電車の窓から14
2020年5月2日
洋服を一通り買い終えると、靴まで選んでくれた。ひとつでいいと言ったのに、何個も買おうとする。どうにかふたつに収めた。
これは持ち帰れる量なのか?
「よし、これで、あとは化粧品だけだね」
ヒナはまだ買うらしい。
化粧品の店に来た。高級店ではなくて、普通のコスメショップ。
ヒナは高いのは爪で削ると落ち込むからあまり使わない。と言っていた。
「ルナはオレンジ系だね、いいなぁ、私もそれが似合えば良かった」
ヒナはこちらもぽんぽんと私の分を入れていく。
ヒナの頬紅はピンクで、口紅もシンプルなピンク。ヒナが使っていなさそうな色ばかり私の色にしている。
ヒナはスキップでもしそうな勢いで、レジへと向かった。靴の紙袋をそのまま持って行ってしまったので、私は慌ててレジまでついて行って、靴の紙袋を受け取る。
店員がどんどんスキャナに商品を通していく。「ヒナ、これ高くない?」
値段を見て驚いた。案外高いな、洋服の時気にしてなかったけど、流石に迷惑がかかる。
「大丈夫、大丈夫宝くじ当たったんだってば」
笑いながらカードを差し出している。ポイントカードを断ると、ニコニコしながら店を出た。
「よし、これでいいか、なんか欲しいものある?」
「いや、もういいよ、こんなに買ってくれたしさ」
「そう?じゃあいいけど……」
ヒナは目の色を変える。遠くを見て動かなくなる。
「ヒナ?」
ヒナは私の手を掴む。
「ごめん」
エスカレーターに向かって走り出す。手に持つ荷物ががちゃがちゃと大きな音を立てる。
エスカレーターを降りて、階段を降りて、通路を駆け抜ける。
息を切らして駅のはずれの路地に入る。
そこでヒナは立ち止まった。
「ルナ、ごめん、ルナ、私のせいで」
「ううん、大丈夫ヒナ、落ち着いて」
私は座り込むヒナの背中をさする。
ヒナは、走り込んだ疲れだけではない、勢いで、息を切れ切れにする。私の手を掴む手に力がこもっていた。