落ちていく

落ちていく。手から大事なものが、目から熱い雫が。

あったはずのものがない。この精神と身体とを構成していたものがなくなる。大事に抱えていたものがなくなる。

喪失感。虚無感。
もはや何があったのかも忘れた。ただ、何か大事なものがあって、それがなくなったことしかわからない。覚えていれば取り戻せたのだろうか。忘れている今の方が幸せなのだろうか。
抜け落ちていく。

なんで落としてしまったのだろう。なくしてしまったのだろう。新しいものを願ったからか。あるいは単にこぼれ落ちていったのか。
今持っているものを顧みずに新しいものに手を伸ばすと、手で持っていたものが落ちてしまう。ガラガラと、ガシャガシャと音を立てて落ちたはずなのに、新しいものに夢中で気が付かない。
新しいものを手に入れることができなくて、ふと我に返ったときに気づくのだ。何もない。

失い、暗闇に一人になる。唐突な孤独感、喪失感に襲われ、目からは綺麗なものが落ちていく。身体がどんどん汚れていく。怪物にもなれず、ただ矮小な汚物へと姿を変える。
魂の箱が汚れ、魂も汚れていく。

何もなくなる。全て落としてしまった。あるのは穢らわしく、汚らしいものだ。

どうしてこうなったのか。

誰か、誰か。ーーーーー。

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