直行直帰で、東京駅

 絹のような清廉さを感じさせる青。
 空はどこまでも広く、仕方なく始めた庭の草枝刈りもどこか爽やか。トイレと自室の掃除を済ませ、洗髪し、瞬く間に家をでる。
 オレンジの綿で渋い風合いのコート(CASEY CASEY)に身を包み、アディダスのスーパースターは軽やかに総武快速に運んでくれる。
 千葉の北西民、東京駅まであっという間。 
 東京駅に到着すると、厳かで品があり、新宿や渋谷の喧騒とは違う、正真正銘の都心のムードに「心の感触」が切り替わる。
 足早に北口《丸ノ内オアゾ》方面へ向かう。
 落ち着いた雰囲気のなか、多くの人が行きかう構内にあって、目を引かれたものを書いていこうか。大したことはないけれど。
 まず、
 立派なリサイクルステーションが目に入る。横幅は2メートルは超えていそうで、意識の高さに溢れていた。流石、東京駅である。普段からこの設備を利用していれば、意識も高まるというもの。
 そして、
 小用をすませた男子トイレ。
 チャックをおろし床をみると、壁に沿って幅10センチほどの溝があった。これは掃除をする際、水を流せば汚れは排水溝へ、ということだろう。あまり見ない、または注目を浴びない設備にほんのり感心する。そしてすっかり空になった膀胱を携え、さらに進む。
 そして、
 北口の改札。まるで空港のような発車案内板。スタイリッシュで、地元の駅のものとは一味違う。隅々に至るまで大都会を感じいる。
 ふらふらを《丸ノ内オアゾ》エリアの手前、地下一階にやってきた。
 スープストックなど、洒落た店が立ち並ぶ飲食店街にはいった。目当てはここではないと、階段をのぼり一階。
 側面の出入口で足が止まる。
 ビルの先端の線と線が、空を縁取っている。上品な静けさがそこにはあった。建築技術の粋を集めたような空間は、まるで神殿の一角を思わせる。
 つい外へでて、見上げ、縁取られた青空を撮ってしまった。
 美しい。
 正直にそう感じ、
『丸善・丸の内本店』に入る。
 そこは東京駅の丸の内駅前、丸の内オアゾの1階~4階に入る大型書店。
 丸ノ内という土地柄、1階はビジネス書や資格関連本が多く置いてあり、上階では漫画、趣味、アート、小説など幅広いラインナップを揃えている。
 加えて「洋書の丸善」と呼ばれるように約200坪弱、都内最大級の洋書コーナ―も注目。3階・4階にカフェもあり、落ち着いた空間となっている。
 明治2年(1869)横浜に産声をあげた「丸善」は、翌年には日本橋にも店舗を構えたらしい。
 丸善創業者の早矢仕有的(はやし・ゆうてき)は、福沢諭吉の日本近代化思想に共鳴し、門下となった人物。福沢の描く近代化を実現するために、早矢仕は、西欧の科学、技術、文化の導入が力になると考え、知と文化を事業する丸善を興したという。
 そんなオーラ溢れる店内をウロウロする私。
 目的の一冊などなく(SF小説は必ず含む)、ジャケ買いも含めて直感で買っていこうとカゴをとる。単行本を二冊、3階の文庫コーナーで三冊を精選して会計を済ます。
 丸善・丸の内本店をでると、
 丸の内エリアにて、
 2024年11月14日(木)から2025年1月13日(月・祝)の期間限定で任天堂株式会社の「スーパーマリオ」とコラボした冬のイベント、『MORUNOUCHI BRIGHT HOLIDAY 2024~LET'S PLAY in MARUNOUCHI with SUPER MARIO~』が開催されていた。
 美しい採光計算がなされ、センス良く設えられた空間と共存し、ここでも、東京・丸の内の「格」を感じる。静かに圧倒され、魅了される。
 しかし用事は終わった。
 東京の旅は、非常にあっさりとしたものだった。
 それはそう。「書籍を買うだけ」が目的であり、屋外へ、駅周辺には何ら用はないのだ。常に「東京トンボ帰り症候群」によって何処かについでと寄る余裕は削がれ、「早く帰りたい」との思いと共に、結局、総武快速千葉行きに乗り込んでしまう。
「いつか街ブラしたい」
「しかし面倒くさい」
 これにて「東京」の時間は「千葉」へと移行する。
 夕食を買い、帰宅し、「えいやっ」と布団を干し、noteを書きだす。
 午後3時過ぎ、書き終えようとしている。
 自室内は、爽やかで心地よい冷気で満たされている。
『直行直帰で、東京駅』
 愛せども、馴染むことなき、大都会。
 唯一、馴染んだ東京の地・新宿へ赴くのは、少し先の話。
 生粋の千葉都民、もう少し「東京」に対し余裕を持とう。
 涅槃像よろしく、ゆったりとして。
 
 
 
 

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