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男を描くということ その2

2010年2月1日、当時のほぼ原文ママ(当時の画像が一部ないので少し変更)でお送りします。ちょっとはずかしい。

「なぜ男を描くのか?」その2です。まずは女性像を描いていた過去を、ご紹介がてら振り返る編。

私が絵を発表し始めたのが2002年の春。しばらくは、普通に色々悩みながら「エロ」をテーマに据えて、女性像を描いていました。エロティックな女性を描くことが楽しくなかったか?と言えば、そうではありませんでした。なぜなら私は昔から、「色気がない」と周りの方々に言われ続けていたので、「フェロモンたっぷりの色っぽい女性」に、ひそかに憧れていたのです…σ(´д`*)イイナ、フェロモン。

女性のふゎっとした艶っぽい髪の質感や、表情、肌、丸みを帯びた体のやわらかいラインなどは同性から見ても憧れの対象で、描くこと自体は楽しかったのでした。そんなわけで前はこんな感じのお耽美な作品から、

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男子の顔面踏んづけたりとか(この頃から片鱗は見える)

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映画「およう(2002)」の襖絵とか

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花魁がバイク乗ってたり(映画「温泉スッポン芸者1971」の影響)

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依頼されてノリノリで描いた椎名林檎さんの双六とか(©︎黒猫堂 2003年双六エクスタシー@武道館付録)

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女性のためのHow toセックスの絵本など、

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他、官能小説の挿絵など、色々なメディアで女性の官能的な姿を描いていました。ああ、なつかしい。。

でも…なんとなく、漠然とした作品への悩みを抱えていた頃、確か2003年の個展だったかと思います。

ある初対面の男性のお客様に、以下のようなご意見を頂きました。

客:「木村さんだっけ?君の描く女性って、なんか色気ないよね」

私:「はぁ。(心の声:グサッ!悪かったな。。)」

客:「結局さ、自分をさらけ出してないんだよ。○○さん(女性の作家さん)なんてすごいよ、もう私を見て。。。みたいなさ、ぐっちょんぐっちょんっていうの?それぐらいやんなきゃ。君も女性なんだからさ、全てをさらけ出して描いてみなよ。そういうのが男は見たいんだからさ」

私:「ははは、そうですね、考えてみます。(心の声:ぞわわわ~~~!アンタに私のぐっちょんさらけ出す気はねぇ~!!!)」

と、笑顔でやりとりしていましたが、心では大変失礼ながら、「冗~談じゃねぇZO!コルァー!」と叫んでいる自分がいました。

その後、幾人かの男性客、男性批評家から似たような意見を頂きましたが、その意見は結果的に正論だと思っています。

エロい女性の姿がたとえアートであっても、お相手である男性の意見を無視しては語れません。ぐっちょんぐらい見せてやらんでどうする?!と言うのがオンナのエロアートの一面でもあるでしょう。

そしてそれを実際にやりきっている女性作家さんのを見ていると、その作品には確かに説得力があります。
そして、「色気がない」というのは、自分自身が確かにそうでだと自覚しているだけに、反論することができませんでした。やっぱり絵って、正直?

。。。しかしながら、

私はこうした女性像を誰のために描いているんだろう?
オンナの何を表現し、誰に見せたいのか?このおっさんか?私はおっさんのために、女のハダカを描くのか?

!!!否!!!

では、私が見たいものは、描きたいものは何か?!

。。。。。男のハダカじゃない?

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「白波図(2005)」さらけ出すんじゃなくて、さらけ出させちゃいました~☆


と、自問自答して気づくまでに、それから随分かかったような気がします。なんとなくですが、女性が女性自身を描くと言うのは、一種の自己投影なのではないかと思うのです。分身、媒体を作り出す、という方が合っているかもしれません。
そこにこそ、男性の画家が女性を描くのとはまたちがう「リアル」があり、独特のエロスと、ナルシスティックな面白さがあるのではと思います。

私は結局、自分自身を女性像に託し、投影することに大きな意味を見つけることはできませんでした。でも描く対象が男性なら、自分を託すことはできます。欲望も、夢も、ロマンも。

私にとって異性である「男性」は、最後まで分かり合えない謎の存在であり、永遠のパートナーです。だから、面白い。そして、男性の画家が描く男性像とは違う、「男性」の表現ができるのではないかと思うのです。

そう気づかせてくれたこのお客様には、感謝しています☆Chotto、いやかなり、気持ち悪かったけど。。。^^;

また次へつづく。
次はドキドキ☆男性ヌードモデル体験!について書こうかと思います。(記載日:2010年2月1日)


2020年追記

この記事の後半に関しては、当時からギャク化しており記憶もだいぶ薄れてきましたが、今もインタビューなどでネタにして十分元をとっています。ただ似たようなことを当時の個展中、5人の男性客(ウンザリして数えてた)に言われました。いま改めて読み直して、今はこうした意見を「正論」とはとても思えません。今ならば、過去の時代の「弊害」とはっきり思えます。でも、当時はまだ私も正論かもと思っていたんだな。。。

最近、とある男性のアーティストと話していて、この時のことや、当時の空気感を色濃く思い出すことがありました。そしてそれが、ブログを復活させようと強く思ったきっかけでもあり。。これに関してはいま、別の視点から追記したいことが山ほどありますが、それはまたの機会に。。

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『ROSE』より、「私の人形遊び」2005

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