電車の窓から7
2020年4月25日
ヒナは行ってしまう。
家に1人取り残されても、どうしようか。
これから夜は朝に向かう。昼間のように夜を過ごしたことは無いから、どうしていいか分からなかった。
シワになったスーツを脱ぐ。着替えなんて無いから困ってしまうな。
勝手にヒナの服を来たら怒るかな。クローゼットを開けると、似たような服ばかり並んでいた。
1番部屋着らしいのを選んで着る。
身体にピッタリの大きさだった。
持ってきた黒いカバンには何が入っていただろう。
財布、化粧ポーチ、筆箱、社外秘、イヤホン。携帯電話。
その携帯電話はけたたましく唸り声を上げる。
昨日の夜から見ていない。バッテリーは減らずに元気よく液晶を照らす。
見慣れた名前、同じ苗字。
もう見たくない呪いの羅列。
携帯電話の電源を切る。二度と要らない。連絡など要らない。インターネットの世界など、私を救ってくれやしない。
そんなくだらない決意より、大切なものがある。ヒナ。
冷蔵庫を開けると、割と沢山の食材が詰まっていた。1人でここに住んでいたとは思えない。私の前にも誰か居るのだろうか。それとも私が来ることを分かっていたのだろうか。
どうしようか。
食材だけ見て調理法が分かるような私ではない。そうなっていたら、もっと早くに1人になっていた。
インターネットは私を救ってくれやしないと思っていたが、調理法に関しては救ってくれる。
渋々電源を入れると、食材の名前を入れて、レシピを検索した。