追いつめられた状況でこそ、マゾヒズム的な快感を得る、変態ということか。或る意味、緊張感というのはヒトを高揚させ、奮い立たせ、脳を回転させる。
 溝があるから跳躍するわけで。
 というか、「砂の女」ちゃんと読もう。

「鏤骨(るこつ)」
 骨に刻んで忘れないこと。
 骨を刻むような苦労・苦心をすること。ろうこつ。
 四文字熟語には、
「銘肌鏤骨(めいきるこつ)」
 心にしっかりと刻み込み、決して忘れることが出来ないこと。
「銘肌」は皮膚に刻むこと。
「鏤骨」は骨に刻み込むこと。 
 肌・骨に刻み込むように、しっかりと記憶して忘れることがdけいないという意味。

<購入した書籍の紹介>

『ダダイストの睡眠』(editorial republica共和国/境界の文学)
                              高橋新吉
                            松田正貴=訳

ダダは一切を抱擁する。何者もダダを戀する事は出来ない。

没後30年(刊行された2017年時点)を経て新たな評価を迫る短編集。
詳細な解説および略年譜を収録する。

現実と内面、
正気と狂気のあわいを越えた、
詩的言語の実践。
『ダダイスト新吉の詩』(1923)によって一挙に《現代詩》を
到来させた日本最初のダダイスト、高橋新吉。
虚無思想と禅を基盤とし、
時代と社会を超越した14編を斬新な構成で編集。

彼は明治大正を通じて芸術史上に於ける著しく特異な個性である。
                            ――佐藤春夫

僕は貴兄を結果的にというよりも過程的に見て大好きなのです。
                            ――中原中也

彼はダダの精神を最初に最も強く、深く把握した日本に於ける先覚者だ。
                              ――辻潤

高橋新吉の詩人としてのえらさは、彼の詩の背景に禅があったり、
ダダがあったりするからではない。
むしろそんなものは彼の詩的天才に害毒にさえなる。
                           ――西脇順三郎

 ダダイスムとは、1910年代半ばに起こった芸術思想・芸術運動のことである。ダダイズム、ダダ主義、或いは単にダダとも呼ばれる。
 第一次世界大戦に対する抵抗や、それによってもたらされたニヒリズムが根底にあり、既成の秩序や常識に対する否定、攻撃、破壊といった思想を大きな特徴とする。
 らしい。
 だそうです。
 ここ最近、明治から昭和初期の作家が気になっており、つい、手にとった一冊。BOOKS青いカバさんは、こういったニッチでエッジの利いた、素晴らしきマイナーな新刊本もある。油断できない。

『暮坂』(発売日 1994年11月25日)
                              小島信夫

深い洞察とユーモア。
人生を軽妙に語る、作家の自在なまなざし。

「八十歳に近くなっても息子のことで悩む夫婦が出てきたりと、かなり切ない話です。しかし作者の背後に似かよった状況があったとしても、作品世界に昇華することで現実と距離をとり、健全さを取り戻しているように思われる。『暮坂』には何とも言えない悲しみが、感傷的にではなくにじみ出ています。抽象性の強い作品なのに、風雅とこっけい味があり、恬淡としていて開放感もある。そこが私には面白くてたまらない。年を重ねるほど深々と、黒々と、その作品世界が読む側にも見えてくるはずです」
                       大庭みな子(読売新聞)

 謹呈の短冊が付属してました。
「謹呈 小島信夫 山崎弘様」
 誰だ。それらしきは「画家」の山崎弘さんだけど。
 古本・古書を買うとこういったオマケがついている、ことがある。
 それにしても小島信夫の古本は高価。12000円のやつもあったし。
 本馬鹿に古書馬鹿まで加わったら、いよいよ救いようがなくなる。

『レヴォリューション』(1983年6月30日 発行・初版)
                              山野浩一

NWーSFシリーズ―――4

・山野浩一

1939年大阪市生。関西学院大学法学部中退。
64年に短篇「X電車で行こう」でSFマガジンにデビュー、本格的な作家活動に入る。
67年から日本読書新聞のSF時評を担当し、日本SF界の数少ない評論家としても活躍、72年から80年まで週刊読書人に執筆したSF・ファンタジー時評は、その厳格な小説理論・科学観・現代論によって多方面に大きな影響を与えた。
60年代後半に、J・G・バラードらを中心に展開されたイギリスのニューウェーヴ運動に呼応して、70年にスペキュラティヴ・フィクション誌『季刊NWーSF』を創刊し、創作・評論に留まらない総体的なSFの改革ムーヴメントの推進者としての活動も積極的に行なう。
著書には「X電車で行こう」「鳥はいまどこを飛ぶか」「殺人者の空」「ザ・クライム」の短編集があり、また82年には初めての長篇「花の機械とゲシュタルト」を発表した。本書に収められた九篇はフリーランド・シリーズとして知られ、60年代頃からの全世界的な革命状況の動きを反映しつつ、十年余にわたって書きつづけられてきたものである。

