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ピンボケ写真、水曜どうでしょう、アラーキー。
実家に帰るとわたしのこどもの頃の家族アルバムがあって、その中には古いプリントが丁寧に貼られています。でも、多くがピンボケ、手ぶれ、構図ひどい…などなどで「上手な写真」ではありません(撮ったのは父です)。
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「うまい写真」には被写体が写っています(あたりまえですね)。
「ヘタな写真」に写っているのは被写体だけではありません。その時の撮影者の気持ち、被写体との関係、その場の空気、そんな「写真を撮っている情景」がより強く写り込んでいます。(前にも書いたように、ピンボケの徒競走の写真には必死に撮ろうとするお父さんの興奮した様子も写っているのです。)
だから、時として「ヘタな写真」は「うまい写真」よりも魅力的です。
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1995年から2001年にかけて札幌で学生をしていたわたしは、おそらくど真ん中の「水曜どうでしょう世代」です。
「水曜どうでしょう」の面白さは、ディレクターのフジムラさんやウレシノさんもばんばん本編に絡んでくるところでしょう。基本的に画面には映らない制作側の面々の存在を加えることで「番組を制作している情景」を感じさせ、「作られたものとは違う」というワクワク感を見る人に抱かせます。
「水曜どうでしょう」の面白さは、ピンボケ写真の面白さと似ています。
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荒木経惟さんの作品にも微妙にブレた写真が多く含まれています。
なにも知らずにその写真を見れば「え?ヘタじゃん」と思うかもしれません。
もちろん、それはヘタなのではありません(ある程度ブレることを見越して撮っているはずです)。ブレにより「カメラを構えて被写体と向き合っている情景」、言い換かえれば「確かに実在した時間と空間」が閉じ込められています。
荒木さんの言葉を借りれば「コト」が写る。
そんな写真は見る人の想像力を掻き立てます。
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多くの人はブレていなくてピントの合った写真がいい写真だと思っています。その先入観も逆に「ヘタな写真」に力を与えてくれます。「ヘタな写真」が堂々と飾ってあれば「なにか特別な意図があるのではないか」と考えさせることになるのです。そうして、見る人の中に「意味」が生まれます。
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実家のアルバムはなぜ素晴らしいか。それは、ピンボケでブレブレで変な構図の写真を丁寧にとってあるからです。思い通りに撮れなかった写真を捨ててしまっては意味がありません。大切に残して見返すことが大事なのです。
「水曜どうでしょう」も荒木さんの写真も同じです。「それでいいの?」と言われそうなものを「これでいいのだ」と確信を持って世に出すから価値があるのです。
表現とは「意味を与え、場を作ること」なのですから。
だれでも失敗ない写真が撮れるようになった今、そしてAIによる画像生成により写真が現実なのかわからなくなっていくこれからの時代、ピンボケしたりブレたり変な構図だったり、そんな「ヘタな写真」の魅力はますます増していくのかもしれません。それにしても、ピンボケ写真って探すとなかなか見つからないですね。
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