「年末年始に読んだ本」の記事を年始休暇ギリギリに公開しても、読んでもらえる時間を取れないので、少し早めにnoteを書いてみます。
年末に読んだ本と、今回の読書に関連しそうな過去の読書を簡単にまとめました。
年末に読んだ本
多様性の科学
周りで読む人が増えてきたので読みました。
より良いアイデアを見つけたり発見をするには、狭い世界の優秀さに固執せず、多様性のあるメンバーを受け入れ、異なる意見を認めることが効果的だと書かれています。
これを実践するプロセスを想像してみると、非常に難しいものだと感じました。
自分と異なる意見でも受け入れられる仕組み、多様性に耐えてでも実現したい組織の目標や方針、自分自身の意見が今まで以上に受け入れられないことへの覚悟が必要となりそうです。特に上位職者ほど、大きな変化を求められるため、実現に抵抗を感じてしまいそうです。
また、「この本の内容意外を認めない」という行為自体も、多様性の排除につながりかねないことも、実践が難しい点でしょう。
だれもが「自分の思いどおりにはできない」環境を受け入れることで、組織全体でより良い状態を目指す。これが実現できることは、簡単ではないからこそ、真似されにくい組織づくりにもつながるのだと思います。
その状態に近づくには、コツコツと全員を説得していくよりも、ツールやテクノロジーを使うことの方が、意外と近道になるのかもしれません。
知ってるつもり 無知の科学
私達は、実際以上に自分は物事に詳しいと思ってしまうそうです。自分たちの所属するコミュニティにある知識=自分の知識だと勘違いしやすい。そう考えると、SNSは「知ったかぶり量産器」なのかもしれません。
知ったかぶりは知識不足の弊害をもたらしますが、手軽に外部の知識や道具を活用できる(と思い込めること)は便利もあり、コラボレーションの誘発や自信にもつながります。
「自分が自分の思っている以上に無知である」ことは仕方ないことだからこそ、自分や周囲の人達の知識や能力を把握し、連携ができるようになるべきだと主張します。
その他、「人は個人を英雄にまつりあげたくなりがち」、「知識が足りない相手に説得しようとしても効果は薄い」「物事の因果を説明すると人は主張を変えることができる」など、様々な集団の中にいる個人の認知特性を紹介しています。
「多様性の科学」の前提となる背景とも、実践の手引とも言える本だと感じました。
THE FORMAT
出自や背景が異なる人でも、うまくコミュニケーションや連携をするために、共通のフォーマットを利用することは一つの有効な手段だと思います。
たとえば、様々な背景/部署間で「施策の振り返り」をするときには、共通のフォーマットを用意できれば、より議論をうまく進めたり、共通の認識を作りやすいと感じます。
いまは、テキストは誤解を生みやすいものですが、テキストのコミュニケーションから逃げることも難しい時代です。
この本に書かれているような具体的なフォーマットを、チームで共有できるだけでも、コミュニケーションを円滑にできそうです。
外食を救うのは誰か
飲食業の理解を深めたかったのと、社内で副社長が勧めていたので、読みました。
最近の外食産業の状況はもちろん、外食産業の歴史や変遷がとても勉強になりました。
ガストやマクドナルドがなぜ活気的だったかを、背景やビジネスモデルの変化とともに理解できると、今どのような業態が苦心しているのか、また逆に流行っているのかを把握しやすくなります。
この本を読んでからは、飲食チェーンを訪問したときに「なるほど」と感じることが増えました。
職場学習の心理学: 知識の獲得から役割の開拓へ
職場の学習に関しては、話題になる書籍や記事はチラ見しつつも、できるだけ研究者の本や論文に触れる機会も常に持つようにしています。
本書は、幅広く研究知見をオムニバス形式で紹介しているものなので、筆者による各章紹介パートの前半を転記しておきます。
普段触れているトピックとの重なりが多いので、手元に置いておいて、他の書籍と見比べながら使うのが良さそうです。
トップセールスだけに頼らない組織を作る 実践セールス・イネーブルメント
去年から、営業部門と協働する機会や情報を提供することが増えたので、より営業メンバーに活用されやすい加工をしたり、もっと育成に使えるような取り組みを考えるために読みました。
特に、営業フェーズを意識して、コンテンツ化する考え方は、実践的に感じました。
それまでに読んでいてよかった本
今回紹介した本と関連しそうな書籍を紹介します。これらは、先に読んでいてよかったと思った本です。
事実はなぜ人の意見を変えられないのか
今回紹介した多くの本は、調査や研究を元にしたものが多いのですが、これらを「こんなファクトが出ています!」と突きつけても、効果は期待できそうにありません。
「ファクトが大事だ」と言い張り、常に数字を携えて説得してくる人に対し、こちらの主張に合う事実を提示したら、軽視されたり穴探しをされたことはないでしょうか。
このように、お互いがファクトを使っているにも関わらず、どちらも影響力を発揮できていない(よくある)状況が生まれる背景や、それを解決するアプローチの例が複数書かれています。
事実よりも影響力のあるものとして、類似書籍でよく見る「感情」や「インセンティブ」のほか、「事前の信念」が真っ先に挙げられているのはユニークな点だと感じました。
タイトルの邦訳が、とても影響力を感じるところも好きなポイントです。実は、原著のタイトルには「事実」という単語は入っておらず、影響力やそのメカニズムについて幅広く紹介されています。
ザ・フォーミュラ
逆に、全く邦訳が機能してなさそうな本ではありますが(笑)、中身はとても参考になります。
こちらもオムニバス形式で、いくつかの研究知見を紹介しています。
このnoteで紹介してきた本では、「想定よりうまく行かないこと」が多く書かれていますが、この本では「想定(実際)よりも高く評価される(成功する)こと」が複数書かれているのが面白くユニークな点です。
同書は、この年末年始に読んだ書籍を理解する補助線にもなりそうです。
またこの本では、一見残酷にも見える知見も多く書かれていますが、個々の評価に一喜一憂せずに、粘り強く実践に移すための指針として有用だと思っています。
今回紹介した多くの著書では、従来のやり方・考え方からの大きな転換を求めるものが多いので、「ザ・フォーミュラ」で語られるように「いつ流れが変わるかは分からないが、生産し続けないと変りようがない」というスタンスで、「事実はなぜ人の意見を変えられないのか-」に書かれている通り関係者の「事前の信念」を見つめながら、実践に取り組むのが良さそうです。