世田谷は素敵さ 2
東京生活を思い出すと、
ひとり暮らしをいちばん楽しんでいたのは
2度目の引っ越しとなる
世田谷区梅ヶ丘での日々だ。
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若林での暮らしを経験していたため、
次は2階以上の部屋にしたいと思っていた。
1階にチビ女ひとりで住むのは、
防犯面からよしたほうがいいとアドバイスされ、
自分でも2階の住人の足音が
気になっていた思い出もあり、
では日当たりの良い2階の角部屋がいいなと
またもや下北沢から近い範囲で探した。
以前の職場の先輩が、
祖師ヶ谷大蔵に住んでいて行ったことがあり、
小田急線がなんだか上品で
居心地が良かった記憶があったので
(先輩のイメージと重なるだけかもしれないが)
小田急線沿いで、自分に合いそうな街を
一駅ずつ下車して探索する日々を送った。
これがすこぶる楽しいのだ。
知らない街のよその雰囲気。
知っているひとがひとりもいない。
物語に入り込んだような異邦人感がたまらない。
部屋探しの醍醐味だと思う。
*
梅ヶ丘駅に降り立ったときのことは忘れない。
あ、ここがちょうどいいな、と即座に思った。
当時の梅ヶ丘駅周辺には、
小さなカルディや変わった造りの本屋、
ナチュラルローソンもあった。
こぢんまりしたスーパーと、パン屋さん。
全部がちょうど良かった。
何より、路地裏を散策した雰囲気が良い。
ノラネコが結構いて、
そこここでのんびり寝そべっていたり
丁寧に手入れされた花壇、綺麗な色の実のなる樹。
遊歩道が夕陽に照らされて、
ここを何度も散歩する自分が想像できる。
自分の町という感じで、しっくりくる。
それから何度も梅ヶ丘に降り立ち、
散策を重ねて不動産屋もいくつか訪ね
大家さんの自宅の敷地内に建つ、
小さなアパートの2階角部屋に決めた。
決して広くはないが、日当たり良く
北と南に窓があって明るくて、
何よりなぜか友人がよく訪ねてくる
風通しの良い家となった。
*
この部屋で暮らしているときは
南青山のデザイン事務所へ勤務していて、
そこで夫と出会った。
梅ヶ丘での暮らしは、恋の期間でもある。
下北沢でカレーを食べたり、
一緒にうちへ帰ってご飯を作り、食べる。
出会った初めから、
夫とはご飯を一緒に食べることが
自然で違和感がなく、
共に暮らすことが容易に想像できる人だな、
と思ったのを覚えている。
そしてさまざまな障壁があったにも関わらず、
やはり結婚に至った。
*
梅ヶ丘は、近くに羽根木公園があり
そこで毎年の今ごろ、せたがや梅まつりが催される。
気になって調べたら、
今年も本日2月11日(土)〜3月5日(日)に
開催されるようだ。
会場に入ると、真ん中にメインの散策道があり、
他に細い小道が梅の樹の間近に入り組んでいるので
鼻先で可愛らしく芳しい梅たちを見ることができる。
それともうひとつの見どころが、
羽根木公園に棲みつくノラネコたちだ。
梅の樹の下や散策道を、我が物顔で往来し
それがまた梅の花とマッチしていてかわいい。
梅の花と猫がお好きな方は、
垂涎ものだ。
お近くの方はぜひ行ってみてほしい。
*
わたしは、桜よりも梅の花が好きだ。
桜は一気に咲いて華やかで、
綺麗だし気持ちが浮き立つが
また一気に散り、道路の端に茶色く跡を残す。
そこがあまり好きになれない。
一方梅は、桜よりもだいぶ早くに
まだ寒いのに健気に咲き、
樹も花も小さく紅く、白く、可憐だ。
香りも良い。
散る時も少しずつ花びらを落として
足元を汚さない。
そこが好きなところだ。
自分も、梅の樹のような女性になりたい。