電車の窓から25
2020年5月13日
扉を開けると、大量のスクリーンが並んでいた。白っぽい部屋に狂うほど並んでいた。
こんなに並べて何を見ているのか。よく分からない場所の風景や様々な文字、数字。
「お、連れてこれたか」
奥から頭がボサボサの男がでてきた。
「どうにか。ここ、勘づかれてる可能性が無いとも言えない。どうしよう」
「まぁ、ここ数日は平気だと思うが。あいつらもすぐには攻めてこないとは思うし」
「確かにね。一旦落ち着いてもらうか。ルナ、来て」
ヒナに手を引かれるまま、奥の間へと入っていく。そこには畳の居間があった。
「座って」
置かれた座布団に座る。正面には男が座った。
「初めまして、美優……」
「ラピ、ルナって呼んで」
ヒナが男を小突いた。
「あ、うん、ルナさん。初めまして。僕はラピスラズリっていいます。お嬢は僕の事、ラピって呼ぶけど、好きなように呼んでください」
「はい……」
「大丈夫、この人は信用できるから」
「うん」
ヒナが言うなら大丈夫だろう。兎にも角にも今は信用するしかない。
「何も聞かないんですね」
ラピスラズリがそう言う。
「もっと、質問攻めにされるかと思いました。今まではそうだったし。あんまり気にならないですか?」
「気にならないというか……」
あんまり質問を言葉にすることが出来ない。
「そう育てられて来たんだよ」
ヒナが私の隣に座った。
「まぁ、そうか。そうして何も聞かされてないのか」
ラピがそう言いながら天井を見上げた。
「ルナ、貴方は狙われてる。貴方は人智の結晶。貴方を手に入れるためならなんだってしようとしている人がいる」
「お嬢。それ、言うのか」
「隠したってしょうがないでしょ」
「せめて今日は寝かせてやれないか。ルナさん、疲れてるから」
「そうね……確かに」
「うん、準備してあるから」
ヒナはふわりと立って、どこかへ行ってしまう。
「ルナさん来て」
ラピに着いていくと、2階に布団が敷いてあった。
「本当に、何も聞かないんですね」