電車の窓から24

2020年5月13日

バン!と言う音で目が覚める。
車は止まらず走り続ける。
「あー…待ってもう来たの」
ヒナがため息混じりに言う。
もう一度同じ音、車が揺れる。
「何?これ大丈夫なの」
「撃たれてるだけだから大丈夫」
「本当に大丈夫なの」
ヒナはそれには答えず、思い切りハンドルを切った。
頭を壁にぶつけて痛い。
「ちょっと我慢してて欲しいな」
またもバン!という音。連続して音が鳴る。
車は左に右に、更には上に下に揺れていく。
その度に身体がぶつかって痛い。
やり過ごそうと目を瞑っても、どうにも忘れられない程車は揺れる。
突如、今までに感じたことの無い揺れ。背中を強く打ち付ける。
思わず悲鳴をあげる。
「ごめんね、あと少しで巻けるから」
「巻く?これ追われてるの?」
「まぁ」
もう一度、大きく揺れる。今度は頭をぶつけた。
その後もしばらく続いた。段々と慣れてきて、上手く衝撃を緩和させることが出来た辺りで車は急に停止した。
「ごめん、もういいよ」
急激な光に目が眩む。
起き上がり、目が慣れてくる。
私は後部座席のシートの下に隠れていたらしい。
「事情は後で、とりあえず来て」
ヒナの顔を見る。久しぶりにその顔を見て安心した。
私が乗せられてきた車には、いくつもの銃痕が残っていた。

「ほら、早く」
ヒナに手を引かれ、ビルの裏口のような所から入っていく。
ボロボロのアルミニウム製の扉を開けて、その中に入った。

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