電車の窓から11
2020年4月29日
食事をして、風呂に入って、そうしたらそそくさと寝てしまう。今日は朝更かしはしないみたいだ。
明日は休みだし、早く起きて出掛けるみたいだ。ヒナが私の事を考えてくれているなんて、嬉しいな。
目を覚ますと、ヒナはもう起きていて、ベランダで煙草を吸っていた。
「おはよう」
ヒナはすごいな、昨日も働いてきた後なのに、私より早く起きている。
「まだ寝てていいよ、時間ももう少しあるし」
はぁ、とめいいっぱい口から煙を出す。
「ご飯、作る?」
「できてるよ」
ヒナは食卓を見た。その上にはトーストが2つ、仲良く並んでいる。
「食べようか、あと少しで吸い終わる」
コンコン、と灰皿を叩くともうひと吸いして、煙草の火を消した。
「よし、準備しよっか」
ベランダの方を向いて席に着く。
沈みかかった陽が、私の顔を照らしだした。
口に入れたトーストはバターがしっかり染み込んでいて、美味しかった。
食べている間、ヒナは何も言わなかった。口角を上げて、美味しく食べていた。何か曲でも聞いているような雰囲気だった。
食べ終わって、私が率先して食器を洗う。と言っても皿が2枚だけだけれど。
洗い終わった。ヒナがおいで、と言うのでヒナの部屋に行くと、ぽん、と洋服を投げられた。
可愛らしいブラウスに、落ち着いたズボン、ヒナのいつもの格好からは想像が出来ない服……と言ったら失礼だろうか、ただ、そんな雰囲気だった。
「それ着てるって事は、サイズ丁度いいよね。今は着ないからあげるよそれ、今日だけだしまぁ、多少古くても平気でしょ」
うん、と頷いて着替える。ヒナも同じように服を脱いだ。
ヒナはいつもの通り、暗い色のパーカーとジーンズ。
化粧は終えているようで、慎重にパーカーを着ている。
「化粧品は持ってないでしょ、私の使いな」
ヒナは仕事に行く時より薄化粧、買い物に行くだけだからかもしれない。私は慣れていない化粧品を使って、必死に化粧をした。どうにかこうにかいつも通りに近い物にはなったらしい。
ヒナはにこりとして私のことを褒めてくれた。
「ルナにはそのブラウス似合うね」
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