電車の窓から8
2020年4月26日
レシピが沢山ありすぎて分からない。これだから嫌いだ。情報過多。
その波に飲まれて、揉まれて、どうして真っ直ぐに生きることなど出来ようか。相変わらず来る明日にどうして希望など持てようか。心の拠り所になるなど有り得るか?
慣れた手つきでスクロールしていくと、簡単やら材料これだけやら色々な謳い文句が並び連ねられていた。
簡単と言われるレシピも本意ではないだろうな。
肉、野菜。多分緑色の。とりあえず包丁、どこだろう、目の前に包丁の刺さっている箱があった。
落ちないようにゆっくりとシンクの隣のスペースに置く。食材をそこに広げる。
切ろうとして気がつく。まな板。
引き出しという引き出しが全て開けられる。
全てを切り刻み、フライパンに入れて、兎にも角にも火にかける。
焦げないように、ゆっくりと炒める。弱火でじっくりと料理すれば美味しくできると聞いたことがある。
ぼーっとしながら火の音を聴く。チリチリと静かに食材が焼ける音。何か違う気がする。油。食材目掛けて油を注ぐ。やがて油が温まり、ジュウジュウと大きな声を上げる。
もしかしたら火が弱いのかもしれない。ツマミを回して、火を大きくする。
あっという間に火が油の温度を上げ、食材に火が通っていく。慌てて火を弱めると、携帯電話にかぶりつく。
中火!頭になかった。真ん中の強さにするのか。それもそうだ。基準があってこその弱火と強火だな。
火の大きさを見て、真ん中くらいの大きさにして、炒める。いい感じになってきた。
指定された調味料を指定された量、入れていく。
多分、大丈夫。
ヒナが家を出てから4時間が経過していた。