世界のいたるところに存在し、そしてどこにも存在しない夢想の地フリーランドを舞台に、理想=幻想革命に向かう理念と信念と情念が、革命的に交錯する。主人公たちは、理想郷に限りなく近づきすぎたが故の停滞状況を打破するため、それを拒否し幻想的な永遠の革命を選択する。書き下ろし最終篇「レヴォリューションNO.9」を収録。

 赤と黄色のツートーンが印象的な表紙。
 古書店だからこその出会い。
「山野浩一」「NWーSFシリーズ」という未知との遭遇。
 これだけでも行く価値がある。
 この出会いが私に何を与えるかは、不鮮明だが、必要だから辿りついたのだろう。
 と、信じてみる月曜日の夕方。

『ダニエル書』(サンリオ文庫 1985年9月15日発行・初版)
                         E・L・ドクトロウ
                           渋谷雄三郎=訳

ローゼンバーグ事件をモデルに
アメリカの夢と挫折を描いた大作

1967年、戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デイ)――。
大学院生ダニエル・ルウィンは、ウースター州立病院に保護されている妹のスーザンを引き取りに行く。しかし、そこは公立の精神病院で、祭日のため、傷ついて運び込まれた妹を退院させることができない。
面会の場で、スーザンはただこう言っただけだった。
「あいつらはまだ私たちを痛めつけているのよ。さよなら、ダニエル。写真取っておいて」
写真――原爆スパイとして逮捕され、処刑されたアイザックソン夫妻のポスター写真。
そして、ダニエルとスーザンはアイザックソン夫妻の遺子だった。
その年、反体制運動は異常な盛り上がりを見せていた‥‥‥‥‥‥‥‥。
ローゼンバーグ事件をモデルに、壮大なパースペクティブと実験的手法を駆使して60年代の精神状況を描いたドクトロウの問題作。

 ここ最近、実験的というか、風変わりな小説ばかり買っているような気がしてならない。ばらけているようで偏りのある選書。
 それらに影響される私。どうなってしまうのか。

『極短小説』
             スティーブ・モス/ジョン・М・ダニエル=編
                           浅倉久志=選訳      
                             和田誠=絵

妻殺しを企む男を襲う恐怖のピロートーク、結婚か別離かの選択をコインにゆだねるカップル、サンタクロースへの手紙の山を抱える郵便配達夫が選んだ解決法、等々‥‥‥。
スヌーピーの生みの親チャールズ・М・シュルツをはじめ、有名無名の作家たちが、愛と殺人、笑いと涙を題材に挑んだ、世界一短い小説の数々。
印象深い挿画とともに、みごとなまでに意外な結末を味わってください。

 文字通り、極短です。200~300字程度で楽しめる、ショートショートというより、フラッシュ・フィクションに近い。
「阿呆ほど、参考になるやんけ」ということで購入。

<月曜、ひとり歌会>

「五・七・五・七・七」「季語はいらない(使用可)」という最低限のルールを守り、言葉を研く為に始めたこの企画。
 本当に研けているのか。文章の何に役に立っているのか。
 分かりかねる。
 そこそこ楽しい。
 継続しているから、継続している、週に一度、十首。
 さっさと詠おう。

〇白き闇 ノイズ横溢する世界 「誰だ」「お前だ」 消えゆく扉

〇知恵遅れ 彼らの立場になってみて 思い上がりと気づくだけです

〇大騒ぎフロアが揺れる夜でした さよなら言った風は冷たい

〇「なんだかな」ひこうき雲の昼下がり 行き交う人の顔は見えない

〇ふと目覚め 気づけばそこは夢の世界 タイムマシンは彼方に消えて

〇振り絞る〈生きるついでに〉振り絞る〈死ぬまで常に〉無理矢理生きる

〇ラスベガス 欲迸る魔都の灯は誰の為にも灯ることなき

〇ちからこぶ強さ誇示する父親の 面影見てる 冬の陽だまり

〇降りしきり途切れたあとに現れた 虹と君との些細な日々は

〇摩訶不思議 歩みを止めず視る世界 魔訶魔訶不思議 止めない思考

 やっぱり、
 夜11時を過ぎた。
 時間に余裕があるからと、余裕をかましたらこの様。
 早ければ良い訳ではない、しかし、遅すぎるのではないか。
 毎度のことだが、なんとも情けない。
 これが自分と受け入れる。それは開き直りではないかと、思い直す。
 その繰り返し。
 だが、
 明日からは三日連続ショートショートであるから、気分を転換してアイデアを練りだそう。『極短小説』って丁度いい文庫も入手できたことだし。
 よし。
 終わりだ。
 明日はより力を入れていく。

 




                           


         
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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