英雄か偽善者か。映画『ハドソン川の奇跡』
こんばんは。きなこもちです。
車よりもずっと大きい鉄の塊が空を飛んでることと、交通事故よりも飛行機事故の方が少ないことは、冷静に考えてみると不思議ですよね。ただし、本当に墜落事故が発生したときには、車よりも凄惨な事故になりがちです。巨大な鉄の塊が空から落ちて地面に叩きつけられるわけですし、たいていの場合、中に乗ってる人の数も多いですからね。にも関わらず、奇跡的に乗員乗客すべてが無事だった飛行機事故が存在します。
今回は2009年1月15日に起きた、奇跡の不時着水事故を扱った映画『ハドソン川の奇跡』を紹介します。
あらすじ
2009年1月15日、ニューヨーク発シアトル行の航空機USエアウェイズ1549便は、離陸後まもなくガンの群れに突撃され、両翼エンジンが完全に停止してしまった。停止時点では副機長のスカイルズの操縦であったが、機長のサレンバーガーがすぐさま操縦を交代し、スカイルズには緊急時のマニュアルであるQRH(クイック・リファレンス・ハンドブック)を参照しながらのエンジン再起動を依頼した。管制官とも連絡を取り、近くの空港に緊急着陸を要請したが、高度や周辺状況を鑑みて、管制官の提案を却下し、ハドソン川への緊急不時着水を決行。結果、155名の全乗員乗客が無事救助され、『ハドソン川の奇跡』とうたわれることとなった。
しかし、英雄とたたえられたサレンバーガーの行動に対して、事故調査委員会は「シミュレーションでは近くの空港に引き返すことが可能だった」と伝え、本来無事では済まされないという不時着水の決断に嫌疑の目が向けられた。同乗していたスカイルズは「機長の判断は正しかった」と擁護するが、果たして本当にサレンバーガー機長の判断は正しかったのか？英雄になるための利己的な判断だったのか？よりよい判断とは？
資料を読むだけだとわからない機長の苦悩
この事故は非常に有名で、日本でもバラエティ番組で奇跡の生還物語として、よく取り上げられています。そして、だいたい美化した、きれいな側面ばかりが取り上げられがちです。
しかしこの映画では、生き残ったあとも夢の中で墜落する飛行機に乗り、市街地に突っ込むところを見てしまう機長の姿も描かれています。昼にテレビの取材を受け、何気なくビルの外を見るときも、飛行機が向かいのビルに墜落する様子が想起される、いわゆるPTSDに悩まされていたことが示唆されています。
管制官も自分が担当した飛行機から連絡が取れなくなって川に落ちたと知って絶望していて、どの場所にいた人も何らか心に傷を負う事故だったと思います。
鳥が両翼エンジンに突っ込んで完全に機能停止し、墜落するまでたったの3分半。カップラーメンにお湯注いだあと、ちょっと過ぎちゃったくらいの時間で飛行機に乗ってる人が自分含めて全員死んでたかもしれない事態。トラウマになるのは当たり前です。さらに、これほど多くの人を救ったにも関わらず、コンピューターシミュレーションでは、より安全に着陸できた可能性が示唆され、犯罪者にされかかるわけです。生き残っても穏やかではいられません。
事故調査委員会も仕事なので、安全対策を怠った乗組員かどうかはしっかり調べないといけないのですが、それにしても当たりが強い…。機長がPTSDになってしまうのは無理もないと思うのですが、そんなこと関係ないと言わんばかりの喧嘩腰です。時間が経ちすぎると事故発生時の情報がどんどん薄れていくので、そんな簡単ではないのでしょうが、もっといいやり方はないんですかね…。
あと、個人的に心にきたのが「明るいニュースでよかったよ。飛行機関連で。」とサレンバーガーが一時滞在したホテルの従業員が言うシーンです。そう、ニューヨークといえば2001年9月11日に同時多発テロ事件があった場所でもあるのです。世界貿易センタービルに飛行機がつっこんで多くの方が亡くなりました。同じニューヨークで、同じ飛行機に関する事故でしたが、全員が生還したことは確かに悪いことばかりじゃないと思わせてくれたでしょうね。
エンドロールまで見たほうが良い
エンドロールにて、機長だったサレンバーガーとその妻、副機長、そして、当時USエアウェイズ1549便に乗っていた乗員乗客が集まったシーンがあります。機長とその奥さんが美男美女で、ちょっとびっくりしました😅トム・ハンクスのほうが、ちょっとブ男(失礼)に感じるほどです。みなさん、生き残った幸せを噛みしめておられるようでよかったです。
おすすめ動画
こちらの動画は簡単にまとまっているので、どういった観点がよかったかを確認するのにおすすめです。また、以下のリンクに実際の事故調査報告書があるので、英語ですが気になる方は参照してください。重症者数やその定義まで載ってます。
おわりに
こんなうまいことやってくれる機長は貴重だと思います(狙ってません)。今後、何か旅行をするときにまた飛行機を利用することもあるでしょうが、無事に離着陸してほしいです。