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今年一番の秋の日。L.H.効果。

絵に描いたような秋晴れの日、山の上の展望台に行くと青空をバックに大きな花が咲いていました。紅葉にも山々にもカメラを向けずに、その花を夢中になって撮りました。

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「皇帝ダリアを摘んできたから、よかったからどうぞ。」
その日の午後に会った人から同じ花を手渡され、わたしはその名前を知りました。そんな偶然によって、今年一番の秋の日は「皇帝ダリアの日」になりました。



「ラブホテルの看板は意識すると目につくようになる」
と、どこかで読んで以降、普段通っている道沿いでもその看板が目にとまりはじめました。自分の興味のないものは見えていても見ていない、目立つものであっても驚くほど意識に入っていないのです。

これが「ラブホテルの看板効果(L.H.効果)」です。
(もちろん、わたしが勝手に名付けただけです)

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「L.H.効果」は写真にも影響を与えます。

スティーブン・ショアに代表されるいわゆる「ニューカラー」の写真の特徴は、建物も人も道も車も全てが等価に写し込まれていることです。普段、自分の見たいものだけを見ているわたしたちにとって「全てが等価」な一枚の写真はまるで珍しい風景のようです。目の前のものをただ写すだけで、写真は特別な力を持つことができるのです(でも「ただ写す」ことは簡単ではありません)。



自宅の前の畑にも皇帝ダリアが高々と咲いています。

毎日目にしているはずのその花のことを、「皇帝ダリアの日」の翌朝までまったく意識していませんでした。

自分の観察力の乏しさを嘆くつもりはありません。
「見ていないこと」にも「見ていること」と同じくらい意味がある、自分の世界はその両方によって形作られているからです。同じ場所で暮らしていても、わたしたちは一人ひとりが違う世界を生きています。

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それにしても、こんなにも目立つ花のことが見えていなかったなんて。皇帝ダリアには特別なステルス性でもあるのでしょうか。

「皇帝ダリアの日」を境に、わたしは「L.H.効果」のことを「K.D.効果」と呼ぶことにしました。


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kimura noriaki
「科学」と「写真」を中心にいろんなことを考えています。