電車の窓から4
2020年4月22日
「眠いの?」
「まぁ、仕事終わりだし」
ヒナはベランダの縁に身体を預けた。
煙草を人差し指と中指の間に引っ掛ける。灰が床に落ちて、ちりちりとくすぶる。
「寝なくていいの」
「洗濯物とかあるし一服したら作業するよ」
ヒナは本当に一服したら、洗濯機を回した。
洗濯機が轟音をあげて回っている間、もう一本、と言ってヒナは、すぱすぱ煙草を吸う。
「こんなに起きてて平気なの?」
「ルナは心配ばっかだ」
ヒナはケラケラ笑った。
「そんなに心配するなら洗濯物干してよ」
丁度洗濯機がびーびー喚いた時だった。
「ルナは夜更かしとかしないの」
トレーナーを洗濯バサミに挟んでいる時に聞かれた。
「するよ」
「でしょ、今起きてるのもそんな感じ。朝更かしって感じかな。私は夜が怖くて、嫌いだから。夜が来るまでの時間を必死に引き伸ばしてる感じ」
ヒナは大きな口を開けて、少し長く煙を吐いた。
「私が朝が嫌いなのと似ているね。朝が来るのが怖くて、夜に眠りたくない」
「うん。そうだと思う」
「私は朝が来たら、仕事行かなきゃ行けないから嫌いだった」
「私もだよ、夜になったらそうなるから嫌い」
「朝が嫌いなのに、朝仕事をしてるのか、仕事をしてるから朝が嫌いなのか」
「分からない?」
「わからない」
「まぁ、ルナは確実に後者だよ、私と居ると平気なんでしょ、朝働くのは辞めなよ、もう」
「うん、そうだね」
「逃げるのに理由なんてないし、もう全部から連絡絶って、新しくなろうよ」
私はヒナに向かって思い切り笑った。
「元よりそのつもりだよ」
ヒナもそれに釣られて笑っている。
2人で、陽が昇り切ってしまうまで、笑い転げた。