中華時代劇の線の細い青年
今日はどうやら外の様子が違う。
青空は高く、明るく。
春の風が巻き上げる、芽吹きのエネルギーみたいなものがドーっと額を撫でる。
今朝、朝食を終えた葉山葵々は、
目に掛かってきた伸ばしかけの前髪をグリグリと捻ってピンで留め、後髪はお団子に結った。
メイクを施してーー
(って言うほど凝ったものはあのヒトにはできないので文字通り目の周りを塗ってアイラインを引くだけなんだが、、、、)
すると、途端に、なんか中華時代劇に出てくる線の細い青年。(あ、ぱっちりお目々ではない。)
それから何を着ようかって考えるんだけど
選ぶのはサロペットなんだよ。カーキの。ストンとしたやつ。
そんで、丸メガネかけて。
薄いトレンチコート羽織って。
大学ようの黒いリュックを持って。
葉山葵々さんは吹奏楽の練習に出掛けて行く。
そんな葉山さんのほんの細やかな疑問として、
ってのがあるんだけど。
うーん。俺は知らねえ。
多分ね、褒められてはないと思うんだ。
今、吹奏楽女子のイメージ!みたいなやつ見てきた。
「地味っぽくて活動的な変わり者」だって。
爆笑。結構当たってるじゃん!
とまあ、話をもとに戻すけど。
葉山葵々はどちらかと言えば「男顔」ってやつでさ。
前髪上げて後髪もアップにしてると、どうも青年感が否めない。
どことなーく中性的な、敵も味方もいないタイプの、
「あいつってなんか変わってるんだよなー」
って遠巻きに言われる奴みたい。
てことで。
葵々くん、一応前髪は作ろうとするんだよ。
青年風が好きってこともないからさ。
でもね。
丁度いい長さで保つのが面倒になっちゃって。
伸ばしっぱなしになって。
気が向いた時に切る。
結局それの繰り返しなんだよな。
で、今日彼女は思っちゃったんだ。
これ、案外悪くないぞ!って。
中華時代劇の線の細い青年風。
どことなーく中性的な、敵も味方もいないタイプの、
「あいつってなんか変わってるんだよなー」
って遠巻きに言われる奴。
でも一人くらいは絶対的信頼関係で結ばれた親友がいる奴。
見た目ひ弱そうだけど、多分まあまあ強い奴。
元気系女の子のお友達がいて、祭りの日とか、その子に女の子と同じ衣装着せてもらって一緒に遊んでそうな奴。
髪飾りとか、これすごい良いねぇ!似合う?とか言ってそうな奴。
あー。。。そういう奴。
美人なんだろうな。綺麗な人だろうな。
悪くないね。もういっそそっち方面狙っていくか!
って、葵々くんはそう思ってるに違いないんだけどさ。
俺から一つ教えてやるよ。
そのためにはまず、ズボラを治さないとな!
美人も基礎から。吹奏楽と同じだぜ!?
2022/03/16
俺の観察日記。