教養系の西洋美術本を4冊再読!
年末の片付けをしていたら、1度読んで再読していない本ができてきました。
久しぶりにみてもタイトルが面白そうな本がたくさんあったので、感想がてら紹介したいと思います。
『武器になる知的教養 西洋美術鑑賞』秋元雄史著(大和書房)
西洋絵画が好きで美術館に行くようになった当初は、美術鑑賞の仕方が全くわかりませんでした。「わー綺麗だな!見たことある作品だ」くらいで味気ない鑑賞だったと思います。
なので、もっと鑑賞を楽しむために作品の背景や時代を知ろうと思い、美術史や絵画に関する本を読むようになり、徐々に作品の背景がわかるようになってきました。展覧会のパンフレットやホームページを眺めて作品に対して理解したりすると作品に対する見方が違います。例えば印象派に影響を与えたのが日本画だということがわかれば、ゴッホ「タンギー爺さん」の絵に浮世絵があるのも理解できますし、他の作品に浮世絵の影響がみてとれます。そうやって自分の見方を身につけてきましたが、この本にもっと早く会っていれば遠回りしないで済んだ〜と思いました。
武器になる知的教養とある通り、欧米では美術は教養のひとつとして重要で知っていて当たり前なのだそうです。本書はそんな知的教養を身につけるための鑑賞方法を紹介しています。
本書はルネサンスを起点にそれ以降の美術機を紹介してくれてざっくりどう流れたか分かります。それだけでも読む価値はありますが、その後の美術史を代表作を2つのステップ(表現で観る→史実で観る)で解説しているのが1番勉強になり、今後の鑑賞が楽しめるようになる内容でした。
『世界のビジネスエリートが身につける教養西洋美術史』木村泰司著(ダイヤモンド社)
教養として西洋美術史は、背景にある歴史の流れや事件などそういうものを読み取りながら鑑賞する必要があり、著者が「絵画は読むもの」というように学び読み解くのが重要だと思いました。
本書では、ギリシャから始まりローマ帝国、キリスト教、フランス王政を中心とした神の世界観。経済が発展してルネサンスが始まり、宗教改革や市民が親しむ絵画(フェルメールやレンブラント)が紹介されます。産業革命からの流れも学べ、そこから繋がる大好きな印象派の話は最高です。
個人的には、フランスがなぜ美術大国となったのかという考察が面白かったです。今でこそルーブル美術館があり、アカデミーやサロンができ印象派時代ではみんながフランスを目指しました。しかし、昔はそんなことことはありませんでした。古代からギリシャやローマやヴェネチアなどを含むイタリアが中心でした。しかし、太陽王ルイ14世から流れが変わります。ルイ14世がどのようにフランス美術の権威を押し上げていったのかが学べます。
世界遺産を学んでいるとゴシックやロマネスク様式が出てきます。いつも「どっちがアート型だっけ?窓が大きくてステンドグラスがあるんだっけな〜」と考えてしまいますが、本書で歴史や美術から読み解くと理解が深まり、記憶の定着がいいです。
色々な美術史を読むとジョットの「ユダの接吻」が取り上げられことが多いです。ほとんどの本では、あまり解説がなく「なぜジョットは取り上げられているのかな?」と思っていました。でも、この本を読んでルネサンス時にジョットがパワフルな人間性を描いた先駆けであったことがわかりました。
美術と歴史を深掘りしてしれる本となっています。
久しぶりに読み返しましたが、新しい発見も多く保存しておこうと思います。
『知識ゼロからの西洋美術入門』山田五郎著(幻冬舎)
Youtubeでもかなりお世話になっている山田五郎さんの描いた西洋美術の入門書です。オールカラーで見やすく、山田五郎さんらしく噛み砕いて書かれているので、「ちょっと文章苦手だし、美術用語あると眠くなる〜」ていう人におすすめです。
ボッティチェリからダリまで34人の巨匠がなんと履歴書形式で紹介されています。流派はもちろん、得意なモチーフが書かれているのはわかりやすくてよかったです。家族/恋愛についても書かれていますが、ピカソはやっぱりすごい!79歳で45歳年下と結婚しています。恋愛は人を突き動かすというのがわかります。恋愛っていつしてもいいですもんね。
『アートのロジックを読み解く西洋美術の楽しみ方』OCHABI Institute著(インプレス)
僕の鑑賞方法は技法や色の論理などを観るのではなく、著者の生きた時代や時代背景など歴史や本人の思想を辿りながら鑑賞します。知識がない作品については、似た時代の他の画家の絵と頭の中で比較したり、「この風景なんか好き」という感性で観ています。しかし、技法を知らないと限界があります。
例えば、シーラの『グランド・ジャット島の日曜日の午後』については、点描法で描かれています。この作品が、「点描で描かれているから離れてみると立体的に観える」ということを知らずに作品を他の作品と同じ距離で観ると「なんか印象派の延長ぽい感じでふわっと描いているな〜」くらいに思わず、本来の作品の楽しみかたもできません。
本書の表紙になっている『モナ・リザ』も技法お化けで、遠近法や明暗法、スフマート技法など色々使われています。
技法だけでなく、モチーフや神話の人物の説明など色々な効果がわかるので学生になった気分になるので面白かったです。
【番外編】『「自分だけの答え」が見つかる13歳からのアート思考』末永幸歩著(ダイヤモンド社)
出だしの「モネの『睡蓮』を鑑賞してください。」の後の解説で度肝を抜かれました。「鑑賞とは・・・、そんな発想が・・・」と衝撃の嵐です。13歳というより大人こそ読むべきだと思いました。
本書を読んでいて、アーティストの込められた意図やメッセージはあるのかもしれないが、アート鑑賞には正解はないと思いました。VUCAという混沌とした不確実で将来の予測が困難な時代では、テクノロジーや自分の知識などを総動員して自分なりに考え答えを出していかなくてはいけません。そんな時代だからこそアート思考は重要になったているのだと思います。アートを楽しく鑑賞するのは1番ですが、楽しみながら自分で考えて感性を磨きながら鑑賞の答えを出す訓練は、今の時代を生きる上で重要です。
本書は13歳からのアート思考ですが、習ったことのない分野だからこそ大人でも学べます。たまたま、同じ本を読んだ友人がいたので本書で出てくるお互いの絵を描いたりなどのワークショップができました。家族でも友人でもできるなら実践してみたら面白いと思います。
【番外編】『 アート鑑賞、超入門! 7つの視点』藤田令伊著(集英社新書)
美術検定2級の過去問にコーヒーブレイク(確かその名前)で紹介されていたアートの本です。7つの視点で自分なりの鑑賞方法を身についてけるきっかけを与えてくれます。
他の人の評価などに左右されない自分なりの視点を持ってみたいかたにおすすめです。
感性という目に見えない感覚で観ることはどういうことかも理解できます。