夕食は、明太子ですが。

 周辺はまだ眠気眼の朝方6時前、おもむろに寝床から起床した私は、そろそろ洗わなくてはならない作業着であるティンバーランドのシャツを着て、曇り空の庭にでた。
 庭の雑木の高所の枝を切る為、使用していない大小のテーブルを地面に重ねて、その上に梯子をおく。高枝切ハサミを手に、慎重に一段一段、横桟に手を足をかけて登っていく。梯子の足先がズレ落ちないかと確認し、切れるだけ切っていく。数か所でその作業を繰り返し、その時点で、汗ばむ。
 夏は暑い上、草木がよく伸びるので、嫌いだ。
 いや、その二点が嫌いなのであって、街中で女性たちが薄着になる良い季節であり、炭酸飲料が美味いなど素晴らしい点もある。
 そして、通常通りの草枝刈りの作業がつづくが、疲労感が心に轍を抉る。 これが老化なのか。
 トレーニングを始めなければ、坂道を転げ落ち、全身を複雑骨折し、血達磨になり、前歯は側溝にへし折られ、気づいた頃にはバカ犬にズタズタにされたぬいぐるみのようになってしまう。街中で見かける、ホームレスか只の貧乏人か判別不能のおっさんに退化する。
 この疲労感は、その兆候であろうか。予告編でしょうか。ここはやはり、三島由紀夫先生に倣って、体を鍛え上げて、口を真一文字に締めて、日本刀を構えて写真をとるべきか。
 何にせよ、体は資本である。壊しては何もできない。そういえば、「健全な精神は、健全な肉体に宿る」という言葉がある。
 やはり、私は両方健全ではないのか。衰え以前に、だらしない生活が最近の疲労感に影響しているのだ。屹度。
 そんなことを、うつらうつら、ぜぇぜぇ息を整え脳内でウルフルズの『ガッツだぜ!』を流しながら、なんとか作業を終える。
 つづいてトイレ掃除と部屋掃除を終える。布団も干す。バスタオルも久しぶりに洗う。しばらくゲームと読書をして過ごす。本日のメインイベントは新しい靴を二足買うことであり、その二足とはアディダスのスタンスミスとVansのオールドスクールだ。
 布団を取りこみ、さっさと着替えてバスに乗り込む。
 中々、混んでいる。それはそうと、終点の駅前が近い停留所から二人乗り込んできた。一人は高齢女性。まぁ良いだろう。しかし、一方は五十代と見える男性。
 いや、お前は歩けよ。目と鼻の先だろう。ただでさえ混雑しているというのに、無駄に乗車しやがって。と、思った次の瞬間、バス会社の売上になるのだから、無駄ではないと思いなおした。
 いや、やはり、お前は歩けよ。その程度の距離すら歩かずして、どうする。その程度の労力を惜しんでいては、体力は衰え、何をするにも億劫になってしまう。私はそんな怠惰な人間を反面教師にして、バスを降りると、ABCマートに直行する。
 店員さんに話しかけ、コレとコレと、サイズはコレでと指定。バックヤードからピックしてもらい、試着する段になって気づいた。
 スタンスミスでなく、スーパースターであると。間違えて指定していたのだ。試着する最中も、やはり、「スタンスミスで」と言うべきか悩む。同時に面倒くさいとの、根が物臭に出来ている私は、つい、
「これでお願いします」
 会計となった。
 ここ数年はスタンスミス一択であったが、期せずして、スーパースターに乗り換えとなった。以外に、残念であるというよりは、良い切っ掛けであると思いなおした。以前からスーパースターは気になっていた。しかし、普段履き三足のうち、二足がアディダスにするほどアディダス狂いではない私は、購入に至ることがなかった。
 この偶然の変更が、運気の変異に繋がるのではないか。そんな気がする。ちなみに、Vansのオールドスクールはオールブラックに変更。以前はソールがアースカラー(茶色)の奴。そいつはまだギリギリ履けるので、廃棄せずとっておく。
 そんなこんなで、2週間ほど前に買った革靴スニーカーと合わせて、新たな「普段履き三足」が出揃った。
 気分も新たに毎日を過ごそうと決意する。
 そして、本日の夕食は「明太子」ですが、何か。
 朝食なまだしも、夕食で白米と明太子は、簡単すぎないかと。ならば何故それを選んだのだ。
「昨日の夕食、今日の昼食が”肉”だったから。加えて、予算の都合上、刺身用の醤油とワサビの購入は難しいから」
 というわけで、夕食は明太子なんです。
 だからどうした、と言われても「事実だから仕方ない」では、あまりに無能な返しなので、すこしは気の利いた言葉を考えよう。
 
 ・・・・・・熟考中・・・・・・熟考中・・・・・・熟考中・・・・・・
 
 出ました。
「明太子ごはんのお供世界一これさえあれば至福なりけり」
 お粗末。
 こんなところで、了でしょう。日曜どうでしょう。昼寝の後、頭痛がするでしょう。回復したところで『ベスコングルメ』でしょう。


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